39 / 39

3-12【※】

「祈」  優しい声に喉が鳴る。  亜玲の期待を宿した双眸が俺を見ている。  たったそれだけで、俺の身体は反応してしまった。腹の奥底がうずいて、指以上に太いものが欲しくてたまらなくなる。 「――気持ちいい?」  甘くて堕とすような声で問いかけられたら――もう、我慢できない。  首を縦に何度も振った。 「気持ちいい、きもちいい、から」  言葉にしたら余計に実感して、亜玲の指を締め付けてしまう。  下半身からぐちゅぐちゅって音がする。淫靡な音は耳を犯し、俺の興奮をどんどん高めていった。  亜玲の肩をつかむ手に力がこもる。爪を食い込ませてしまうが、亜玲はなにも言わなかった。 「そうだね。気持ちいいね」  俺の言葉に同意しつつも、孔に埋まる指は遠慮がない。容赦なく掻きまわして、俺の理性をドロドロに溶かしていく。 「キスしようか。こっち向いて」  まるで導かれるみたいに、自ら唇を重ねていた。  俺は一体どうしてしまったのだろうか。これじゃあ亜玲におぼれているみたいじゃないか……。 「可愛い。一回イっておく? それとも、もうほしい?」  双眸を細め、亜玲が問いかけた。  「ほしい」がなにを表しているのか。当然わかる。  想像だけで後孔が引くついた。 (あれいの、ほしい。……奥、気持ちよくしてほしい)  指じゃ届かない部分まで刺激してほしい――。  頭の中に欲望が芽生え、膨れ上がる。気づくと、欲望一色になっていた。 「も、いれて」  自分も知らない甘い声で、亜玲に強請った。 「おく、せつないから……」  亜玲の背中に腕を回す。  俺のオメガとしての本能が、目の前のアルファを求めていた。 「そっか。じゃあ、挿れてあげる。祈、ちょっと腰上げててね」 「ん」  言われたとおりにすると、亜玲が自らのモノを取り出した。  昂ったソレからは亜玲の興奮が伝わってくるみたいだ。 (俺がこんなに大きくしたんだ……)  生唾を呑み込んでしまう。  亜玲はポケットから避妊具を取り出して、手早くつけた。  そして、俺の腰をつかむ。 「このまま腰下ろして」 「け、ど」 「大丈夫。支えておくから」  冷静な思考など、なかった。  亜玲の言うとおりにして、早く快楽が欲しかった。  ゆっくり腰を落としていく。 「そう、上手。……もうちょっと」  陰茎の先端が俺の孔に触れたのがわかった。  そのまま腰を落として、先端を呑み込む。少し苦しかったけど、そこからは楽だった。  亜玲のモノを根元まで呑み込む。顔をあげると、亜玲の欲望に濡れた瞳と目が合う。 「祈のナカ、すごく気持ちいいよ」  大きな手のひらが俺の頬を撫でた。 「顔は赤くて、目はうるんでる」 「んぁ」  そんなことより、動いてほしい――。 「ふふっ、腰が揺れてるね。いいよ。動いてあげる」  亜玲が俺の腰をつかんで固定した。 「ぁああっ――!」  いきなり突き上げられ、大きな声があふれた。 「や、あれい、だめ、もっとゆっくり――」 「いやだ。祈も嬉しそうじゃんか」  俺の言葉を蹴り飛ばし、亜玲は容赦なく突き上げてきた。  大きすぎる刺激に背中がのけぞって、喉をさらす。 「ひゃっ、つよ」 「うん、気持ちいいね。気持ちよくておかしくなっちゃいそうだね」  亜玲の手が尻たぶをつかむ。指先が結合部を刺激すると、恥ずかしさとか気持ちよさとか。ぐちゃぐちゃになった感情に襲われた。 「ぁ、だめ、いや、いく」  首を必死に横に振る。やめてやめて――と伝えているのに、亜玲の動きは止まらない。 「何回イってもいいよ。祈がイクとすごく締まって気持ちいいんだ」  亜玲の先端が奥をぐりっと刺激した。  瞬間、頭の中で快楽が爆ぜる。ぱちぱちって火花が散って、身体の内側がきゅうっと締まる。 「本当、よく締まってる。おれも、もう、いっちゃいそう……」  余裕のない声が俺の欲望を揺さぶった。  気づくと亜玲に抱き着いて、自らも腰を動かしていた。 「祈?」 「あれいも、いって――」  いいところにあたるたびに、俺自身は軽くイっている。  けど、亜玲にも気持ちよくなってもらいたい。 「ほんっとうに祈ってバカ。こんなの理性飛ばすなっていうほうが無理――」 「ひゃ、ぁああっ!」  亜玲の荒い一突きに今までで一番大きな絶頂を迎え、俺は亜玲の胸に身体を預けた。  乱れた呼吸を整えていると、亜玲の腕が俺の背中に回る。強く強く抱きしめてきた。 「おれ、もうだめ。――祈のこと、なにがあっても離してあげられない」  すがるような手と声に、俺は反応できなかった。

ともだちにシェアしよう!