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 身体が冷えたらいけないと、くっついて眠ることはまだ理解できた。  それに、昨夜も似たようなものだったし――と。  でも、なんだろうか。後ろから抱きしめられているこの体勢は、さすがにちょっと違うような気がする。 (しかも、キリアンの息が首筋に当たる――!)  どこか生温かい息が僕の首筋に当たって、変な気分になってしまいそうだ。  僕は必死に首を横に振って、気持ちを落ち着ける。なのに、僕の腰に回されたキリアンの腕の感覚で、どうしてもこらえきれない。 「――ジェリー」  苦しそうに息を漏らした僕に、キリアンが心配そうに声をかけてくる。 「う、ううん、なんでもないよ――」  さすがに言えない。  純粋に心配してくれているキリアンに、なんか無性に変な気分になっちゃいそう――なんて、言えない。  キリアンが起きて僕の顔を覗き込んでくる。慌てて両手で自分の顔を隠す。 「おい、ジェリー」 「だ、ダメ、今は見ちゃダメ!」  絶対に変な表情をしてるだろうから――!  そんな僕の願いも虚しく、キリアンは僕の身体の向きを動かしてあおむけにさせた。  彼の手が僕の手をどける。僕は咄嗟に目をつむった。 「ジェリー、大丈夫か?」  心配そうな声が頭の上から降ってきた。本当に申し訳なくてたまらない。 「――き、りあん」  ゆっくりと瞼を上げた。視界に入ったキリアンの心配そうな表情に、心がチクチクと痛む。まるで針で刺されているかのようだ。 「ごめん、ね。その、ちょっと距離を取りたいっていうか――」  目を泳がせ、しどろもどろになりつつ僕は必死に自分の気持ちを伝える。  昨夜はそうじゃなかったのに。どうして、今になって……。 「だから、もうちょっと離れて寝ようよ。冷えたらいけないのはそうなんだけど、このままだと――」  ――僕は、変な気持ちになってしまいそうだ。  口を開いて言おうとした。言えなかった。  驚いて目を見開く。キリアンが僕の唇に、自分の唇を重ねていた。 (――え?)  初めてのキスじゃない。二度目も三度目も四度目も経験している。なのに、僕の鼓動は相変わらずうるさい。 「んっ」  何度も何度も角度を変えて口づけられた。僕の手をつかむキリアンの手が動く。  自然な流れで僕の腕をひとまとめにして、頭上で固定した。 (な、にこれ……)  身をよじって逃げようとするのに、それさえ叶わない。  キリアンは自身の舌で僕の唇を割る。僕の口内に舌を差し込んで、蹂躙していく。 (ぁ、やっ――! 今、そんなことされたらっ……!)  ――もっともっと、変な気持ちになっちゃうからぁ……!  という僕の心の底からの叫びは、キリアンに呑み込まれていく。  キリアンに舌先をじゅうって音を立てて吸い上げられて、僕の身体が大きく跳ねてしまった。 「ジェリー」  僕の名前を呼ぶキリアンの声が、艶めかしい。鼓動がうるさい。 「き、りあん。その、僕、あのね……その」  なんて言おう。  視線を彷徨わせて、僕が言葉を探していると。キリアンが僕の脚に下肢を押し付けてきたのがわかった。  ソコが硬くなっているのに、僕は気が付いてしまう。 「悪いな、あんまりにもジェリーが可愛いから」  僕を見つめるキリアンの目は獰猛な獣のようだった。  口でこそ「悪い」と言っているけど、心ではちっとも思っていないんだろう。その証拠に、僕の脚に下肢をぐりぐりとこすりつけてくる。 (こんなの、おかしいって――!)  思っているはずなのに。僕の口から零れたのは、色欲を孕んだような吐息だけ。  潤んだ目でキリアンを見上げてしまう。歪んだ視界の中、キリアンが僕を見下ろしている。  視線が僕を射貫いている。まるで、僕のことが欲しいって言っているみたいだった。 「き、りあんは」 「――あぁ」 「僕なんかで、興奮するの――?」  恐る恐る問いかけた。キリアンは口元を歪める。僕の耳元に唇を近づける。 「むしろ、ジェリーじゃないと興奮しない」

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