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キリアンは僕の言葉に驚いたように目を瞬かせて、柔和に笑った。とろけるような甘い笑みに、僕の胸がきゅんとする。
僕たちがじっと見つめ合って、唇を重ね合わせようとしたとき――。
「キリアン、ジェリー!」
慌ただしくお部屋の扉が開いた。
身体を跳ねさせる僕に対し、キリアンはため息をつく。
「ノックくらいしろ」
扉のほうに視線を向けたキリアンの言葉に、僕は現実に戻った。
あれ、もしかして今の体勢って。
(結構際どいんじゃあ――!)
可能性に気が付いて、僕はキリアンから離れようとする。しかし、キリアンは僕を離してくれない。
「あぁ、悪い。早く無事を確かめたくて――って」
「相変わらずうるさいな、エカード」
キリアンが口にした名前に、僕の中でむくむくと羞恥心が膨れ上がった。
恐る恐る視線を動かすと、扉の側にいるのはエカードさん。そして、その隣には笑いをこらえたようなシデリス殿下。
「だから少し様子を見ようと言ったのに。まったくキミが慌ただしいから」
「え、は?」
「二人が愛を確かめ合っているのを邪魔してしまったじゃないか。気の利かない男はまたフラれるぞ」
戸惑ったようなエカードさんの肩をぽんっとたたいたシデリス殿下は、にんまりと笑っていた。
やめて! 本当にいたたまれないから!
「そ、そんなんじゃなくて、ですね」
この体勢でなにを言っても言い訳にしかならない。わかってても、素直に認めることは恥ずかしくてできそうにない。
「いやいや、隠さなくてもいい。双方が納得しているのならば、外部が口を出すようなことじゃない」
柱にもたれかかったシデリス殿下は、キリアンを一瞥した。
「誰を好きになるのも、誰を愛するのも人の勝手だ。誰かを愛することは素晴らしいしな」
大きく首を縦に振ったシデリス殿下は、エカードさんの首根っこをつかんだ。エカードさんのほうが大柄だけど、固まっている彼を運ぶのは容易そうだ。
「僕たちは下にいるから、後で来るんだね。ここに来るまでいろいろと情報を手に入れた。情報共有といこう」
シデリス殿下はエカードさんの首根っこを引っ張って、お部屋を出ていく。バタンと大きな音を立てて扉が閉まると、僕ははぁっと息を吐いていた。だって、恥ずかしいんだもの。
「キリアン。どうしよう……」
不安に満ちた目でキリアンを見つめると、彼はぽりぽりと頬を掻いていた。
「気にするようなことじゃないだろ。隠していてもいずれはバレただろうからな。バレるなら早いほうがいい」
「そう、かもだけど」
なにか言われると嫌なんだけどなぁ。
「それに、俺はジェリーが好きだし、ジェリーも俺が好きなんだろ? だったら、問題ない」
好きなのは間違いないし、今更誤魔化すようなものじゃない。ただ、言葉にされると羞恥心を覚えるっていうか。
「シデリスも言っていたが、誰を愛そうが人の勝手だ。俺の場合は相手がジェリーだっただけで、ジェリーも相手が俺だっただけだ」
僕の首に顔をうずめたキリアンが、ちゅっと音を立ててキスを落とした。こそばゆい。
「双方が納得しているのならば、外部が口を出すことじゃない。恋も愛も、そんなものだ」
「そうかなぁ」
それに、僕って魔族の血を引いているわけだし。同性っていう以上に大きな問題がある気がする。
「ジェリーの師匠にも任されたからな。お前を、一生大切にする」
首筋をぺろりと舐めたキリアンがささやく。くすぐったくて、声を上げながら笑ってしまった。
あんなにも悲しかった気持ちは、いつの間にか消えていた。キリアンがいてくれて、本当によかった。僕は心の底からキリアンに感謝した。
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