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思い出のシーグラス2
それは、高校2年生の秋だった。
「あ、あった!」
「どれ? お、綺麗だな」
俺が見つけたのは薄い水色のシーグラスだ。
大輝の部活の練習のない日曜日。人の去った秋の海に大輝と来た。俺は昔から海が好きで、高校生になってからは1人でくるようになっていた。そして今日は、大輝とのデートだ。大輝と海に来るのは初めてだった。そして、さっきから俺たちはシーグラスを探していた。
砂浜に隠れるようにあるシーグラス。太陽の光を浴びてキラキラと光っているのを見つけてから、2人でシーグラスを探している。とはいえ、そんなに落ちているわけもなく、俺たちは会話もなくシーグラスを探していた。
「湊斗。これ綺麗だと思わないか」
そう言って大輝が俺に見せてくれたのはキラキラと光る透明のシーグラス。それを見たとき、ダイヤみたいだと思った。その輝き方が。
「大人になったらさ。いつかプレゼントするから」
「プレゼントするってなにを?」
「ダイヤの指輪」
「ダイヤの指輪を贈るのは結婚する彼女にだろ。俺は……男だよ」
そう言って俺は自分の言葉に傷ついた。今、俺たちはこうして付き合っているけれど、男同士では結婚できない。だから、将来大輝がキラキラと輝く指輪をプレゼントするのは俺ではなく、華奢で可愛い女性にだ。俺にではない。そう思ったら馬鹿みたいに傷ついてしまったのだ。なんだか今から、お前なんかじゃないんだよ、と誰かに言われたようで泣きそうになった。
大輝は俺が泣きそうになっているのを気づいていないのか、話しを続ける。
「男同士で結婚できないのなんてわかってる。だから婚約だってあり得ない。それでも、俺はずっと湊斗と一緒にいたいから。だから、そのときは受け取っては貰えない?」
「大輝……」
まだ高校生の俺たち。そんな指輪を買えるような大人になるまでにはまだまだ長い年月が必要だ。その間に俺たちになにが起こるかわからない。心変わりするかもしれない。別れてしまうかもしれない。それでも、今、このとき。大輝は俺とずっといたいと思ってくれている。それがただ嬉しかった。
「俺でよければ」
「湊斗……好きだよ」
「うん。俺も」
将来を誓い合うにはまだまだ子供な俺たちだけど。でも、今、胸にあるこの気持ちは本物なんだ。
そして大輝はそのキラキラと輝くシーグラスを俺に差し出した。
「なに?」
「指輪を買えるようになるまで、これを持ってて。指輪の引換券」
「なんだよ、指輪の引換券って」
「指輪の代わり。今俺が渡せるもの。だから湊斗も俺と一緒にいたいと思ってくれているなら受け取って欲しい」
そう言って差し出されたキラキラと輝く透明のシーグラスを俺は受け取った。俺だってずっと大輝と一緒にいたいと思ってるから。だからいつかの約束の日までこれを持っていよう。
「良かった。受け取って貰えないかと思った。待っててな。絶対に、指輪渡すから」
「うん。待ってる」
そのとき受け取ったシーグラスは今、俺のシーグラスを入れた瓶に入っている。
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