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伝わる気持ち4

 食事を終え、2人とも帰る方向が同じな為、同じ電車に乗る。 「仕事で疲れているのに今日はありがとう」 「仕事だったのはお互い様じゃないですか。それより俺は明日休みだからいいですけど、優馬さんは明日もお仕事でしょう」 「僕は明日は出勤ないから大丈夫。それに湊斗くんとの用事なら全然疲れないから」  にっこりと笑顔でそんなことを言われるとなんて返していいのかわからず言葉がでない。 「今度はカレーでも食べに行こうか? 美味しいインド料理のお店見つけたんだ」 「いいですね。ナンもラッシーも好きです」 「じゃあ決まりね。行けたらカフェも行こう」 「そうですね。最近は他のカフェは行けていないので」 「そうか。休みって週1日しかないもんね」 「そうなんです。それも何気にお店のこと考えたりして他のお店に行ってないんですよ」 「じゃあカフェに行くときは新しくできたお店行こうか」 「行きたいです! 前からあるお店は一度は行ってたりするけど新しいところは行けていないので」 「じゃあそれも決まりね」  先の約束をすることで優馬さんの笑顔はさらに深くなっていく。ほんとに俺と出かけられるのが嬉しいんだとわかる。まだ俺は優馬さんの気持ちに応えられていないのに。この先だってどうなるかわからないのに。つい、そんなことを考えてしまう。  そんな話しをしていると優馬さんが降りる駅に着いた。 「今日はありがとう。おやすみ」 「こちらこそありがとうございました。おやすみなさい」  電車のドアが閉まって動き出すまで優馬さんはそこにいた。そしてお互いが見えなくなるまで手を振っていた。  優馬さんの行動ひとつひとつから俺を好きだという気持ちが伝わってくる。そしてその度に、優馬さんの恋人になれる人は幸せだろうなと思う。とても優しい人だから。他に好きな人がいる俺なんかやめて優馬さんのことを好きな人と付き合えばいいのに、と思ってしまう。  こうやって同じ時間を共有していくことで、もう長いこと会っていない大輝じゃなくて優馬さんのことを好きになる日はあるんだろうか。大輝を好きだという気持ちは、会えない時間で美化されてしまっているのだろうか。それはわからない。わかっているのは大輝を見送ったあの日と変わらずに大輝のことを好きだということだけだ。そう考えて小さく息を吐き出す。大輝のことを考えると辛いので、他のことを考える。そう、明日。明日は休みだからデザートメニューでも考えてみよう。試作をするのもいいかもしれない。そう思っていると電車は駅に着いた。デザートメニューを試作するのならスーパーに寄っていこう。そう思って頭の中から大輝を追い出した。

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