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同じ空の下5
そして次に出てきたメインはアッシ・ド・ブフ・パルマンティエと言って、みじん切りのにんにくや玉ねぎ、ひき肉を炒めたものをグラタン皿にひいて、その上にマッシュポテトを乗せて焼いたものだ。フランス版おふくろの味だそうだ。フランスではポピュラーなものらしいけど、作るのも簡単で良さそうだ。ポテト好きの人にはたまらないだろう。
「これは簡単に作れそうでいいですね。日本に帰ったら作ってみよう」
「湊斗くんは僕のことを料理男子だって言うけど、湊斗くんも料理男子だよね。しかも美味しいコーヒーも淹れられる。そっちの方がズルいよ」
優馬さんがそんなことを言う。いや、俺の場合はイケメンじゃないからズルくない。そう言おうとしたところで、可愛いのにと言われた。
「ドイツにいる彼はたまらなかっただろうね。できればこの先は僕に作って欲しいよ」
「優馬さんは作れるじゃないですか」
「自分で作るのとは別でしょう」
最近一緒にいることが多くて、でもなにも言わないから忘れそうになるけれど、優馬さんは俺のことが好きなんだ。返事、受け取ってくれないからな。
「湊斗くん? 難しい顔してどうしたの?」
「え?」
難しい顔をしていたのだろうか。
「ごめんなさい。なんでもないです」
「もしかして、困らせてた? ごめんね、困らせて」
「いえ、あの……」
「冷めちゃうから食べよう」
「あ、はい」
優馬さんのことは一旦頭から追いやって食べることに専念する。うん、やっぱり美味しい。
「簡単だけど美味しいですね」
「そうだね。これは帰国しても作れそうだね」
「優馬さん、よくフランスに来るっていうだけあって詳しいですね」
「そうかな。美味しいものが好きだから。帰国したら、また美味しいもの食べに行こうね」
「はい」
マッシュドポテトがいい味をしていて、美味しいと言いながらあっと言う間に食べてしまった。うん、結構食べたな。
「普通ならここでチーズを挟んでからデザートなんだけど、今日はデザートとコーヒーは別のお店でいい?2日じゃあ僕のおすすめ紹介しきれないから」
「いいですよ。結構食べたから逆に少し歩きたいです」
「じゃあ、食べたばかりだけど行こうか」
「はい」
そう言うと優馬さんはチェックのサインをし、ギャルソンを呼び会計をする。
「いくらですか」
「いいよ。おごり」
「でも……」
「まさかフランスで湊斗くんと食事をするなんて思ってもみなかったから浮かれてるんだよね。で、これはそのお詫び」
「浮かれてるって、別になにもしてないじゃないですか」
「んーじゃあ好きな子に格好つけたい男ってことで見逃してよ」
きっとこれはなにを言っても払わせてくれないな、と気づきお財布をしまう。
「じゃあ後で払わせて貰います。ご馳走さまでした」
「うん。じゃ、行こうか。今から行くカフェはデザートが美味しいんだ。店も落ち着いてるからゆっくりできるよ」
優馬さんはお店を出るとホテルとは逆の方へ歩いて行く。少し行くと駅がある。
「そんなに遠くないから」
「はい」
駅の周りにもカフェがたくさんある。パリはほんとにカフェの多い街だ。駅を右に見てしばらく行くと、優馬さんはある一軒の店のドアを開けて中に入った。
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