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同じ空の下6
外からはお店なのかどうかもわからなかった。ただ、ドアがあるからそうなのだろう、と思っただけだ。そして、お店だとわからなかったくらいだからなんのお店だかもわからなかった。ただ、ドアを開けるとコーヒーの香りが鼻をくすぐり、カフェなのだとわかる。
「コーヒーもケーキも美味しいから。特にオペラとサントノーレがお勧め。チョコが美味しいんだ」
「じゃあ、オペラとカフェ・クレームにします」
「じゃあ僕はサントノーレとエスプレッソにしよう」
注文を済ませ、僕の視線はお店の入り口にあるマカロンに釘付けになる。最近、マカロン食べてないな、なんて思いながら見てしまう。僕のその視線に気づいた優馬さんが言う。
「マカロン、カラフルで可愛いよね。マカロン買っていく? 美味しかったよ」
「そうですか。じゃあ帰りに買って帰ります。っていうか、優馬さんも結構甘い物食べてますよね」
「んー。きちんとしたお店で食事をするとデザートまで出てくるじゃない。それにコーヒーには甘い物が似合うからね」
「確かにそうですね。デザートまで食べて一食ですしね。コーヒーに合うのも認めます」
「でしょ? それに嫌いじゃないから」
「なんで日本の男は甘いの苦手なんでしょうね。洋菓子だけじゃなく和菓子も食べないし」
「日本は食事に含まれないからじゃない? 小さい頃から食べていたら苦手なんてことはないと思うよ。現にこっちの人は男の人でも普通にデザート食べるでしょ」
「なるほど。食べ慣れてないっていうのもあるんですね」
「うん、そうだと思うよ」
俺は母がよくお菓子を作ってくれていたので、子供の頃からホットケーキやクッキー、マフィンといった手作りのお菓子を普通に食べていたからか、そのまま成長し食べるに留まらず自分でも作るようになった。確かに食べ慣れていたら普通に食べるようになるか。でも、フランスやイタリアで出されるスイーツはメニューが豊富で目移りしてしまう。そう考えるとやっぱりデザートメニュー増やそうかな。
「どうしたの?」
「いえ。やっぱり真剣にデザートメニュー考えようと思って」
「タルトシトロンなんてどう?」
タルトシトロンとは、レモンクリームの詰まったタルト菓子だ。フランスのお店では定番中の定番だ。
「甘いのが苦手な男性でも食べれそうじゃない?」
「あ、タルトシトロンか。それいいかもしれませんね。それとタルトタタンかな。タルト生地一つで結構作れるものですね」
「そうだね。それでデザートメニュー4つか。1人で作るんだしお店の規模考えてもそれくらいでいいんじゃない?」
「ですかね。日本に帰ったらさっそく作ってみます。やっぱりこっち来て良かったです。アイデアが出てくる」
「カフェ文化はやっぱりヨーロッパだからね。その中でもフランスは特に発達してる」
「そうですね。イタリアとフランスはすごいと思います」
コーヒーを飲みに来たけれど、色々なことが思いつくから来て良かったなと思う。
そうこう話しているとケーキとコーヒーが出てくる。まずはカフェクレームから。うん、美味しい。その後はオペラを一口切って口に入れる。ビターチョコレートとコーヒークリームのほろ苦さがたまらない。甘めのコーヒーによく似合う。
俺はカフェクレームとオペラを堪能した。
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