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10話(3)#1番聞きたくない最悪な言葉?!狂気なほど私を愛して狂え?!

 本当は欲しくて欲しくてたまらないくせに、我慢しちゃってまぁ。絶対に如月の口から言わせてやる。必死に堪える姿に身の震えを覚えた。  窄みを指先でなぞり、如月を煽る。気持ち良さで目尻が下がらないように|抗《あらが》っている如月にゾクっとする。如月を床に寝かせ、覆い被さった。 「えへ?(もうやめよ?)ぁっ~~……はぁ……」 「えへ(や、だ)」 「やめて……ほんと……むり……やだ……」 「これ邪魔だなぁ」  履いているテーパードパンツを脱がせると、白い脚が露わになり、感情が昂った。 「やめて! ほんとやめて! やだやだやだやだやだぁ~~っん~~」  うるさ。唇を重ねて口を塞ぐ。舌を差し込み、ゆっくり絡めて口唇を離す。 「ーーはぁっ……はぁ……」 「やっと黙った」  仰向けになっている如月の膝を持ち、開脚させる。辱めでも受けているかのように、頬が赤く染まっている。 「…………っやるなら早くして……」 「そう言われるとしたくなくなる」  下着をずらし、太腿から股ぐら、腰、へそ周りへと順番に舌で愛撫していく。 「~~~~っっ…んっ……あっ……はぁっ…」  声も、反応する体も、如月は抑えている。綺麗な顔も、少し長い髪の毛も、着ているシャツもぐちゃぐちゃに乱して、俺だけにしか見せない顔を見せて欲しい。  下着の隙間から指先を窄みに飲み込ませた。 「んっ……やだぁ……ちょ……っんあっ…やめっ あぁっ」  指先を窄みからゆっくり押し戻す。刺激する度に、如月は頬を赤く染めながら、ビクッと反応する。それがとても可愛い。 「……もうむりだからぁ……お願いぃ……」 「なんのお願い?」  一度手を止め、様子を伺う。目線をこちらに向け、睨んでくる。そんなとろんとした目で睨まれても怖くないけど。 「………ください……」 「何? 聞こえな~~い」 「もう無理!!!!」 「何怒ってんの~~? 自分の立場、分かってる?」  人差し指で、如月の顎を軽く下から押し上げ、目を見つめる。 「いい加減にしーーぁあっ…やめっ……んぁっ」  もう一度、指先で奥を突き、怒ってる如月を粛清する。これで少しは大人しくなるはず。 「……もうだめなんだってぇ……睦月さぁん……」  恥ずかしさと快感で紅潮する顔、半開きの目、薄く浮かぶ涙、だらしない口元。視界から入る如月の全てに気持ちが高揚する。そろそろクライマックスだ。如月の耳元に口唇を近づけ囁く。 「触っては?」 「………………っ」  頑固だな。下着の上から幹を撫でて誘う。 「触っては? 如月」  もう一度耳元で囁き、耳を甘噛みする。 「…………前を触ってくださいっ……」 「よく出来ましたぁ」  あぁ、可愛い。自然と笑みが溢れる。  自分の思うままになったような気がして、征服感が満たされ、欲情する。窄みと幹を同時に攻める。心も体も手に入れ、自分のものにしたい。  激しく手を動かせば動かすほど、如月は身体を震わせながら、顔を歪ませて、鳴き、乱れる。なりふり構わず乱れる姿は綺麗だ。 「はぁあぁっ……はぁ……はぁ」  手に温かいどろっとしたものが広がった。 「気持ち良かった?」 「うるさい、黙れ」 「俺、この状態のままじゃ嫌だからさ……はぁ……もう少し付き合ってね……如月……はぁ」 「え? うそ……っあぁ」  下半身を中心に渦巻く熱が、これ以上抑えきれない。如月の体を隅々までもう一度愛撫していく。  ごめんね、如月。俺は如月みたいに相手が満足していれば、自分も満足出来るほど大人じゃない。もう少しだけ俺のために乱れて。  はぁ、我慢できないよ。  *  『手、繋ごう?』如月やお兄ちゃんには言えるけど神谷には言えない。そもそも付き合っているわけではないのに、手を繋ぐ方が間違っているのかもしれない。  私のことは、どう思っているのだろうか? 好きな人はいるのだろうか? どんな人が好きなのだろうか? また会いたい。神谷に対する色んな気持ちが混ざり合う。 「あのさ……」  公園のベンチでクレープを食べながら、神谷に声をかける。 「どうしたの?」 「……えっと……」 「僕は年下も年上もアリだよ?」  聞こうとしたことがバレてしまった。 「私、15歳だよ? 犯罪みたいじゃない?」  1番気になるところ。この歳の差が、恋愛対象にならない気がする。 「そうだね。卯月ちゃんが18歳になれば、あまり関係ないかもねぇ。でもさ、歳を重ねれば恋愛していいって変じゃない? 節度は守る必要はあるけど」 「恋愛は誰と、どんな相手としようが自由だし、色んな愛の形があると思ってる。恋はもっと自由。でもやっぱり僕にとっては卯月ちゃんは佐野の妹かな」  神谷は私の頭を撫でた。  でも、1番聞きたくない最悪の言葉。  どこか私は自惚れていた。頭を撫でられ、デートに誘われ、この人は私に気持ちがあると思っていた。  でもそうじゃなかった。  自分を否定されたみたいで、強い虚しさを感じる。  『やっぱり』ってどういうこと?  私は今日試されたのだろうか。私も、自分の気持ちを確かめるためにここへ来た。それは相手も同じだったということ?  お互い自分のために、会っただけだ。なんて時間の無駄。|タイムパフォーマンス《タイパ》も悪い。お互いなんの感情も未来もない。もう帰ろう。  今まで、少しのことでドキドキしていたはずなのに『妹』そのひと言で終止符が打たれた気がした。 「僕、ちょっと予定があるから、帰るね。じゃあね~~」 「は……ここで解散?」  神谷は立ち上がり、私の手からクレープの紙ごみを取った。思いがけない解散宣言に凍りつく。 「うん、気をつけて帰ってね~~」  置いていかれたことにより、虚しさが一層、胸に広がる。予定って今日入れる必要があったのか。せめて駅まで送って欲しかった。  恋愛や恋は自由と説きながら、完全なる自分への対象外通告だ。悲しい。そして虚しい。  その場を動くことが出来ず、手をヒラヒラさせながら去っていく、神谷の背中をしばらく見つめた。  *  やんわり言ったつもりだったが、流石に傷つけただろうか。手を振り、歩きながら考える。  佐野の待ち受け画面を見て、可愛いと思った。色んな事情もあり、一緒にそれなりに過ごしたが、相手は10代ということもあり、やっぱり恋愛対象にはならない。  それに、佐野と関係を崩したくはない。  僕は有休を佐野と交代で取りながら、皐をずっと見てきた。気になりすぎて、夜中も見張った。  この件が解決してからも、一目皐を見たくて、仕事が終わると、皐の|後《あと》をつけていた。  ストーカー男と言われたが、否定は出来ない。やってることはストーカーと同じだ。皐が如月のことを好きなことは分かっている。  いつも真面目に作家の家へ回る皐。原稿を作家の家で待っている時にうたた寝している皐。お昼は喫茶店で過ごし、コーヒーを飲みながら本を読む皐。  仕事終わりは本屋に行く皐。夕飯はデパ地下で買う皐。夜になると縁側で月を眺めながら、紅茶を飲む皐。深夜になると妖麗に乱れ、1人喘ぐ皐。  あぁ、見たい。見たい見たい見たい。もっと見ていたい。どこまでも知りたい。彼女のことが。皐、皐、皐、皐。今は何をしているの? 僕の愛しい皐。  気持ちが止められず、足早に彼女の行きつけのアンティーク調のブックカフェへ向かう。古風なドアを開け、ブックカフェに入ると、いつもの席に、皐は本を読みながら座っていた。 「何故、来た」  本に目線を落としたまま皐が僕に訊く。 「会いたかったから」 「話に、ならない。卯月の元へ帰れ」  こちらを見てもくれない。皐の正面の椅子に座った。 「何故? 嫌だよ~~」 「お前は私が来て、怒っていたじゃないか」 「あんな形で会いたくなかった」 「返せ、まだ読んでいる。今良いところなんだ」  手を伸ばし、皐から本を取り上げると、皐が頬を膨らませた。可愛い。 「いつまで私をつけ回す気でいる。そんなことをしても、何も得られない。それに私は、自分以外を見るやつに興味はないのだよ、神谷」 「弥生は別だがな」 「私が好きで、欲しいなら、私以外は誰も見るな。狂気な程、私を愛せ。愛しすぎて歪み、狂え。そして狂愛に、満ちろ。過剰なほど、愛し、私に執着出来るなら、同等の愛を与えよう」  妖艶に笑いながら、話す皐に僕はまた惹かれていく。 「そこまで狂えない男は、要らない」  まるで僕に対して、死を意味するかのように、唇に親指を当て、横に動かした。 「ヤンデレ過ぎますって、皐さ~~ん……」 「……私のことを見つめる目は、愛に狂い、執着できる素質に思えたよ、神谷」  皐は頬杖をつき、顔を傾けた。  つけ回していたとはいえ、相手に不快な思いをさせないために、どこかセーブしていた部分はある。  だが、彼女はこんなストーカーの僕を拒否するどころか、もっと狂気な愛を求めてきた。  自分の気持ちを抑えないで行動したら、もう後戻りはできなくなるかもしれない。僕が愛に狂い、歪むことで、惜しみない愛を僕にくれるのならば、後ろを気にせず喜んで自分を解放しよう。  ごめんね、卯月ちゃん。  こんなに歪んでいる僕は、純粋で|穢《けが》れのない君に相応しくない。 「ねぇ、GPS付けていい?」  皐から一時も目を離したくはない。どこにいるか管理したい。 「あぁ、構わないよ」  狂おしげに微笑む皐に、笑みが溢れた。  

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