頭からバスタオルを被り、部屋に入る。いやいやいや、嘘でしょ。アリなの？　この流れで、やめてくださいよ、如月さぁあああん！！ 　ぐぅ。 　ーーそう、如月はなんだかんだ缶チューハイ1.5本を飲んでいた。 　久しぶりのお酒。ほろ酔い状態で露天風呂に入浴し、酔いが回り、中々出てこない睦月を待ちきれず、寝てしまったのだ！！！（解説：作者） 「ちょっとぉ～～勘弁してよ～～」 　身体の水滴をタオルで拭き取り、如月の横に座る。頬を赤く染め、気持ち良さそうに寝ている。少しはだけた浴衣が、性的な欲求を唆る。 「ムラムラするんですけど……」 　生殺し……。 　寝込みを襲う趣味はない。 　でも、如月に触れたいという気持ちが抑えきれず、手の甲で頬に触れる。唸るような如月の声が漏れた。心臓の鼓動が早くなる。 　少しくらいなら……いいよね？　俺を煽っておいて、寝た方が悪いし？　帯を静かに解いていく。全部は脱がせず、少し、はだけているくらいが、丁度いい。 「はぁ～～。無理かも」 　下腹を中心に、熱が身体中を巡る。あぁ、もぉっ。元気すぎて困る。自分でどうにかするから……少しだけ、少しだけ。もう少しだけ。 　如月の浴衣を捲る。しなやかな腰と桃色の胸の突起が目に入った。 　あっーー。なんてえっちな！ 　そっと、如月に覆い被さり、浴衣の隙間から見える素肌に顔を近づける。大丈夫、寝ている。如月は寝たら起きない、はず。如月の様子を確認しながら、下着をずらし、腰やへそ周りに口付けをする。 　ちゅ…ちゅ……。 「ん……」 　反応した。 　如月の様子をもう一度確認する。寝ている。大丈夫だ。問題ない。今日は散々煽られたんだ。だから我慢するとか、無理ですからぁ～～。 　下着の上に触れてみる。下着越しに感じる、如月の幹の感覚に、胸が高鳴る。ごめん、ちょっとだけだから。下着の上から、幹に口付けをして愛でる。はぁ。興奮する。 　浴衣を捲り、起きないように、優しく全身を口唇で愛撫する。 　時々、ぴくっと反応する如月がかわいい。あぁ、もう今日はダメだぁ。もっと楽しみたいけど、もう限界。そっと、自分の幹に手を添え、擦り上げた。 「……はぁ……ん…はぁ……あっ……んんっ……」 　ゾクゾクっと背筋に快感が走る。如月に広がる白濁の色っぽさに惹かれ、思わず、口唇に口付けする。 　ちゅ。 　そして、我に返る。あ～～。うん。ごめん。怒るかな。絶対怒るな。でも、まぁ～～いっか。浴衣だけ羽織っておこう。 　全身に怠さと疲れが襲ってくる。なんだか起きていられなくて、そのまま隣に倒れ込むと、自然に目蓋が下がり、深い眠りへ落ちていった。 　ーー卯月&神谷　その頃 　寝慣れた和室とお布団で、すっかり気持ちよくなり、卯月は爆睡していた。 「卯月ちゃん、寝相悪過ぎ！！」 　布団に対して、横に向きなって寝てくるせいで全く眠れない。おまけに足で僕を蹴ってくる。起き上がり、買っておいたビールを冷蔵庫から取り出して、開けた。 「もう！！」 　苛つきながらビールを身体に流し込む。ヤケ酒だ。 　それにしても僕は人が良すぎじゃないか？　酔っ払いの話を訊いて、泥酔した同僚の介抱をして、センパイの恋人の我儘に付き合って、よく分からんもの見せられて、自分が引き起こしたくせに仲直りに協力して。 　なんて日だ！！！ 「あぁ。今日、皐さんに電話出来なかった……」 　ヴーヴーヴー。 　スマホを確認する。 　着信、皐。すぐに出た。 「もしもし？！」 　皐さんから着信なんて珍しい。これは嬉しい。 「私への愛は、その程度だったのか。失望した、湊。二度とかけてくるな」 　ブチ。 「…………」 　耳からスマホを離し、画面を見つめる。通話時間、10秒程度。 「自分からかけてきたくせに！！」 　ビールを机に置き、頭を掻く。 　いつもある電話がなくて、寂しかったってことですか？　怒っているんですか？　どういう意味ですか？　何を言って欲しいんですか？　愛情表現が歪みすぎて僕にはわかりません！！ 「あーーもうっ！　なんなんだよ」 　歪みきれない自分。愛に狂えと言われ、狂いきれない自分。自分ともどう付き合っていけばわからないのに、歪な愛を見せる皐に対して、どう対応していいか、分からない。 「僕って、皐さんに好きって伝えたことあったっけ……？」 　疑問が生じる。良くないな、色々。 　狂いきれないのは気持ちを伝えていないから？　気持ちを伝えたら何か変わる？　この良く分からない関係性も、自分自身も、皐からの愛情も。 　早く、皐さんに会いたい。 　卯月の脚を持ち、真っ直ぐに寝かせ直す。蹴飛ばされた掛け布団を胸まで、そっと掛けた。 　子供らしい無抵抗な寝顔はとても愛らしく、頭の中でごちゃごちゃした感情が、少し薄れた気がした。 　ーーーーーーーーーーーー 　ーーーーーーーー 　ーーーー 　＊ 　ーー翌日　朝 「眩し……あ……」 　朝日で目が覚め、体を起こす。睦月さんとせっかくいちゃいちゃしようと思ったのに、寝てしまった。どうしよう。申し訳ないことをした。 「睦月さん……すみません…私寝てしま……ん？」 　あれ？ 　帯、締めて寝なかったっけ。寝相は割と良い方だ。締めが甘かった？　そんな馬鹿な。完全に帯が解けているし、浴衣は乱れている。 「…………………」 　お腹の上の方に違和感。手で触ると、何かが乾燥したような、感覚。下着が微妙にズレている。隣で気持ち良さそうにうつ伏せで寝ている睦月を見た。 「おーーい」 　帯をしていない。怪しい。頬を軽く叩く。ぺちぺち。 「う～～……」 　口元は緩く、よだれが出ている。私のこの疑問を有耶無耶にはさせない。もう一度、睦月の頬を叩いた。起きろ！！ 「睦月さぁ～～ん」 「ん～～ねむいぃ……」 　目を擦り、薄目を開けた睦月と目が合う。薄く笑い、睦月に顔を近づけた。 「夜、何をしてたのかな？」 「えっ……」 「ん～～？　なんか、お腹の上がカピカピするんですよねぇ～～なんでこうなってるのか知ってます？」 「いや～～……如月が悪いんだって！　先に寝るからぁ！」 　ごろん。睦月を転がし、仰向けにする。サッと睦月が両手で顔を隠した。少し恥じらっている。これは！！！　まさか！！！ 「その……我慢出来なくて……」かぁあ。 「やっぱり！！　もう！！」 「だってぇ～～浴衣の如月があんまりにも、えっちだったからぁ～～」 　指の隙間から、ちらちらと、私の様子を見つめてる睦月が可愛い。思わず、許してしまいそうになる。 「～～っもう二度と浴衣着ません！！！」 「そんなこと言わないでよ～～中々良かったよ？　浴衣」 　立ちあがろうとする私を、睦月が起き上がり、ぎゅっと、浴衣が掴まれた。満面の笑みで、睦月が私を見つめる。 「如月、あのさ……俺、超健康的なんだよね。だからさ、一緒にお風呂入ろ？」 「はぁ？」 　睦月の下腹を見て、全てを察する。お風呂で私にナニさせる気ですか……。 　お願い……普通に入らせて……。 　 　ーーーーーーーーーーーー 　ーーーーーーーー 　ーーーー