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12話 休みの日はすることがない?!まったりおうちデート?!
慰安旅行の翌日は有休を取っておいた。
疲れが溜まっていそうだし、ゆっくり出来た方が良いと思ったからだ。いつも通り、卯月を送り出し、家事を済ませる。
さて、この後、何をしよう?
「睦月さん、お休みなんですか?」
「有休取ったからね」
2つのコップにお茶を注ぎ、如月の前にコップをひとつ置く。如月の隣に腰を下ろした。
「有休ってそんな無限大にあるんですか……」
「少なくとも18日は毎年支給されるよ。来年は20日になるかな~~」
「へー」
如月と2人。これは……デート日和!!
慰安旅行の疲れが残り、少し倦怠感はある。あまりハードなお出かけはしたくない。着替えるのも面倒だし、おうちでまったり過ごしたい。
でも、如月とデートがしたい!!!
「お茶、ありがとう」
如月がサイドの髪を耳にかけ、コップに口付けた。隠れていた耳が現れて、ドキッとする。
「何?」
「あ……いや……おうちデートしたいなぁって」
願わくば、ずっといちゃいちゃしていたい!!! そんな俺の思惑を見抜いたのか、如月の目が濁り、眉の辺りに嫌な線が出た。
「………………」
「何その嫌な顔! ひどい!」
「毎日がおうちデートみたいなもんでしょ……」
「え、ちょっと待ってよ! どこ行くの?!」
コップをテーブルに置き、どこかへ行こうとする如月の服を掴み、引き止める。
「和室。はぁ。もうね、何考えてるか、分かるんですよ……」
「うっ……じゃあ一緒にゲームしよ? それなら良いでしょ?」
「ゲーム?」
洋室から、暫くご無沙汰だった自分のノートパソコンを抱え、持ってくる。テーブルの上に置かれた、如月のノートパソコンの横に並べた。
如月のパソコンにシューティングゲームをインストールする。久しぶりにやる、シューティングゲーム。ワクワクしながら、自分のノートパソコンを開いた。
「なんですかこれ……」
「爆弾の設置爆破で倒すゲーム。インストール終わったよ。はい、|キャラクター《エージェント》選んで」
簡単に操作方法を如月に説明しながら、キャラクターを選んでいく。
「エージェントとは? 複雑すぎる……全然わからない……」
「チーム戦だよ。あ、守りだね、頑張ろうね~~」
キーボードを叩き、キャラクターを走らせた。たまにはゲームも良いなぁ。画面に集中する。
「え? ちょっと待って! 移動早い!! なんでそんなに早く動けるの!! 今から何をすれば……」
「だからぁ~~|爆弾《スパイク》を解除して、敵を倒すんだってば」
「スパイクとは?! 今どうやって登ったの? 登れないのですが!!!」
「何してんの? 如月早く来て! 手伝って!」
「あれ? ここどこ? なにこれ? この人誰? あっ!! 死にました!!!!!」
「えぇ~~~~」
ある意味面白いけど。
ゲームとして、2人で楽しむには、如月が弱すぎて楽しめない。初心者には難しかったかな? もう少し、簡単なゲームの方が良いのかも!!!
「うーーん、人生ゲームとかにする?」
「その方が私にも出来そうです」
ぱたん。如月が疲れた顔をして、ノートパソコンをそっと閉じた。なんかごめん。
押入れから人生ゲームを取り出し、テーブルに広げる。駒に人物ピンを刺し、スタート地に駒を置く。ルーレットを回した。
ーー30分後
「……失業…だ……と……職を失いゴミ捨て場に戻る……なんだこれは……」
「やだぁ~~また子ども生まれちゃったぁ~~」
駒に人物ピンを追加で差す。既に駒は人物ピンで溢れ返っている。こんなに生まれるなんて思わなかったぁ。
「人生ゲームでも頭の中はえっちなことでいっぱいだと……」
「なっ……違うってば!!! ほら!! 如月の番!!!」
「はいはい。え~~っと『ヤンデレに好かれ、監禁される。全財産奪われ、10回休み』やってられるかぁああああ!!!!」
がしゃん!!!
如月が両手でボードゲームをひっくり返した。物に当たるなよ!! お金やピン、駒などが辺りに散乱する。もうこれは、復元出来なさそう。
「ちょっとぉ~~何すんの!!」
「こんな人生あるかぁあぁああ!! もうっ!! 違うゲーム!! ゲーム変更で!!!」
上手くいかなくて、不貞腐れてる如月が少し可愛くて、ぷっと笑みが溢れる。でもそろそろ、いちゃいちゃがしたいところ。あることを思いつく。
「ねぇねぇ~~負けた方が勝った方のいうこと聞くゲームしよ」
「えぇ……」
「ババ抜きにしよ」
引き出しから、トランプを取り出し、ジョーカーを一枚抜く。トランプを何度も切り、交互に一枚ずつ手札を配っていく。
自分の手札から、同じ数字のカードを捨てていると、ジョーカーが目についた。マジか。どうにか如月に引かせなければ。
手札を如月に向け、差し出す。ジョーカー引けっ!!!
「…………」
「睦月さんはババ抜き向いてないと思いますけどねぇ」
手札は減っていくが、ジョーカーは何故か残る。全然引いてくれない。如月が俺の手札に手を伸ばした。
「どっちにしようかなぁ?」
2枚の手札を如月が交互に触る。あっ!! そっちはダメっ!!!
「なるほど、こっちにしま~~す」
「あーーーーっっ!! なんでぇ!!」
「誰でも分かりますって……」
如月がクスッと笑い、揃った手札を宙に投げ捨てた。
「私が勝ちましたね。何を言うこと聞いてもらおうかなぁ?」
「言わなきゃ良かった……」
「睦月さん、マッサージしてください。誰かのせいで身体中痛いし、凝るんですよね。あ、変なことしないでくださいね」
マッサージだぁ?!?! 如月が肩を押さえ、首を鳴らした。これは凝ってそうだ。如月と一緒に和室へ向かう。敷布団を一枚引くと、如月がうつ伏せになった。
もみもみ。
なんでこんなことしないといけないの~~。
如月の側に座り、渋々肩を揉む。如月は気持ち良さそうにしている。凝っているせいか、とても硬く、手が疲れる。
「腰もよろしくお願いします~~」
「えーー……」
指先で指圧し、ほぐしていく。
「もう少し強く」
「う~~ん」
「ズレた、下、もう少し下。もっと強く」
「はいはい」
イライラしながら、言われた通りに腰を指圧する。
「脚も~~~~」
はぁあぁああ?!?! 手で脚を揉みほぐす。いや、負けたけど。負けたけどさ!!! なんかちょっとこれは違うくない?!?! しかも作業量多いし、疲れる!!!
「手、止まってますよ」
「なんか違う!! ふつー『キスして?』とかでしょ!!!」
「いつもしてますから。背中もう少しやって?」
「おいぃいぃい!! もうやだぁあぁ~~!!!」
如月が急に仰向けになり、背中へ伸ばそうとした手が掴まれる。そのまま手を引っ張られ、如月の身体の上に倒れ込んだ。背中が優しく抱きしめられる。
「怒らないで?」
「……もう怒ってない」
抱きしめられただけで、先ほどまで感じた腹立しさは、どうでもよくなり、許せてしまう。自分は御し易い人間だ。
密着する身体と、胸元から香る如月の匂いに、鼓動が早くなる。如月の口元が弧を描くと、俺の頬に手が触れた。
「ゲームも飽きましたね。えっちでもする?」
「えっ?!」
「冗談ですよ、冗談~~」
身体に付けていた顔を上げ、如月を見る。|婀娜《あだ》やかな瞳と目が合った。その瞳に惹かれ、両手で如月の頬を包み、顔を近ける。
如月の瞳が、ゆっくりと閉じた。唇を重ね、軽く押し付ける。如月の唇の感触が伝わる。
愛情を確かめるように、少し離しては、また唇を啄む。キスを重ねるごとに、体は少しずつ熱を帯びてくる。口唇を離し、如月を見つめた。
「如月……あのさ、今日は……最後までシたい……」
「やめた方がいいかと……」
猫を撫でるかのように、俺の頭に如月が触れる。
「それは俺のため?」
「そう……ですね……見えているものが見えなくなりそうで……まだこれから色々あるでしょうから、選択肢は広い方がいいと思いますし……」
「何それ……なんの選択肢?」
「……私以外と今後お付き合いするかもしれないですし……|挿入《余計な経験》で選択肢を狭める必要はないかと……」
なんだそれ……。さも、この先に別れるしかないみたいな言い方。俺が女性も恋愛対象だから? 俺と如月の関係には未来がないみたいだ。
自分が『将来』という現実から目を背けているのは事実だけど、別れる気など更々ない。
「今後どうするかは俺が決めること。如月はこの先、俺と別れたいの?」
「私は睦月さんが別れを切り出さない限り、別れる気はありません」
真剣な眼差しが俺を見つめる。
「なら別にいいよね。余計なことだとは思わないし。コミュニケーション取りたいから。それに選択肢が狭くなっても構わない。限られたカードの中から選んで、それが間違っていたとしたら、また、選択し直すだけだから。自分のことは自分で決める。そんな優しさ、俺は要らない」
かぷ。如月の耳を少し甘噛みする。俺はこんなにも如月が好きなんだよ。
「……っ」
「ねぇ、まだ分からないの? もう、見えているものなんて限られているよ」
もう一度、如月の頬に手を添え、口唇を触れ合わせる。ちゅ。
「……その……初めては……おうちではしたくないです……それに色々準備もありますし……まだちょっと……」
「色々? 準備? どういうこと?」
「過程までで許して」
「む~~」
如月の肩に触れ、覆い被さると、如月の頬がほんのり赤く染まった。
「……あの|受け《ねこ》はちょっと……」
「またそれ~~? 今日は優しくするから、いっぱい声出してね」
「~~っ……そう言いながらいつも荒いんですよ」
「荒くないし」
耳の下から首元に向かって、口付けをしながら、片手で如月のシャツのボタンを上から順に外す。如月が俺を見て、ニヤリと笑った。
「ふふ。このまま私がやられるとでも? そうですね、最後までシなくても、開拓は必要ですよね」
「え……な、何? かいたく??」
如月の言葉に、ボタンを外している手が止まる。
「この前は散々な目に遭いましたからね」
後ろから腰が押され、如月と身体が密着する。如月が指先を口に含み、取り出した。唾液で濡れた指先が、下着の中に入ってくる。
「ちょっ!! えっ!!! 待って! まだ心の準備がーーっ…あぁっ」
尻の割れ目にそって、指先が撫でる。ある場所でぴたりと指先が止まる。後ろから感じる、未体験の刺激に気持ちが乱れた。
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