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19話(7) #
ーー大阪 3日目 最終日 朝
ぎゅうぅ~~
「……う……苦し……」
暑さと身動きの取れない息苦しさで目が覚める。如月にめちゃくちゃ抱きしめられている。どんな寝方。兄と勘違いしてます? 血は繋がってるもんね。どこかしら似てるか。
使っていた枕と自分を入れ替え、如月の抱き枕を脱出する。私が1番に起きるとか珍しいかも!! 兄の顔を覗き込む。間抜けな寝顔。
あっ、そうだ。良いこと思いついた。
如月に抱かせた枕を剥ぎ取り、兄を押し込む。
「……むつきさぁん……」ぎゅう。
寝ていても分かるんだな。感心。2人をじーーっと見つめていると、如月の瞼が少しずつ開いた。
「……おはようございます?」如月は腕の中にいる睦月を不思議そうに見つめる。
「なんで睦月さんがここに?」
「おはよ~~さぁ?」
「起こします?」如月は睦月の頬を軽く叩く。
「……ううん……」起きない。
「睦月さんって家以外だと寝起き悪いですよね」如月は睦月の頬を叩き続ける。
「そうなの?」初知り。
もしかすると、元々寝起きは良くないのかもしれない。いつも私たちのために、毎日頑張って起き、家事とかやってくれているのかな。
「私、朝ごはん買ってくる! 如月、お兄ちゃん起こしておいて!」兄の財布を持ち出し、扉へ向かう。
「はいはぁ~~い」如月は怠そうに手を振った。
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朝からトンカツを食わされている。朝ごはんにトンカツとは一体どういうを胃袋しているんだ。朝ごはんを買ってくると言って出て行ったのに、卯月さんが買ってきたのはコンビニスイーツ。
コンビニスイーツを胃袋に加えた上でのトンカツ。10代と20代の食に対するみなぎるパワーに圧倒されつつ、トンカツを食べる。
「……もう食べれない……」箸が止まる。
「はぁ?! 半分しか食べてないじゃん! 勿体な! 俺が食べる」睦月は如月のどんぶりを片手に持ち、食べ始めた。
「朝からトンカツとは……」
「いや、11時だし! お昼同然」卯月は如月のどんぶりからトンカツを2枚取る。
「あ! 俺のカツ!」
「朝ごはんには変わりない……」
豚肉が厚さ5センチ程度にカットされたトンカツはとても美味しかった。そのボリュームが空っぽの胃には少し重かったけど。お米も麦米で、白米と違い、ぷりぷりな食感を楽しめた。
「ごちそうさまでした!!」2人とも完食。
「よし、次行こう!!」
卯月は店を出て、スマホを見ながら歩き出す。
「え……まだ食べれるんですか?」卯月に訊く。
「もち。これからが本番」恐るべし。
「次はフルーツ! 如月も食べれるよ!」
一緒に食い倒れ人形の近くのビルに入った。
店には串刺しにされたフルーツの棒がたくさん並べられている。これなら食べれそう。いや、むしろ食べたい。卯月がフルーツ飴を片手に戻ってきた。
「はい、お兄ちゃん、如月、どーーぞ」一本ずつ渡される。
「ありがとうございます~~」
「ありがと~~」
パシャ
フルーツ飴を片手に3人で写真を1枚。楽しい。
手に持つと思ったより長く感じる。このフルーツ飴、30センチくらいあるのでは。口の中に入れると、コーティングされた飴が甘く、ジューシーなフルーツの美味しさを引き立たせてくれる。美味しい。
「睦月さん、ひとくちください」顔を近づけおねだりをする。
「ぇえ? 如月が食べてるやつと同じじゃない?」同じですけど。
「じゃあ、いいです」
もう2度とあーーんってしてあげない!! 顔をプイッと背ける。ふん。
「待った待った待ったぁ~~!!」何かを察したのか、睦月は如月の服を掴んだ。
「なんですか~~」睦月を見る。
「あげる、あげるから!! ほら、あーーん」串先を向けられる。
「今更要らないで~~す」もういいもん。
「ぇえ!! やだぁ~~あーーんしたいぃ~~ご~め~ん~~如月ぃ~~」
睦月に歯をいーーっと見せて、威嚇し、食べ終わった串をゴミ箱へ捨てた。
「子供か」卯月は呆れながらフルーツ飴を頬張った。
惹かれるもの全てを食べていく2人に付き合い、お腹は、もうぱんぱんだ。これ以上は食べれない。お腹も膨れたしそろそろ帰宅の頃合い。2人へ声をかける。
「そろそろ、帰りません?」
「そぉだね~~やば、チーズめっちゃ伸びる」睦月は10円の絵柄になっているパンを食べながら、話す。
「めちゃうま」卯月はパンにかぶりつきながら話を聴いた。
「如月、パン半分食べる?」
睦月は丸いパンを半分に割り、にっこり笑い、紙に包まれている方を渡してくる。正直、もうお腹一杯で要らない。だけど、笑顔で渡されたら、食べるしかない!!
「え……うん……食べようかなぁ~~……うまぁ」
美味しいし!!! 何これ!!! チーズの塩気とパンの甘みがマッチして、最高!!!
……1日で物凄く太った気がする。明日から食べ過ぎには気をつけよう。というか、睦月さんと居ると肥える!! 引きこもって小説を書いてばかりだと、このままじゃ体型が維持できないかもしれない!! 何か対策を考えねば!
「睦月さん、明日からはカロリー抑えた昼食でお願いします」少しでも減らす!
「如月ダイエット?」卯月が訊く。
「そ、そんなところです」
「如月のためならなんでも作るよ。さ、帰ろう?」睦月は如月を見つめ、手を握った。
「あ……はい……」絡められる指先に頬が赤くなる。
「嫌な時は言ってね。俺、たぶん、鈍いし……」目線を横にずらし、人差し指で頬を掻いた。
「……嫌だと思ったことはない」絡められた指に自然と力が入る。
「そう、ならいいけど。嫌なことはしたくないから。ねっ!」睦月は首を傾け、ニカっと笑った。
「睦月さんもね? すぐやめますから」如月は目を細めて笑う。
「……それは何を……?」睦月は如月の目を見た。
「気持ち良いこと」睦月の耳元で囁き、頬にキスをする。
「っ!! やだって言ってもやめないくせぃ~~!!」
「そんなことないですぅ~~同意の上ですぅ~~」
「お兄ちゃん達、いちゃいちゃしてるなら荷物持って。如月は花束持って」
卯月は兄へスーツケースを、如月に花束を渡す。
「はいはい、持ちますよ!! 良いですね!! 手ぶらで!!」
「かばん持ってるし~~」
「兄妹ケンカしないの。帰りましょう」
3人は大阪の旅を振り返り、話に花を咲かせながら、佐野家を目指し、帰路に着いた。
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ーー帰宅 佐野家
疲れた。そして食べ過ぎた。お腹いっぱい。お風呂洗ってから旅行へ行って良かった。お風呂入ったらさっさと寝よう。明日に差し支える。
荷物を全て洋室に置き、ふらふらと浴室へ向かい、栓を落とし、お湯を張るスイッチを押す。
疲れてはいるんだけど……少しだけいちゃいちゃしたい。色々邪魔されて、思うようにいちゃいちゃ出来なかった気がする。如月は酔っ払ってたし。
リビングへ戻り如月を探す。いつもの場所で寝転がって本を読んでいる。猫みたい。後ろから静かに近づき、寝転がって抱きつく。
「睦月さ~~ん、後ろじゃなくて前に来てください」
「なんで~~?」
体を起こし、如月の前に移動し、寝転がる。
「ぇえ? されるよりしたい気分だから?」
如月は本を閉じ、睦月を抱きしめた。
「なにそれーーっん」ちゅ。如月は睦月の首筋に口付けする。
「ちょっ……あっ……」首筋に何度もキスを繰り返され、肩がビクっとなる。
「むらむらしてるんです、ずっと」
如月は睦月の肩に顎を乗せた。
「分かるけど分かるけど分かるけどぉ~~今日はハグまでで!」寝返りを打ち、如月の方を向く。
「ぇえ~~」うわぁ、つまんなさそうな顔してる。
「卯月さんは? 卯月さんはどこ?」如月は睦月に訊く。
「ふーーろーー」
「なら良いですね~~」如月は睦月に顔を近づけた。
「だーーめっ! だめだめだめ!! キスしたら絶対止まらなくなる人でしょ!!」両手で如月の口元を押さえる。
「ちょっと~~! なに睦月さんのくせにーー」
如月は睦月の肩を手で掴み、床へ押し、体を重ねた。
「あーーっ! 上乗るなって~~」もう戦闘体制じゃん。
「ハグからキスまでにランク上げて」如月はじーーっと睦月の目を見る。
「む。でもあと10分くらいであがってくるんじゃない? 卯月」如月を見つめる。
「10分でもいいも~~ん」
如月は睦月の頬に触れ、横に押す。顔が横に向く。
「え? ちょっ あっ 口にするわけじゃないの? っん」先ほどの続きが行われるかのように、また首筋にキスが繰り返されていく。
「口にするとは言ってないし」如月は睦月のTシャツをめくり、口付けする。
「は?! だだだだだめだって!!! あっ ちょっ ん~~~っ あっ」もうこれ、愛撫でしょぉ。
「如月ストップ! んっ ストップ! ぁっ ねぇストップっ! あっ」胸元、お腹、へそと、口付けする場所がどんどん下って来てるのが分かる。
「やめてぇ~~如月ぃ~~っ あっ 俺が我慢できなくなっちゃうぅ~~ん はぁっ」下半身に口付けが近づくほど体は如月を求めてしまう。
でも、アレなら如月にされてみたい。
「あ、でもぉ、如月が咥「やらないよ」如月の目が濁る。
「ひどくね?」じとっとした目で如月を見る。
「いやぁ、それはその……やったことないし……」
え? ないんだぁ……意外。
「……如月って……挿れられたことある……?」不意に口から出る。
「え……な……ない…ですけど……」如月は動揺しているのか、黒目を左右に動かしている。
「……へぇ……開拓は……?」欲しい情報が沢山ある。
「……ほぼなし……」ほう? だから受けは嫌なんだな。
これは……俺に受け脱却の兆し!! 如月の開拓を進め、気持ち良さを叩き込めば、攻めなんてやってられなくなるはず!! そうすれば俺にも挿れるチャンスあり!! 燃えてきたぁあぁあぁあ!
「睦月さん、なんか燃えたぎってますけど、私、受けやる気全くありませんから」如月は顔の前で手を横に振った。
「そんなの分かんなーーぁあっ」如月は睦月の膨らんでいるところを触る。
「分かんないも何もしませーーあっ……」仕返しに触り返す。
「規約違反でぇす!! あっちょっんっ如月触り方えっちっぁっ」
「睦月さんも破りましたぁ っん…ぁっ…気持ちいいの? んっ…」
「なにやっとんの」え? 手が止まる。
首にタオルをかけた卯月と目があった。そばに立って、じーーっと見下ろしている。
「…………」
「…………」
睦月と如月は顔を見合わせた後、お互い違う方向をみて、少し考える。もう一度見つめ合い、口を開いた。
「「いちゃいちゃして遊んでまぁす」」
「あっそ。ごゆっくり」卯月は冷たく言い放ち、和室へと歩いて行った。
「どうする? 続きする?」如月は両手で睦月の頬を包む。
「ぇえ~~、明日に差し支えるんだってぇ~~ん……はぁ…っん…はぁ…~~ん」
瞼をゆっくり閉じると、優しく唇が重なる。頬を包む両手が顔の傾きを変え、吐息を吐きながら何度も何度も口付けする。だから言ったじゃん。止まらなくなるって。
「睦月さん、一緒にお風呂入ろう?」如月は体を起こし、艶かしい笑みで睦月を誘う。
「いいけどぉ……」
もうこれは完全に俺のこと狙ってるわぁ。ちょっとだけいちゃいちゃするつもりだったんだけどなぁ。まぁいっか。
睦月は起き上がり、如月と浴室へ向かった。
『ぁあっぁっあっきさらぎっあっまってっあぁっ』
「お兄ちゃん声やば……」
ーー浴室からは睦月の甘い喘ぎ声が響く。それを卯月が赤面しながらこっそり脱衣所から聴いていたのは2人には秘密だ。
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