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20話# 訪問者が必ずしも良いやつとは限らない!
ーー平日 お昼
ピンポーン
玄関のインターホンが鳴った。普段は居留守しかしない。元々この家の住人ではないし。でも、今日は本当になんでか分からないが、相手の確認もせず間違えて出てしまった。
「はい……」ドアを開けると、女性が2人。
「近くを通りかかったので寄りました」寄るなよ……。
「はぁ……?」
今時、近くを通りかかったら気軽に家へ寄ったりするようなスタンスで皆、生きているのか。でも家に寄るということは睦月さんや卯月さんの知り合い? 粗末な扱いは失礼に当たる!! 丁重におもてなしせねば!!
如月は玄関の内側に女性2人を招き入れた。
「乳酸菌飲料の~」
「は、はぁ?」適当に相槌を打っていく。
こ、これは友達なのか?! なんかよく分からない!! すごく乳酸菌飲料を推してくる。サンプルをもらってしまった。なんだこの紙は。契約? 家に乳酸菌飲料が届く的な?
断るとお友達(?)の関係性が悪くなるのかもしれない。まぁそれに、体に良さそうだし、睦月さんや卯月さんの健康を考えれば、問題はないはずだ!!
「契約します」受け取った紙に書き込んでいく。
「ありがとうございます」
いっぱい買って、睦月さんを喜ばせよう!!
「今買える分全部ください」
いっぱい買っちゃった。えへー。両手に沢山の乳酸菌飲料を抱え、キッチンへ行く。全て冷蔵庫へ詰め込み、和室で満足気に執筆を再開した。
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「如月、ただいまぁ~~」
卯月は玄関をあがり、リビングへ向かう。見慣れない、机に置かれた契約書が目に入り、手に取る。なんだこれ。
「乳酸菌飲料?」思わず、眉を顰める。
「あぁ、お友達(?)の方がオススメしてくれたので、買っておきました」それを聞いて目が濁る。いや、絶対友達じゃないし。
「訪問販売では……」如月を冷たい目で見る。
「え?」如月は首を傾けた。
「冷蔵庫にいっぱいありますよ~~」え、怖。急いでキッチンへ行き冷蔵庫を開ける。
「やば……」大量の乳酸菌飲料にドン引きする。
買っただけで本当に済んだのか? よく知らないけど、こういうのって、何か契約みたいのするんじゃないの?!
「これ、他にも何か契約したりしてない……?」先ほどの契約書をもう一度見る。
「毎週届くと思います」やっぱり!!
(お兄ちゃんに頼んで解約しなきなゃ!!)
「もう!! ちょっと考えれば分かるでしょ!! 引きこもり!!」如月の頬を片手で引っ張る。これはまずい!!
「いだいぃ~~!! やめてくださいぃ~~!! いたい゛」憎たらしくて、反対の頬も引っ張る。
ピンポーン
インターホンが鳴った。うざ!!! こんな時に誰!!!
「なにもう!!!」ズカズカと玄関へ向かい、乱暴にドアを開ける。
「宗教に興味はありますか?」はぁ?
「ない!!!」バン。
ドアを思いっきり閉める。
撃退3秒。
「卯月さん、相手の方がビックリします」
如月が玄関まで様子を見に来てくれた。まぁ、ちょっと強く閉めすぎたかもしれない。でもうちはこれでいい。
「甘く対応したらまた来る。うちは親が居ないから狙われやすい」
「な、なるほど……」
如月と一緒にリビングへ戻る。さて、勉強の続きをしなきゃ。如月は卯月の隣に座り、その様子を眺めた。
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*
「ただいまぁ~~」
靴を脱ぎ、早足にリビングへ向かった。早く如月に会いたい。
「ただいま、如月」立ち膝で、座っている如月を後ろから軽く抱きしめる。
「あ……お、おかえりなさい~~」この如月の少しもじっとする瞬間が好き。
「卯月、勉強はどう?」目線を卯月に向ける。
「順調~~だけど、乳酸菌飲料が」卯月の目が白く濁り、紙を渡された。
「乳酸菌飲料?」渡された紙を見る。契約書?
「いや、要らんけど!!!」契約書をぐしゃっと握る。
「ぇえ……」如月が悲しそうな顔をした。
「お兄ちゃん、冷蔵庫にいっぱいあります」卯月が冷蔵庫を指差す。
「え?」
如月から離れ、冷蔵庫の中を見にいく。いっぱい詰め込まれた乳酸菌飲料。要らんでしょ。え。買っちゃったの? マジか。え? これ訪問販売? 契約したってこと?!
握りつぶした契約書を広げ、読み直す。さりげなく契約主が自分の名前になっていることに気づく。
「え? 俺? 如月、どういうこと?」如月に詰め寄る。
「私、居候の身ですもん」自分の名前で契約したくなかったんだろ!! 都合良いな!!
「ふざけんなって!! 解約!! もぉ!! 変なやつ来たらインターホン出ないの!! うちは常に居留守でオッケーだから!! 契約しないで!!」如月の片耳を引っ張る。
「いだっ~~!!! 引っ張らないで!! だってお友達だと思ったからぁ!!」友達?
「んな訳あるかぁーー!!!」反対の耳も引っ張る。
「いだだだだだ!! ごめんなさい!! 次からは気をつけます~~!! だから離して!! う~~」
如月は泣いた。
ピンポーン
こんの忙しい時に誰だよ!!!
「もぉもぉもぉ!! 何?!」足音を立てながら玄関へ向かい、ドアを勢いよく開ける。
「……兄妹だな……」如月はボソッと呟いた。
「受信料の集金に来ました。あなたの家は今、支払いが10万円たまっています」男は睦月を見て話す。
「10万?」え? 払ってるよね?
「1ヶ月分だけでも良いので払ってください」はい?
10万円も滞納? 仮に払い忘れたとして、半年で6000円くらいでしょ。てことは9年分くらいの滞納?! いや、あり得んでしょ~~。
そもそも俺が滞納? ないわぁ。常に数字と戦う経理ですよ、俺。それに家の収支は全て管理してるし。そもそも今時集金に来るとか怪しすぎる!! 仮にもし滞納してたとしても、振り込み用紙だろ!!
こ、これは!!! 詐欺!!!
「今、忙しいんで。じゃ」ドアを閉めた。成敗。さようなら。あとは如月のやつ解約しないと。
「もぉ、変な仕事増やさないでよぉ~~」
半袖シャツを脱ぎ、洗濯機へ放り込む。着替えを済ませ、キッチンへ向かった。
「ごめんなさいぃ~~」如月は睦月の後ろから軽く抱きしめる。
「そう思うなら、ご飯作るの手伝って?」如月はコクコクと頷いた。ふ。かわい。
横並びでキッチンに立ち、料理の準備を始めていく。こうして一緒に料理できるのは少し幸せを感じる。
「麻婆豆腐ですか」如月はカットされた豆腐を湯通しした。
「そうだよ~~辛いのは苦手なのでマイルドに作りまぁす」豆板醤、鷹の爪、ニンニク、生姜、豚ひき肉をフライパンで炒める。
「良い匂い……」如月は豆腐を水切りしながら、フライパンを覗く。
「豆腐入れて、豆腐~~」
「は、はい!」如月はフライパンへ豆腐を入れた。
「ありがとう~~」たくさんの調味料を加え、一緒に煮込んでいく。
ぐつぐつ
2人で料理は楽しい。一緒に何かを作れるってなんかいい。隣に立ち、フライパンを見つめる如月を見た。視線に気づいた如月は睦月の首の後ろに手を入れ、頭を引き寄せた。
「睦月さんからして」如月は薄く微笑む。
「引き寄せといて俺からなの?」流し台の淵に手をかける。体を如月へ寄せ、唇を重ねた。
「もっとして」如月は強く睦月の頭を押す。
「ちょっ……卯月はぁ?」頭を押され、あと一歩で唇が重なるところまで顔が近づく。
「……勉強しながら寝ちゃったよ」動く如月の唇が微かに触れる。近い。
「そっか……ん……はぁ……っん」
求められるまま、唇を重ねる。首の後ろから頭を押され、強く重なる唇に顔が熱くなる。
「舌入れてよ、睦月さん」
フライパンの中で沸騰する音がする。気になる。
「……如月…まーぼーどうーーっん」
待ちきれなくなったのか、唇の隙間から舌が差し込まれてきた。
「~~っん……ん……ふ…っん」
いつもとは違い、最初から激しく絡めてくる。薄目で如月を見る。頬が少し赤い。切れ長の瞳で、まとわりつくような、ねっとりした視線を向けている。その視線が体の中へ性的な欲望を掻き立てる。
「……はぁっ……し、シたいの? 如月」
如月の下半身を見る。服の上からでも立っているのが分かる。返ってくる言葉を考えると胸が高鳴る。
「ご、ごめんなさ……最近、抑えられなくて……」如月は口元を押さえながら目を逸らした。
「……する?」
「ど、どこで……?」
如月は辺りを見回している。ガスコンロに手を伸ばし、火を止め、しゃがんだ。
「……えっちは出来ないけどぉ……口でしようか?」如月を見上げ、笑いかける。
「い、良いんですか?」そんな嬉しそうに見つめられても。
「うん、満足させてあげたいし」
如月のパンツに手をかける。ボタンを外し、脱がせていく。まぁ俺もして欲しいくらいだけど、今日はいい。
「ゴ、ゴム付けましょうか?」如月は脱がされ、恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「んーー要らなぁい。つけない方が気持ちいいと思うし……」
「でもお風呂まだ入ってな……あっ……何してっ…………っ」そっと手で持ち、舌先で舐める。
「……んっ……はっ…ぁ……あっ……ん」
如月は台所の淵を手で掴んだ。微かに体が震えている。感じてくれているのかな。先の方をゆっくり舐めていく。
「……む、睦月さ……っ……あっ……あんまり…ぁ…やると…ん……出ちゃうから…口に入れて……っん」
目線を如月に向ける。顔赤っ。また口元押さえてるし。目が閉じそうになるほど気持ち良いの? だと嬉しいんだけど。
「もう? あと少しだけ。ねぇ気持ちいい? 如月」唾液を含み、先の方から口の中へ入れる。舌で這うように舐め、刺激する。
ピンポーン
「……あっ……ぁ…上目遣いで……見ないでっん……はっ…あっ……ん…」
口内で感じる。固く、かなり大きくなってきた。あともう少し。ていうかピンポン誰だよ。邪魔するな。舌で横も上も下も愛でていく。
「……はっ…ん……あっ…睦月さん…ぁ…すごく……ぁ…気持ちいぃっ…です……んっ…ぁ…ごめんなさ……出ちゃ……はぁぁっ……」
気持ちいいって言ってくれた。嬉しい。如月は全身を小刻みに震わせながら、目を瞑った。口の中になんとも言えないものが広がる。
でもこれは如月がちゃんと感じて絶頂までいくことができた証だもんね。
ピーンポーン
「だ、誰?! む、睦月さん! 口の中のやつ吐きましょう!!」如月は、あたふたしながら、睦月の手を引っ張り、立たせる。
「んーー……飲んじゃった」顔を傾け、ニコッと笑う。
「はぁっ?!」如月は目を見開いている。そんなに驚かなくても。
「まぁ良いじゃん。如月が感じてくれて俺すごくーー」
ピーンポーンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
「うざ。さっきから誰だよ」如月への愛の言葉が掻き消されたんですけど。
「誰とも約束してない気がしますけど……」如月は降ろされた下着を履いた。
「見てくる」
玄関に向かいながら、少し汚れた口周りを手の甲で拭う。
こんな近所迷惑行為一体誰が? 玄関の覗き穴から相手を確認する。うん。お前か。何しに来たんだ、マジで。帰れよ、もぉ。
「はぁ……」
睦月は扉の向こうの相手に溜息をついた。
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