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第14話
「……何なの、お前。聞く必要あるか? もともと、遊び半分なんだから別にいいだろ?」
「よくない。なんかムカつく」
「はぁ? ムカつくって何だよ。だいたいあれはお前がノリで……」
「そうだよ! 楽しそうかなって思ったから、言った」
「だろ? だったらもういいだろーが。お前の希望どおりに俺はやった」
キスもしたし、デートも抜き合いにも付き合ったんだから、もういいだろうと伊織が言う。確かに、伊織は雄大の希望どおりに対応してくれた。けれど、納得いかないものはいかないのだ。
「……けど、伊織、オレが好きじゃん」
「友達だからな」
聞き間違えてはいないと思うのだ。何度聞いても、伊織ははぐらかしてくるけれど、絶対に聞こえた。すごく近い距離で、掠れたような声で、伊織は言ったのだ。
「……嘘つき」
「嘘じゃ……」
「あんなことしてるときに、友達に好きとか言うわけない!」
頑なに認めようとしない伊織にはっきりと言い切ったら、伊織が黙り込んだ。
「好きなくせに、なんで別れたいわけ? 意味わかんな……」
「だからだろ! キスしろとか、触れとか! マジで勘弁してくれっ……、クソッ……」
どうしても聞きたくて問い詰めたら、伊織が声を上げた。捲し立てるように言われて、言い返すことができなくなる。
「だ、だって……、伊織、いいって言った」
キスしたいと言ったのも、デートしたいと言ったのも、触り合いをしたのも、全部雄大がしてみたいと言ったけれど、伊織は「わかった」と言ったのだ。無理矢理させたつもりはないのに、責めるみたいに言われて、雄大は口を尖らせた。
「……嫌なら、断ればよかったじゃん」
「はぁ? 断れるわけねえだろ⁉ ……二度とないかもしれねえのに」
文句を言ったら、言い返された。後半、伊織の声が小さくなる。ますます意味がわからない。
「嫌じゃないのに、なんで別れんの? 別れる必要なくない?」
「はぁー……。もう、マジで……」
問いかけたら、それはもう盛大なため息が聞こえた。
「……もう、普通に友達に戻ってくれ。頼むから」
「え、嫌だ。だって、付き合ってたほうが楽しいもん」
友達でいたときも楽しかったけれど、付き合っていたほうがもっと楽しい。ものすごく短い期間だったけれど、いつもと違う伊織を見ることができる。そう思うから、嫌じゃないのに別れる、のは納得できない。
「馬鹿なの? お前。俺が好きでもお前は俺が好きじゃないだろ? あんなの、我慢できねえって言ってんだよっ! 馬鹿!」
「へ? あー、……。あ、そういう……」
そこまで言われて、伊織が雄大と別れたい理由にやっと気がついた。伊織は雄大に不満があるわけではないらしい。
「わかったんなら、もう……」
「待って! 今、考えるから!」
ベッドから立ち上がって、歩き出そうとした伊織の腕を掴む。
「考えるって、何考えて……」
「待ってってば!」
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