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第15話

 実際、付き合っていればすることになる行為だ。一方的に別れたいと言われて、納得できなかったから伊織に詰め寄ったけれど、続けるのならば、そういう行為も含まれてくるだろう。  男とどうこう、なんて考えてなかったのに、キスも触り合うのも平気だった。気持ち悪いとか嫌だとも思わなかったし、したことがないから断言はできないけれど、できないこともないかもしれない。 (いけそうな気がする、……うん)  なんとなく想像して、伊織を見上げた。 「いいよ。伊織がしたいようにして」 「は?」  雄大を見下ろしている伊織は目を見開いたまま動かない。口も開いたままだ。 「伊織?」 「わ、悪い。ちょっとついていけてない……。なんて?」  声をかけたら、伊織の動きが戻った。ぱちりと瞬きした伊織に聞かれて、答える。 「だーかーらー、してもいいけどって言った」 「マジで?」 「うん。マジ。……っていっても、さすがに今日は無理だけど」 「そりゃ、そう……」 「ってことで、別れんのなしな。あ、伊織、今日暇なんだろ? 飯行こう、飯。オレ腹減っちゃってさあ……」  言いながら、雄大は立ち上がった。 「ちょ、雄大! 待てって!」  玄関に向かって歩き出した雄大を伊織が追ってくる。 (試したことないけど、悪くなさそう。……だって、伊織の色んな顔見れる) 「ふっ、あはは……」 「何笑ってんだよ」 「なんでもなーい」  楽しみだなと思って笑ったら、後ろから伊織の声が聞こえた。 ***

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