17 / 32
第17話
「この前って……、その、あれか? ……あれは別にいい。もう忘れろ。ちょっと言い過ぎ……」
「え? 忘れないけど。だって伊織、我慢できないって言ってたじゃん。それだけしたいってことだろ? オレもいいっていったし」
雄大が言った『どっち』の意味を理解したらしい伊織が言い終わる前に言った。するつもり満々だからこそ電話をかけたのだ。どちらになるか、気になって。
「いや、でも……」
「あー、もう! いいから答えろよ! どっち? 突っ込まれたい側?」
「はぁ? んなわけないだろ」
「だよな。うん。そうかなって思ってた。入れたい側な。おっけー、了解」
「了解って、え?」
(やっぱ、そっちだよな。って、どうにかしなきゃ!)
伊織の中で、立ち位置は確定しているらしい。すると言ったことはする、が雄大のモットーなのだ。エッチをすること前提で、交際を続けると決めたし、伊織にもそう答えた。だから、今、雄大がすべきことは、受け入れられるように訓練すること、である。
「あ、伊織。オレちょっと、出かけるから切るわ。じゃあ、またな」
「ちょ、おい! ゆうだ……」
「バイバイ」
電話を切って立ち上がり、雄大はクローゼットを開けた。
着ていたジャージをポイポイと脱いで、デニムとTシャツ、パーカーを引っ張り出し、着替える。鞄の中に財布と携帯を突っ込んで、雄大はバタバタと家を飛び出した。
エレベーターを降りて、駐輪場まで早足で向かう。鍵を差し込んで自転車に跨り、グイとペダルを踏みこんだ。
(全部揃えるなら、あそこが一番だ)
家から十分ほどのところに、大きなディスカウントストアがある。雄大の目的地は、そのディスカウントストアだ。
チェーン展開している店なのだけれど、雑貨やお菓子も売っているし、化粧品や服、薬まで何でもそろっている。スーパーとは違ってよくわからないグッズも置いてあるから、雄大も暇つぶしによく行く店だ。
店の前にある駐輪スペースに自転車を止めて、ごちゃついた店の中に入る。
(とりあえずは、あれだな……)
店内奥にまっすぐ進んで、エレベーターのボタンを押す。目的の階にで降りた雄大は商品で埋め尽くされている店内を進んだ。
服や下着が並ぶ通路の一番奥。少し奥まったところが、雄大の目指す場所だ。
(あったあった)
十八歳以下お断り、の暖簾がかかった入り口。ほかの場所は商品が丸見えになっているけれど、ここだけは特別である。壁の外側にはいろいろな商品が吊り下げられているが、暖簾の中は外側とはまるで違う商品が置かれているのだ。
ともだちにシェアしよう!