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第4話

「ねえゼロ」 「何だ」 「俺はここに居るべきじゃないよね?」 「ここがお前の居るべき場所だ」 そんな馬鹿な。 今俺は、北の魔王城の、家臣が忙しそうに出入りする魔王の執務室で、淡々と執務をこなす、魔王ゼロの膝上に座っている。 いやいやいや。 「絶っっっ対に、間違ってる」 「間違いない」 ちょっと、誰が止めてよ。 魔王様、恐れながらそんなモノを膝上に座らせて仕事をなさるのはどうかしてますよーって。 「仕事の邪魔でしょ」 「独りにしないと約束した。それに、セナが側に居ないと仕事が手につかない」 「うそぉ・・・」 大きな机には仕事の書類とか山積みで、わざわざ横にサイドテーブル用意して、俺の飲み物とお菓子置いちゃってるけど。 俺がこのジュースこぼして、書類ダメにしちゃったらどーすんの? みんな激おこだよ? 「その菓子が気に入ったのか。おい、もっと持ってこい」 「かしこまりました」 確かにこのクッキー気に入ってずっと食べてるけど。 いいよそんなお気遣いなく・・・。 「いや、もー大丈夫。ほんと、お構いなく」 「なら軽食にするか?おい、何か・・・」 「ううん大丈夫!お腹いっぱい!」 「・・・そうか」 ねえ、しょんぼりするのやめて。 充分良くしてもらってるから。 満足してるから。 俺を構って仕事が放置されてちゃってるから。 家臣さんたちも困惑してるから。 「だから、その・・・ゼロがいれば、それで、いい、から・・・」 恥ずい・・・俺は何度恥ずか死ねばいいんだ・・・! でもこれは、この執務室で働いている家臣さんたちのためだ。 これ以上ゼロの手を止めたらだめだと思うから。 お世話になる訳だし、恥ずか死ぬくらい、何でもない・・・。 「セナ、本当に可愛いな」 「んっ・・・ふ・・・ぅ、・・・んんっ」 ちゅーしなくていいから! 仕事して! みんな見てる! 「ん、ね、ゼロ・・・んっ、し、しごと・・・っ」 「ああ。さっさと済ませて寝室へ行こう」 「・・・ぇ、なんで、しんしつ・・・」 それからゼロは凄い勢いで書類を捌き、俺はせめて邪魔にならない様、じっと大人しく彼の膝上に鎮座していた。 この仕事が済んだらどうなるか、一抹の不安を覚えながら。

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