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第8話
広い食堂に夕食を食べに来た。
大きなテーブルの向かいでなくても、せめて隣のイスに座らせてもらえたら良かったんだけど。
「ご飯食べるのもここなの?」
執務室と同じ様に、俺はゼロの膝上に座らされている。
料理は豪勢で量も凄いが、カトラリーがゼロの分しかない。
え、首輪嵌 められただけじゃなく、ご飯も抜きなの?
「離れれば辛いのはセナだぞ」
旨そうなミディアムレアのステーキを綺麗な所作で切り分け、俺の口元へ持ってくるゼロ。
これは、あーんってやつ?
「ぁー・・・んむ。んー、んまい」
俺は何を呑気にお肉味わってんだろ。
首輪はまだ気になるけど、とりあえず聞いておく。
「なんであの魔法陣を用意したの?俺の事、帰すつもりだったんじゃないの?」
「セナを帰すつもりはない。あれは・・・お互いに望まない相手が召喚されたら、使うつもりだった」
お互いに望まない相手。
じゃあ俺は、望まれてるって事?
花嫁自体を望んでなかった訳じゃないって事?
「俺が、来るの遅かったから、今更いらないって思って帰すのかと・・・」
「早かろうが遅かろうが、セナであれば帰しはしない」
そんなに俺の事、好きなの?
ゼロに餌付けされながら、色んな意味でいたたまれない気持ちになる。
「一目で惚れたと言っただろう。こんなに可愛い花嫁が来るとわかっていたら、魔法陣 を用意する必要などなかった」
「・・・ふぅん」
もぐもぐしながらゼロの話を聞く。
魔法陣の部屋が放置されていたのは、俺をかまっていてすっかり存在を忘れてしまったから、と。
そおだね、ずっと俺に付きっきりだったもんね。
でもさ、首輪はやり過ぎじゃない?
「ねえ、これ外して?」
「だめだ」
「もお帰るとか言わないから」
「だめだ。鎖で繫れないだけいいと思え」
鎖って・・・。
仕方ない、ゼロの気が済むまで我慢するか。
「すごい束縛するね・・・」
「龍の執着は強い、諦めろ」
「りゅう?」
デザートを食べさせてもらいながら、空想上の生き物の名前に首を傾げる。
「俺の真の姿は龍だ。龍の性質として強い執着がある。セナは俺にとって唯一の執着対象だ」
執着って・・・ちょっと恐いんだけど・・・。
てか、ゼロって龍なんだ・・・龍の姿、見てみたい。
「ねえ、龍の姿って・・・」
「春になったらな。城の中では狭い」
春、早く来ないかな。
龍と云えば、逆鱗ってほんとにあるのかな。
触ると怒るんだっけ?
「ねえ、逆鱗って・・・」
「セナなら触れても問題ない。寧 ろ今はセナが俺の逆鱗だな」
逆鱗あるんだ・・・問題ないなら触らせてもらおう。
俺が逆鱗・・・って事は俺に触るとゼロが怒るのか。
俺自身、ゼロ以外とのコミュニケーションは気を付けた方がいいな。
それにしても、さっきから俺の言わんとしてる事を先読みして応えてくれるけど、龍には読心術なんて能力あったりする?
「もう食べないのか?」
「こんなに食べたじゃん。もーお腹いっぱい」
俺に食べさせながらゼロも食べてたけど、俺の3倍は食べてたな。
身体も大きいし、龍だから?
そういえば、身体が大きいのはゼロだけじゃない。
執務室にいた人たちも、騎士たちも、塔の管理人さんもデカかった。
この世界だと、俺はチビなんだろうな。
他の花嫁は、どうなんだろう。
「他の花嫁さんたちは・・・」
「会いたいのか?」
まあ、会えるなら、話したいかな。
こくっと頷くと、ゼロが考え込んだ。
え、他の花嫁との交流はだめなの?
「召喚の塔で花嫁たちの茶会がある。次の茶会に顔を出すか?」
「あ、うん、行く」
ちゃかい・・・って、お茶会か?
お貴族様かよ・・・。
「お茶会のマナーとか・・・んぅ・・・っ」
いや何でちゅーするかな。
服の中に手を入れてくるなって。
「ん、はぁっ、ちょ、・・・んんっ、ゃ、ぜろぉ・・・っ」
「やっと呼んでくれたな、セナ」
ああ、さっき魔王様って呼んだの、気にしてたんだ。
ほんと、名前呼んだだけで機嫌良くなるの不思議。
あ、そうか、その手があった。
「ん、ねえ、・・・んっ、ゼロ、くびゎ・・・んぅぅっ」
あ、だめか。
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