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第13話

あー、めっちゃ天気いいなー。 キラキラして見えるのはダイヤモンドダストってやつかなー。 寒いんだなー。 でも青空が綺麗だなー。 「ねえゼロ」 「だめだ」 このジュース美味しいなー。 あー、なんか飛んでるー。 あれ鳥かなー。 寒くないのかなー。 「ゼロぉ」 「あれはワイバーンだ」 そっかー、鳥じゃないのかー。 ワイバーンって龍の仲間かなー。 ゼロの親戚なのかなー。 「飛龍は親戚ではないぞ」 「俺の心の声を読むのやめてよっ!」 龍の読心術、恐るべし。 それにしたってヒマなんだけど? 執務室の窓から見える外界に想いを馳せる事しか出来ないなんて、つまんない。 ゼロの膝上以外の場所に行きたい。 歩きたい。 外出たい。 「ねえ、外行ってみたい。吹雪いてないから大丈夫だよ。ゼロと一緒にゼロの領地の寒さを体感したい」 「・・・仕方ないな」 おお! ついに城の外に出られる! 執務室で働いてる皆さん、ごめんなさい! 仕事の邪魔をして大変申し訳ないのですが、俺はお外に出たいんです! こんな穏やかな天気なの初めてだし! 執事さんが毛皮のケープコートを持って来て、ゼロが受け取り俺に着せてくれる。 「歩きたい。手、繋ご」 ゼロが転移魔法を使おうとしたので止めた。 せっかくだから外まで歩こう。 「服を掴むのはやめたのか?」 それ言う? 服を掴んで歩こうとしたら、ゼロと歩幅が違い過ぎるせいで、俺は遅れて服から手が離れて距離も離れて首輪が締まって・・・。 「手を繋ぎたいのっ」 「くく、そうか」 なんでそんな意地悪なんですかね。 機嫌のいい意地悪ゼロと手を繋いで城内を歩く。 「あ、ここって・・・」 たぶん、位置的に、あの魔法陣があった部屋だ。 いや、部屋だった場所だ。 床も壁も天井も、徹底的に破壊されて空洞になってる。 なんと(いた)ましい・・・。 「修繕とか、しないの?」 「いや、当分はこのままだ」 なんかこの惨状を見ると、元の世界へ帰るなんて考えるなよ、という無言の圧を感じる・・・。 「絶対に帰しはしないからな」 「・・・はい」 龍の執着、恐い。
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