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第31話 その後②

 がしっと後頭部をバスケットボールのように掴まれ、唇を押し当てられる。 「ん。ごめ」  ぬるりと舌が歯列を割って入ってくる。藤行も下手ながら舌を絡めた。 「ふ、ん。……ぁ」  腰をさわさわと撫でられ、突き飛ばそうとするが大きい身体が覆いかぶさってくる。 「あっ、んん! んう」  腰にあった手が下がり尻を掴む。太い指が、くにくにと後ろの穴を刺激してきた。  パンツ一枚なので穴にわずかに指先が食い込んでしまう。 「んう! んうっ!」 「エロい顔」 「やめ……ぅうう」  体格差的に、こうなればもう抵抗できなくなる。正確に言うと暴れても意味がない。我が物のように尻をいじくられ、唾液を啜り取られる。 「ふう、あ。しん……ん」  苦しいのに、気持ちが良くて。頭の奥が痺れてくる。 「ん、ん」 「おーおー。気持ちいいか? 反応してきてるぜ?」  尻から手を移動し、股間をするりと撫でた。ビクンと腰が跳ねる。 「ああっ」 「やらしい声出しても今日は大丈夫だぞ。この雨音だしな」  尻穴辺りから撫で上げるように股間を何度も摩られ、じわっと下着にシミが出来る。 「あーあ。俺の下着に」 「ああ! 触らなっ、ひん!」  足を閉じたくても伸一郎の膝があるので閉じられない。せめてもの抗議で、膝で彼を挟むが軽々と片足を持ち上げられる。 「伸一郎さん」 「うーわ。お前なんで下着履いてんだよ。チンコ見えないだろうが」 「脱がさないで! それより、仕事の話聞かせてよ」  両手でパンツを押さえるが、片手の伸一郎に余裕で力負けした。シャツ一枚にされる。 「仕事っつっても、ジジババの畑でこき使われてるだけなんだけどな」 「ちょ! ……胸触らないで。ん! あ、ああ、伸一郎……さ、あぁ!」  股間を膝がぐっと押して、両手の指が胸の突起をいじる。 「ああん! やだ! あっぁ。そこ、やめ……引っ掻かないで」 「畑継げクソガキって言われながら、毎日土いじりだよ」  話が入ってこない。  伸一郎の両手首を掴む。 「っこんな、状況で話、聞けるわけないでしょ⁉」 「んだよ。邪魔すんな。人が話してるのによ」 「……おじいさんの、畑?」 「ああ。でかい土地持っててな。仕事紹介してくれ~って久しぶりに帰ったら、な」 「畑継げって、言われたの?」 「ははっ。まあな。でも畑仕事は嫌じゃねえから、教わりながらやってる」  頭にタオル巻いて土いじりする伸一郎さんかぁ……。  想像だけでぽっと頬が染まる。 「かっこいい」 「まじで? 嫁いでくる?」 「んぐっ!」  流れるようにプロポーズするな。 「最初だから小遣いくらいの給金しかくれねーけどな。稼ぎゼロは脱したぜ」  稼ぎ小遣いなのに自慢げに白い歯を見せて笑っている。 「ひゃわ!」  油断したところを、胸にキスされた。 「ん……はあ、ん……。びっくりすんだろ」 「お前がエロイのが悪いんじゃねぇの?」 「でも、……ん。どうして、急に?」  無職で、たまに競馬で稼ぐ典型的な駄目人間だったはず。  伸一郎は答えずに時折角度を変えて胸を強く吸う。 「ん、ああ! ひい……吸わな……。んあ、あ、離して……あぐ」  恋人の太い指が口内に入り込む。  優しく上顎を撫でられ、ぞわぞわっとした感覚で身体が震える。口を閉じたいのに、恋人の指を噛むわけにはいかなくて。 「んあ、ああうう! んうう」  口内と胸を同時に刺激され、ビクッと片足が跳ね上がる。 「んん、っん、ん」  唾液が零れそうになるのに、容赦なく口内をかき混ぜてくる。 「やめ、へ……。んう」 「気持ちいいんだろ? 表情溶けてるし……。それに」  じっと股間を見てくる。からかうように笑われて、ぽこんと頭を叩いた。 「話してる最中はやめてよ!」 「なんで?」 「……なんでって」 「俺の声よりお前の喘ぎ声を聞いてる方が、俺が楽しいに決まってんだろ」 「……」  どこの暴君だよ。  ローションの手を伸ばした男を見て、流石に起き上がった。 「ストップ!」 「はあ? 一週間もお預けくらってたんだぜ? これ以上焦らすなら、優しくしてやれねーぞ」 「……ぐ」  こつん、と額を小突かれる。 「お前がアニメに夢中になってたせいでな」 「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ」  言い返せない。 「じゃあ、伸一郎さん俺の家に来て、一緒に見ればよかったじゃん!」 「お前の親父、俺の顔見たらこの前気絶したじゃねーか」 「……」  額を押さえる藤行。  青空は懐いているのだが、父親はあの日以来、伸一郎さんと遭遇すると露骨に逃げるか、酷いときは泡拭いて気絶するようになった。トラウマになってて少し笑う。 「あ、うん。……気を遣ってくれてありがと」 「キスは?」 「その前に! 今日はヤルつもりで来てないから! 今日は無し!」  腕をバッテンにするが、片手でころんと後ろに転がされた。 「あーはいはい。いいからケツ出せ」 「ちょっと! お尻もそこまで、気合入れて洗ってないんだって!」  聞いてないのか、ぶちゅぶちゅとローションをひねり出している。 「伸一郎さん」 「うるせーな。つーか何、風呂入ってんだ。お前のにおいがしなくなってんだろ」  風呂入ってんだって…… 「においフェチ、なの?」  さっさとうつ伏せにされる。 「はー? 石鹸のにおいより藤行のにおいがした方がいいに決まってんだろ。何言ってんだ」 「も、ううう」  この人どんだけ、俺のこと好きなの。俺も……好きだけど。  お腹の下に腕を差し込まれ、尻を突き出した姿勢にされる。 「それに。お前、なんか男のにおいがする」  低い声に心臓が跳ねた。 「はへ?」 「俺には会いに来なかったのに、男と会ってやがったな?」 「……あ!」  宮治のこと⁉ はあ? においがするって……風呂入ったのに? その前に雨でびしょ濡れだったんですが⁉ におい残ってるの? 警察犬か何かですか?  唇を噛み、だらだら汗を流す藤行に、はあとため息を吐く。 「いい度胸だ」 「ちょ! 違うって。浮気とかじゃなくて」  必死で言葉を重ねるが、一蹴される。 「どうでもいい」  肩が揺れ、表情が青ざめる。泣きそうな藤行を見て、こめかみにキスした。 「何泣きそうになってんだよ。今泣きたいの俺だろ」 「ご、ごめん。か、誤解されたくなくて……」 「どうでもいいって、お前のことじゃないぜ? お前こそ勘違いするなよ」  つんっと乳首をつつかれ、「ひゃん!」と声を出してしまう。  咄嗟に口を押さえるが出した声は戻らない。顔が熱いくらい燃える。 「なんだその声」 「もう! クラスメイトと久々に会っただけだって。偶然」 「で?」 「お、お茶して、少し話してた。……こ、告白された」  今思い出すと複雑な気分になる。もう宮治とは友達でいられないのかな、と。 「そいつの名前と住所は?」 「知ってどうすんの⁉」  逃げようとしたが足を掴まれ、引き寄せられる。尻を掴まれ、ローションを纏った指が穴に押し当てられた。 「ひん!」 「決まってんだろ? お前の良いところ言い合いながら酒飲むんだよ」 「……う、ん」  全人類友達だと思ってる伸一郎さんっぽいな。外見のせいでつい喧嘩するのかと思ってしまったが、本人は至って友好的なタイプだ。  穴の入り口に、ぬるぬるとローションを塗りこまれる。 「ん……ふ、うぅ……」 「おい。力抜け。尻の穴を閉めるな」  大きな手で尻肉をぺちぺちと叩かれる。 「そんな……ちょっと、待って」  一週間ぶりなのだから。身体が反応してしまう。  上手く力を抜けない。 「ん、んん……。伸一郎さん、が、触ると。ん、気持ちいいから。んっ。力が入っちゃって……」 「煽ってくるよな。お前」  片腕が伸びてきて、手のひら全体で胸を揉んでくる。 「ひゃ! 馬鹿っ。触らないで」 「んー?」 「あ、ごめん。ローションでぬるっとして、余計……」 「余計? どうした?」  悪童のような顔で笑い、伸一郎は顔を寄せてくる。 「余計、なんだ?」 「あ、そのっ」  尻穴の周りに円を描きながら、手のひらで乳首をこね回す。 「あっ、あっ! んう! あ、はあ、あ、ああん」 「言えって」 「はあ、ああ、言えな、んあ。やめ。止めてぇ」 「ちょっと触っただけで溶けるようになったなぁ? 藤行。俺好みだぜ」  胸から手を離し、藤行の顎を掴む。 「はあ……だって。伸一郎さんに、触られて、いるんだもん」 「へっ」  ぐちぐちっと肉を押しのけ、ナカに太い指が入り込んでくる。 「はあっ、あっ、あ、ああっ」 「いいな。もっと鳴いてみせろよ」 「んうー。はああ、もっ、ゆっくり、ああ」  ローションまみれの指が、口にも入ってくる。甘くも苦くもない。伸一郎の指の味がしないことの方が不満だった。 「もっと舌を出して喘げ。犬みたいによ」 「や、やら!」  舌を摘まれているため、首も満足に振れない。四つん這いのまま、犬の真似をさせられる。 「ほら。鳴けよ。今日はアンアン鳴いても声漏れねーって」  雨に加え、遠くで雷の音までする。 「や、や……」 「照れるなって。撮っといてやるから」  ローションや涎で汚れるのも構わず、スマホを三脚にセットする。絶望の文字が見えた。 「―――ッ⁉ ちょ、ていうか。旅館行った際にも撮ってなかった? あれ、消してくれたんだよね⁉」 「あれで抜いてる」 「嘘だと言って! ……んぐうっ」  ぐちゅっと音を立て、指が更に奥に進む。 「はは。きゅうきゅうに締め付けてきやがる」 「ん! は……あ、あ、あ、あ……」  一週間で穴が締まってしまったのか、指一本なのにそこそこ苦しい。呼吸するために口を開けてしまう。 「おお、いいぞ。もっと犬みてえに呼吸しろ」 「あっ……あっ……!」  ジーッとこちらを向いているスマホカメラをどうしても意識してしまう。これを撮られていると思うと恥ずかしくて、つい肛門に力が入る。 「んっ」 「こればっかりは慣れてもらわないとな」  せめて表情が映らないように顔を伏せようとするが、顎を掴まれ、顔を上げさせられる。恥ずかしいのに、彼に久々に触れられ身体は悦んでしまう。 「ばっちり撮ってもらえ。そのとろけた顔」 「いやぁ……。ひう! 伸一郎……さ……。あ、ああ!」  回転させながら進んできた中指がほぼ埋まる。 「あ、ああ。あ」 「全部入ったぞ? 分かるか?」  耳元でささやかれ、ビクッと肩が揺れる。 「あ……はい」 「いい子だ」  ツゥッと首筋をなぞられ、がくがくと両手が震えた。身体を支えていられなくなるが、ナカに杭のように指が埋まっているためこの体勢を強要される。 「あっ……くるしい」 「この映像。あとで一緒に見ような?」  やわやわと胸を揉まれ、甘い声で鳴いてしまう。 「お。尖ってきたな」  乳首を強めに摘まれ、ビクッと尻を振ってしまった。 「おっ! ああ。やめ……そこ」 「そうか。胸を触られたままがいいのか」  右手で胸を摘むと、左手で前立腺を擦ってきた。  藤行は目を見開く。 「ああっ! ああ! いやぁ! やめ……ソコッ。擦らな……ああっ、あああ。しん……! ああ駄目! 胸、やだぁ!」 「一週間放置されたんだ。とりあえず声が枯れるまで鳴いてもらおうか」 「ごめ! んああ。擦らないでダメェ! アッ、あああ! お願い。ごめんなさい! もう、ゆるし、止めてぇえ!」  腹に当たるほど反り立った股間が、藤行が反応するたびに揺れる。蜜を垂れ流し、毛布の上にシミを作っていた。

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