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第33話 ちゃんと働いているのか、見に来ただけだ!

(汗が止まらねぇ……)  ジジババの居る山に戻ってきて二日目。今日も朝早くから畑に放り込まれていた。  暦の上では秋になった気がするが、身体を動かしていたら汗が出てくる。腰を痛めているジジイの代わりに邪魔な切り株を撤去していたところだ。  斧を担いだところで足音がした。そこそこ大きいので狸じゃねぇな。 「おーい。伸一郎さーん。休憩にしよー」  思わず目を細める。寒気がするようなダッサイ服を着てマヌケ面で走ってくるのに、目に突き刺さる朝日のように眩しい。 「……なんか、失礼なこと考えてない?」  嫁にする予定の恋人の、藤行だ。勘がいいのかじろっと笑みが消える。黒髪に白い肌。部活もやってなかったようでまったくと言っていいほど焼けていない。初めて一緒に風呂入った時よりも伸びた髪を、暑いのか後ろで無理矢理結んでいる。  首筋を流れる汗がエロいな。 「別に」  ぐいっと顎にまで流れてくる汗を手の甲で拭う。 「……」  手ぬぐい巻いて畑仕事する姿がツボなのか性癖なのか琴線に触れたのか、口を開けてぽけーっと見つめてくる。正直、これが面白くて頭にタオル巻いてる。  しかし、見られているのも暇なのでキスのひとつでもしようとすると、野良猫の反応速度で後退しやがった。チッ。  藤行は若干距離を開けたまま、ジュースを二本見せる。 「はいこれ。ポカリとコークどっちがいい?」 「こういうときは水かお茶だろ」 「うるさい。清涼飲料水を飲んでシールを集めるとアロエちゃんキーホルダーが当たるんだ。黙って飲め」 「……」  こういうところに惚れたので無言で赤い方の缶ジュースを受け取る。  パシュッといい音を立て、泡がせり上がってくる前に豪快に傾けた。しゅわパチパチと口内で炭酸が弾ける。 (久しぶりに飲んだな) 「ポカリうめー」  横で、同じく汗だくの藤行も喉を潤している。  肌が白い藤行の腕を掴むと、果物の木の木陰に引っ張っていく。 「あほお前。日傘くらい差せ」 「日焼け止め塗ってるって……。畑仕事しながら傘差すの無理じゃない?」 「帽子は?」 「持ってきてない」  ジジババの家でくつろいでろと言いたいが根っからの主夫の藤行は働くなと言っても、初めはじっとしているが気がつけば掃除を始めている。「伸には勿体ないね」とババアが笑っていたな。 「おばあさんがおむすび作ったから、伸を呼んできてくれって。伸って呼ばれてるの、可愛いね」  うりゃうりゃと肘でつついてくる。 「耄碌して俺の名前忘れたんだろどうせ」 「なんでそんなこと言うの⁉ めっちゃ元気じゃん! 鎌二刀流で雑草刈ってたよ! 山に住んでる人って皆二刀流なの?」  「そうだ」と言えば信じ込みそうな勢いだ。んなわけねぇだろ、多分。  二人並んで畑から出て家に戻る。ザ・山の中によくある古い家、だ。見飽きた光景だが藤行(都会暮らし)には新鮮なようで、初日は目を輝かせていた。 「はあ……。こういう古いけど広い家ってテレビとかでしか見たことなかったから、かっこいいよね」  一日経過したのにまだ輝かせている。物置や百年前の洗濯機が珍しいのか、ちょろちょろ見て回っていた。かわ……なんでもねぇ。  ちなみにどこがかっこいいのか本気で分からねぇ。こいつのことはいつもよく分からないので気にしないが。 「伸一郎さんを連れてきました」  もう仲良くなったのか、ババアに親しげに手を振っている。  広さだけはある木造の家。縁側に正座し、お茶を飲んでいる割烹着姿の女性も手を振り返す。 「ありがとね。藤行ちゃん。さ、いっぱいお食べ」 「ありがとうございます! ……何もしなくても飯が出てくる。泣きそう」  何もしなくてもって、こいつはずっと畑仕事をしていたと思うんだが。家事じゃなければ何かしたカウントに含まれないのだろうか。 「手を洗っておいで」 「はい」  物置の横にある、半年に一回ぶっ壊れる水場。蛇口を捻るとボッと水が破裂したことがあるので、俺から先に手を洗う。  無事に冷たい水が流れる。 「台所も味があるよね。昭和初期って感じがしてさ」 「ボロイだけだろ」 「物置や屋根裏部屋にお宝ありそう!」 「発掘するなら付き合うぜ」  金目の物が出てきたら売り払うか。その前に、  蛇口をこんこんと拳で軽く叩く。 「藤行。この蛇口、たまに爆発するから。使う際は俺かジジイを盾にしろ。いいな?」 「爆発するの⁉ なんで? ……お世話になってるのに盾にできないよ」 「はあ?」 「ちゃんと気を付けるから」 「はあ?」 「納得しろ! 舅をいきなり盾にした鬼嫁って噂が広まったらどうす、誰が嫁だ! 調子乗んな!」  藤行も手を洗っておむすびのところへ。 「……鬼嫁か。へッ。悪かねぇな」 「ちょっと? 違うからね? 今のは言葉の綾で……」  何か言っていたが食べ始めると静かになった。 「おう! もう食べ始めとったんか!」  山からイノシシを担いだ半裸の男が現れた。片手に鉈を握っており、顔以外まったく老けていない。逆三角体型で、腹は製氷機のようにバッキバキだ。初対面時は藤行が山男と間違えて悲鳴上げてたな。  腰痛めたってのは嘘か、オイ。 「おじいさん。お先、いただいてます」  藤行がジジイにも挨拶をしている。イノシシに騒ぐと思ったのだが、見ないふりしてやがる。今夜は牡丹鍋か。 「藤行君! おお、精が出るな」 「おじいさん。藤行君の顔色が良くないから、イノシシは向こうに置いてきて頂戴」 「分かったぞ」  ずんずんとイノシシごと去っていく。藤行が小さくホッとしてた。 <藤行視点>  自然の中で食べるおむすびはとても美味しかった。お米はツヤツヤで種なし梅とよく合う。おばあさんの手で握った小さなおむすびだけど、伸一郎さんは一口で食べていた。どうなってんだよ。 「おじいさん。でかいな……」  二十九歳の祖父だからそこそこお年なはずなんだけど。伸一郎さんより身長あるし、ずっと動き回っている。おばあさんも家事しながら働いているし、この二人と血が繋がっているなら伸一郎さんが体力オバケなのも納得だ。 「本当に伸一郎さんが畑仕事しているかどうか、確認のために来たんだけどな」  めっちゃ受け入れてくれるな、伸一郎さん一家。  数日家を空けると言うとまた親父がうるさかった。あれこれ用事を言いつけてくるので荷物を纏めて伸一郎さんのとこに逃げたのだ。俺の大荷物を見て嫁いできたと勘違いしたあの二メートルがさっさと出発しやがって。日程より早く到着した。 「青空に行ってきます言えなかった……」 「?」  ぎりぎりと歯を食いしばる。俺の生きている理由。俺の天使と挨拶できなかったとか、今にも叫びたくなる。 「どうした? また弟のこと考えてんのか?」 「あ、おかえりなさい」  俺は昼の暑さに早々ダウンして、おばあさんの手伝いをしているところに伸一郎さんが顔を出す。 「いまの……新婚みたいでちょっと良いな。もう一回言ってくれねぇか?」 「早く風呂行ってきなよ」  ぺっとタオルを投げる。 「んだよ。一緒にいこーぜ」  巨人用に作ってあるため、この家のお風呂は少し大きい。まあ、ふたりで入った方が、お湯を節約できるかな。お世話になっているんだし、あまり使いすぎないようにしないと。  ずっと俺の横で独り言を聞いていてくれていたおばあさんも頷く。 「ゆっくり入ってらっしゃい」 「は、はい。それでは」  タオルと着替えを持って伸一郎についていく。男二人歩くと廊下がギシィミシィと鳴ってちょっとだけ怖い。 「俺、おばあさんも三メートルはあるかと思ってたよ」 「昔はデカかったけど、年取ったら縮んだって言ってたぞ」  おじいさんは……? 「そっか。この家で人間は俺とおばあさんだけか」 「何俺とジジイを除外してんだお前」  まだ夕方だけど、汗だくだし入ってしまおう。一番風呂は誰か、など気にしていないようなので有難く入らせてもらう。 「伸一郎さん。久しぶりにおじいさんおばあさんに会えて、嬉しいんじゃないの?」  汗で貼りついたシャツを豪快に脱ぎ捨てた伸一郎さんは「ああ?」と振り向く。 「そうだな。お前が居るから、余計にな」 「……ぐ」  からかい気味に言ったのに真面目に返されると照れるんですが。  うつむいてもごもごしていると、言葉が足らなかったかと思ったらしい伸一郎が続ける。 「いや、本当にな? 最愛の人間が俺の実家で、笑顔で暮らしてくれている……。初日は夢かと思ったほどだ」 「そっか! ありがと! もういいです」  真っ赤になった藤行はわたわたと服を脱ぐと浴室へ逃げていく。 「ふわ~」  修行の勢いで熱い湯を頭から被る。汗が流れこれだけでもすっきりした。 (たまに恥ずかしいこと真顔で言うんだからモオオッ!)  今、正面の鏡を見れない。酷い顔になっていると思う。顔を両手で隠してブルブルと頭を振る。 「おう。新しい儀式か?」  腰にタオルも巻いていない男が堂々と入ってきた。 「なんだよ。儀式って」 「……」 「なんか言えよ」  なにその「駄目だこいつ。俺が傍にいてやらねぇと」みたいな目は。  しばし二人で並んで頭を洗う。 「明日。帰るんだよね?」 「帰したくないからジジイの軽トラ、谷底に捨ててくるわ。腕が鳴るぜ」 「やめんかいアホが⁉」  やめてよ。車じゃないと突破できない道いっぱいあったよ? マジで帰れなくなる。 「帰りたいのか?」 「帰るに決まってるだろ。青空に挨拶できなかったんだぞ。成仏できない!」  鏡が曇るほどため息をついている伸一郎さん。どうしたんだろう。 「ああ~。ちゃんと飯食ってるかな~? 青空。光先輩としっかりメール出来てるかな? 文面、一緒に考えてやれなくて悪いぜ! 困ってないかなぁぁ」  青空が何一つ困ってないことを祈りながら手を合わせる。  横で悟り切った目の伸一郎さんが気になったがしっかり祈っておく。  頭の泡を流すと伸一郎は立ち上がった。 「こら。身体も洗えよ」 「おう」  ボディーソープを泡立てている。なんで立ってるんだ? 座ったまま洗わない派か?  不思議に思いながらも藤行も頭を流すと背後から抱きしめられた。 「おわっ。びっくりした!」  伸一郎さんか。 「ど、どうしたの?」 「いや? 弟の心配で忙しそうだなぁと思ってな? 代わりに俺が身体洗ってやるよ」  小動物なら気絶してそうな笑みで見下ろしてくる。体温が一気に急降下した。 「……ここ、どこだと思ってんの?」 「俺の実家」 「んなとこで盛る奴があるか!」  逃げ出そうともがくが、丸太に抱きしめられているようでまったくその場から動けない。  泡まみれの大きな手が、ぬるっと胸を撫でる。 「んひっ! ……ちょ、やめろよ」 「洗ってやるんだろうが。感謝しろ」 「ちょ、おい!」  手が上へ移動し、手のひらが首筋を撫でる。 「んっ」 「ほら。洗っててやるから。お前は儀式してろ」 「儀式って何⁉」  うなじや耳の後ろも洗ってくれているのだが、どうしてもくすぐったい。声を押さえるので必死だ。 「ほんとにやめ、っあ」  耳の後ろをカリカリと掻かれ、ビクッと肩が跳ねる。 「ほっそい首だな。折れそうだ」  するりと首に手を持っていく。鏡に、首に手を添えられている自分が映る。力を込めると折られそうだがまったく恐怖は感じない。 「伸一郎さんが太いんだって」 「ハッ。そうかよ」  なんだか上機嫌だな。実家に帰っているからかな。  ほほ笑ましく思っているとぬるぬると両手が動き回る。 「ぬわ!」 「じっとしてろって。風呂場で怪我すんの嫌だろ?」 「……」  それを言うと俺が大人しくなると思いやがって……。 「もう」  大人くなった俺に、伸一郎がせせら笑う。  おい。笑ってんじゃねぇ! 鏡で見えてるからな! って。 (自分の姿も映っ……)  ぶわっと下がった体温が上がり、顔まで熱くなる。俺の様子を見てニタニタと耳元に唇を寄せてきた。 「どうだ? 自分の姿を眺めながらってのも、楽しいだろ?」 「な、なにも楽しくないから。やめ、やめ」  口元が引きつる。  俺を抱き締める腕に力が入る。力で勝てるはずがない俺が、逃げ出せるわけなかった。    壁に両手をつき、尻を突き出す体勢にさせられている。 「ねえ。こ、声とか……。聞かれたらどうすんの? やめようよ」  弱々しい声が出るも、鼻で笑われる。 「今は飯の準備してるからこっち来やしねぇよ。ジジイはこの時間は蒔き割ってるし。遠慮せず声出せよ」  新たにボディーソープをつけた手が、尻を掴んでくる。 「ひゃあ!」 「ちっせぇなぁ。もっと尻でかくしろよ」 「どうやって⁉」  時折ぺちんと弾力を確かめるように叩かれながら揉まれる。痛くは無いが、は、恥ずかしい。 「ん……」 「早くナカも洗ってほしいって顔してるぜ?」 「眼科行ってこ、ゆわっ?」  尻肉を揉んでいた指が穴に食い込む。 「……はぁ……。ゆ、ゆっくり、してよ?」 「何を?」 「―――っ、この」  ローション効果もあるボディーソープ(新商品)が摩擦を消し、ぐにぐにと内壁を押しのけて指が進んでくる。  ゾクゾクゾクッと、快感が駆け抜けた。 「ンンンンンッ」 「痛かったら言えよ」 「はっ、はやい……って」  以前はもっと時間をかけて奥に進んでいた気がするが、伸一郎の指がぐんぐん進んでくる。おかげで息を整える余裕がない。腰を掴まれているので体勢も変えられない。がくがくと両足が震える。 「しっかり立ってろよ? へたり込みやがったら口で奉仕してもらうからな」 「うっ」  フェラをする際は物のように乱暴に扱われるので苦手だ。俺が下手なのが悪いんだろうけど……でも。 (い、嫌じゃない)  雑に扱われるのが嫌じゃないなんて。俺はどうしたんだろう。  彼が普段優しいから、ギャップでそう感じてしまうだけだ。それだけだ。きっと。 「―――う、あっ!」  ビクンと背中が震える。熱いところに指が押し当てられていた。 (伸一郎さんの指、長いから……奥まで)  震える藤行に構うことなく、ぐちゅぐちゅとナカを洗い始める。 「ひゃああああ! 駄目、もっと優しく……んあっ」  掻き出すように少し曲げた指を出し入れされる。一気に引き抜いたかと思えば、ずぶずぶっと奥まで差し込まれる。これを繰り返された。 「いゃああああああ!」 「そんなに気持ちいいか? もう立ってきたぜ」  ツンっと指で先端をつつかれた。 「あん!」  鳴き声が風呂場で反響する。 「ははっ。甘い声出しやがって」  ナカと先端を同時に弄られる。 「んあん! アアッ、ンッあ。ああ、もっ、伸一郎さ……」  グチグチュと音が聞こえるほど後ろは激しいのに、先端は撫でる程度で優しくつつかれる。  それがどんどんと思考力を奪って行く。 「ふわ……あ、アッ、んあっ、ヒン! う、ううん……もう」 「脚閉じるな」  太もも同士を擦りつけようとしたら、きゅっと先端を摘まれた。 「ひゃあ! ばかあ」 「脚、閉じるな。二度目はねーぞ」  ぐりっとイイトコロを抉られ、視界に火花が散る。 「――アアッ! やめてえぇ! ごめんなさいぃ」  謝ってもしばらくは熱いところをこねくり回された。 「ああーッ! 熱い、熱いよ! ああ、そこ駄目! おかしくな……アアア! アアアア」  先端からは蜜が溢れ出た。乳首も同時に可愛がられる。 「あ、ああん! そこは。ヒッ! 胸をそんな風に……やめっアアッ。いやだ」 「すっかり胸も弱くなったな。摘まれるのがイイんだっけ?」 「ひぃ。も、許して、許してよ……」  人差し指と親指で挟まれるたびに、ブルルッと尻を振ってしまう。 「ああ? 尻なんか振って、誘ってんのか?」 「ああん! う、あ、あああ! ひが、ちがうっ」 「やらしい奴」  違うのに。身体が、勝手に……  もう壁の段差に指を引っ掻けて縋りついている状態だ。今にも床に倒れてしまいそう。 「ん、あああん……」 「脚」 「は、はい」  よだれを飲み込む力もなく、のろのろと脚を開く。 「いい子だ」  顎を掴まれ、チュッと耳にキスされる。 「ほわ……」 「指増やすぞ」  とろけている暇もなく人差し指と中指が入ってくる。 「あっあん! む、むり、むり!」 「解さねーと俺のチンコ挿いらねぇだろうが」  新たにローションを足したのか、指が増えたのにすんなり飲み込んでしまう。 「あ、ああ、ああああああ……」 「いいねぇ。俺の指の形に穴が広がるの。お前にも見せてやりてぇ」  びく、びくと腰が跳ね、固くなってきたペニスは蜜を垂れ流し続ける。 (あ、立っていられな……)  意識がぼやっとなりかけると、気付けのように乳首を引っ張られた。 「ひゃあ」 「何ボケッとしてやがる」 「だって、伸一郎さん……」  涙目で振り返るが、手を緩めてはくれなかった。指をチョキの形にされ、内部を広げられる。 「っ、あああ!」  ぴゅぴゅっと、鏡に白い液をかけてしまった。 「~~~……っはぁ」  数秒痙攣した後ガクンと全身の力が抜けたが、倒れる前に腕が支えてくれる。 「あ、はあ……イっちゃ……」 「なんだ。もうイったのか。まだ解してるだけだってのに」 「も、もっと優しく、してよ」 「なんだ。痛むのか?」  ふるふると頭を横に振る。 「今日の伸一郎さ、ん。は、激しくて……脳が、溶けそう……」  今思い出すと恥ずかしいが、この時は必死だった。本当に溶けてしまいそうで。 「へーぇ? エロい顔でそういうこと言うってことは。そうか」  想いは届かなかった上に、なんかとんでもない勘違いをされた気がする。 「ひ、んあっ」  ずるっと指が引き抜かれた。静かに床に座らされる。しばらくお湯がかかっていない床は冷たかったが、これで終わりかと安堵した。  が、違った。  立つ力がなくなった藤行の両手首をタオルで縛ると、昔使われていた形跡のある、シャワーを引っ掻ける部分に吊るしたのだ。 「へ?」  くるっと身体を反転され、壁と向かい合わされる。 「伸一郎さん? 終わりなんじゃ……」 「解すのはな? きれいになったお前の穴で、次は俺のチンコを洗ってくれよ」 「……え?」  恐る恐る振り向くと、とっても似合う悪人面で口角を吊り上げていた。悲鳴上げるかと思った。  尻を掴まれ、また尻を差し出す姿勢にされる。 「うそ……」  むちっと肉まんを割るように尻を広げると、ローションを垂らす穴に先端を押し当てる。 「あ、あ」  ちょんっと乳首をつつかれる。 「いや!」 「脚」 「う、うん」  足を広げ、藤行からも受け入れるように尻を出す。 「素直になったなぁ。ん?」 「ばか……」  ぐっと、太いものが穴を押し広げる。 「あはっ、あ、あ」  背中がのけ反る。指も硬いなと思っていたがそれ以上に硬いモノが入ってくる。  尻穴を限界まで広げながら。 「……あっ、……ぁ」 「動かすぞ」 「待っ」  痛いほど腰を掴まれ、ズグンと奥まで押し込まれた。 「――――ッ!」 「まだ全部は入らねぇか」  視界が真っ白になった藤行に構うことなく、公衆便所で用を足すかのように腰を動かす。 「ッ! かあ! あ、無理……んああ、ンアアア!」  強引に広げられた穴を、太いブツが出し入れされる。あまりの刺激に視界の端に火花が散った。気持ちいいのか苦しいのかすら分からない。 「お。でも以前より穴、広がったんじゃねぇか? 奥まで入……いや、気のせいか」 「ああああああ! 動かっ……ないでえええええ! ああアァあ!」  脳が震える。真っ白になる。ぐちゅっぐちゅっと奥を突かれるたびに自分のものとは思えない高い声が湯煙に響く。 「ヒン! ヒャアッ。アアッ! やめ、ゆっぐり……ああんっあああ」  伸一郎はシャワーに手を伸ばすと、冷えないように藤行の身体にお湯をかけてやる。 「ああ、あ……。抜いてぇ。ぐるじ」 「顔見せろ」  まだ挿れられた状態で顎を掴まれ、首を捻られる。伸一郎も身を乗り出すので、硬いブツがゴリッと擦ってしまう。 「! ッ、や、あああ」 「おーおー。良い感じに溶けてるな。もっと追い詰めてやりたくなる」  ツイッと背筋を指でなぞられ、ビクンと素直に反応してしまうがほぼ意識を失いかけていた。快楽が麻薬となって思考力を奪う。  すっと顎を掴んでいた手が離れると、支えを失い黒髪ごと項垂れる。 「……ふぁ……あ、あぁ……」 「動いてねぇのにエロい声出すなって」 「や、やだああっ!」  シャワーのお湯が蜜を垂れ流すペニスに当てられる。敏感な場所をお湯が叩き、きゅっと尻穴を閉じてしまう。 「んうううっ」 「お、いいね。締まってきた」 「あっ、止めて! 伸一郎さ、アアッ! そろそろ……もう」 「なんだ。もう解放してほしいのか? まだ俺がイってねぇだろ」  ぺんっと尻が叩かれた。  シャワーを元の位置に戻すと、ペニスの出し入れを再開させる。  ローションがお湯と混ざり合う音が鳴り、藤行の細い身体を何度も、打ち付けるように揺らす。 「あ、ああ、あ、あ……」  もう、気持ち良い以外、考えられない。 「イキそうか? せっかくだ。同時にイくか」  動きが速くなり、自分の足で立っていられなくなる。灼熱の快感の波に襲われるのに、時間はかからなかった。  動かなくなった藤行からペニスを引き抜く。 「……ぁ」  支えがなくなると吊り下げられている藤行だけが残る。このまま風呂場に置いておいたら駄目か? エロいんだよな。  素肌に水滴が流れ、赤くなった乳首がピンと立っている。うまそうに見えたので吸いついてみる。 「っ、あ」  舌で舐め取るように持ち上げるとびくっとのけ反る。いい反応だが、ボディーソープが残っていたのか苦かったので全身にお湯をかけた。 「……は、あ」  小刻みに震える。 「起きたか」  植物に水をやるようにお湯をかけていると、藤行が目を開けた。しばしぼーっとしていたが、俺を見上げるとはあとため息をついた。 「なんで俺、まだ吊るされてんの……?」 「あ? んー? エロかったから? 下ろすの勿体なくてな」 「俺が起きるまでに、身体拭いて布団に寝かせておけよ……。手首痛いわボケ。さっさと解け」 「ああ」  へたり込む藤行にバスタオルを巻きつけ、抱き上げて風呂から出た。湯に浸かってないが、今日くらいいいだろ。  脱衣所に出ると藤行がしがみついてくる。 「どうした?」 「んん……」  首筋に額を擦りつけてきやがって、俺の股間がもう一度元気になるぞいいのか。 「おい。もっぺんやりたいのか?」 「なんでだよ。当分いいわ。……もうちょっとだけ。抱っこしてて」 「……」  全裸のままで藤行を抱き締めてやる。  ヤった後は高確率で甘えてくるのが可愛いんだが、股間がキツイ。これ、いま挿れたら殺されるかぁー? だりぃな。いつ挿れても文句言わないように調教しておく……やめよ。好みじゃねぇ。 「寒くねぇか?」 「その優しさをさっき風呂場で出せよ殺すぞ」 「?」  ぎぎぎっと後ろ髪を掴んできやがる。痛くないが恨み的なものを感じる。俺、何かしたか? 「おうおう。なにぐずってんだ。赤子かお前」  赤子をあやすように上下に揺すってやる。 「……はあ。もう降ろして。服着るから」 「そのままで良くねぇか?」 「おばあさんたち腰抜かすだろ」  野郎が全裸で家歩いてたら。 「ジジイしょっちゅう上半身裸だぜ」 「はいはい」  床に下ろすとそのまま座り込んだ。 「立てない! 伸一郎さん。服取って」  腕を伸ばすが棚の上の服に届かない。 「何やってんだ」 「お前が無茶するからだろ! 尻が死んだらどうすんだ禿げろ!」  いつも伸一郎さんと丁寧に呼んでくる奴に「お前」呼びされると興奮するな。  服を膝の上に投げ、頭にタオルを被せて髪を拭いてやる。  藤行はとんとんと、拳で腰を叩いている。 「……腰いってぇ」 「マッサージしてやるよ。胸や尻が大きくなるように、な」  後ろからむにぃっと薄い胸を寄せて揉んでやる。 「ぅひい!」  パンッ! と乾いたいい音が台所まで聞こえた。 「男前になったな! はぁーっはっはっはっ」 「駄目よ? 藤行君には優しくしないと」 「おう」 「……ご、ごめん」  みんなで食事。  冷や汗を流す藤行の横には、頬にもみじが色づいた伸一郎が米をかきこんでいる。 「でも、伸一郎さんが悪いんだからね?」  顔を寄せてひそひそと何か言ってくるので、眉間にキスしてやる。近いしいい位置にあったからな。 「話聞いてんのかボケええぇあぁぁぁ!」  また真っ赤になって怒り出す。  わっかんねぇなこいつ……。  胸ぐら掴まれながらも飯を食い続けた。 【終わり】

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