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第29話 推しとデートすることになりました

 ウォン・ポムと共に締め作業を終えた由羽は、ふうー、と肩の力を抜いた。今日は1日とても長く感じた。推しの施術をする日が来るなんて……と思っていると、ウォン・ポムが不思議そうな顔をして声をかけてきた。 「どうしました? 先輩、なんかふわふわしてますよ」 「ふわふわ? ああ、なんだろ。夢見心地っていうかさ……」  由羽がぽーっと頬を紅くしているのを他所にウォン・ポムは 「SNSフォトブース、ハロウィン仕様にして良かったですねっ。お客様が骸骨を持って撮影してくれましたし! めっちゃ嬉しいです」 「そうだね。SNSフォトブースはお客様全員が利用されるわけじゃないけど、掃除をしっかりして映えるデコレーションをしておくと、今日みたいにいいことあるかもね」 「はいっ。明日からも掃除がんばります!」  ぎゅ、と拳を作るウォン・ポムを見て微笑ましい気持ちになりながら由羽はyourfを後にした。  帰宅する途中、コンビニに寄ることにした。お目当てはコンビニスイーツだ。今日の自分はよく頑張ったと褒めたくて、チーズタルトを購入した。洗わないでそのまま食べられるコールスローサラダとサラダチキンも購入した。帰り道がわくわくしたのはエースくんの配信を楽しみにしていた時とよく似ていた。エースくんと出会う前は、普段は仕事に疲れてとぼとぼ帰ることが多かったのに。  シャワーを終え、テレビで夜のニュースを見つつチーズタルトを頬張る。由羽は甘いものには目がない。じゃけくんとのカフェ巡りも甘いもの目当てなので、普段の生活では甘いものは減らしてヘルシーな食事を心がけているのだ。しかし今夜は宴である。推しのエースくんーー希逢ーーと実際に対面して、施術もして、少しお話して……。とても楽しかったのだ。 『由羽。今日は髪、ありがとう。明日は仕事?』  と、急に希逢からメッセージが届いたのには驚いて「ひゃっ」と声を上げてしまったものだ。チーズタルトを綺麗に食べ終えてから返信する。 『いえいえ。こちらこそyourfに来てくれてありがとう! 明日も仕事だよ』  何で明日の予定を聞いてくるのかな? と由羽は気になったが、希逢の反応に合わせることにした。 『明日の夜、仕事終わったら夜パフェ食べに行こ』 『いいの? すごく嬉しい。20時には仕事終わるから、それ以降なら大丈夫』 『そしたら、20時半に新宿駅の東口で待ち合わせしよ。店もその近くだから案内する』 『了解。明日楽しみにしてるね』 『俺も明日のデートたのしみにしてる。おやすみ〜』  希逢からのメッセージを見てどぎまぎとしてしまう。だって、「デート」って。 「なゃっ!? デート?」 『おやすみなさい』  と、とりあえず返事したけど……。由羽は弾む胸を抑えられない。  希逢とデート。推しとデート。そんなのありなの?  由羽は足をぱたぱたとさせながら布団に横になる。 「今日はいいこと尽くめの1日だったな。明日のデート楽しみ……」  今日あったいいことを思い浮かべながら眠りについた。

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