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第39話 俺にもください※
「こらー。由羽拗ねんなよ」
由羽が羞恥のあまりリビングの隅で体育座りをして、頭を膝にくっつけているのを見て希逢は揶揄う。華奢な背中をすりすりと撫でていると、ゆっくりと由羽の頭が持ち上がる。ふい、と斜め後ろに座り込む希逢へと視線が注がれる。希逢はその潤んだ瞳に知らず知らずのうちに胸打たれていた。
「だって、推しの希逢くんの前であんなことするの、恥ずかしいもん」
茹でダコみたいに頬っぺが真っ赤だ。目がうりうりしている。
「それは俺がしたかったからしただけだから。嫌だった?」
「……嫌、じゃないけど……」
「はは。ほんと素直」
希逢はくしゃりと笑いながら由羽の頬を手の甲で撫で付ける。ふにふにとした頬っぺはおもちみたいに柔らかい。今すぐにでもこの頬っぺに吸い付けたら、なんてことを夢想する。ダイソン並に吸い尽くしてしまうかもしれない。隕石並みのキスマークを付けてしまうかもしれない、などと真面目に考えていると、由羽がじーっとこちらを見つめているのに気づく。
「どしたん?」
「……んうー……希逢くんも勃ってるよ」
「は?」
「だってほら」
驚いて自身の下半身を見てみる。するとそこは軽く膨らんでいた。
やば。由羽のこと気持ちよくさせることに専念してたから自分の身体の異変に気づかなかった。
「最近抜いてねえからな。溜まってんのかも」
冗談のつもりで言っただけだった。へらへらと笑っていたつもりだったのに、由羽が。由羽、そんな目で俺を見つめないでくれ。お前はチワックスか? そんなまん丸な大きな目でうりうりとされたら、俺は困ってしまうよ。
すすすーっと由羽の手が遠慮がちに希逢に近づく。人差し指を立てて、ちょん、と希逢の膨らみをつんと触れてくる。つんつん、と暫く希逢が無言でいる間にも追撃をしてくる。
「なになに。遊んでんの?」
余裕のあるような返答をしたものの、希逢は内心ふわふわと浮かぶような気持ちだ。
「シてくれるわけ?」
意地悪の牽制のつもりだった。本気でやらせようだなんて気持ちはなかった。なのに由羽がーー。
「うん」
「え」
由羽はこくっ、と大きく頷くと希逢の手を取り立ち上がらせる。ソファに戻り、寝かせられた。
「え、待てっ、別にしなくていいって」
仰向けでソファの上に寝転ぶ希逢の腰の上に由羽がちょこんとおすわりをする。その目はとろんと溶けていて、頭がぽやぽやの様子だ。きっとお花畑の夢でも見ている。
「俺の恩返しだよ」
上目遣いでそう言うと、由羽は希逢の膨らみをやわやわと揉み始める。ベルトを外して床に落とす音が聞こえた。スラックスを脱がされ、下着の上から頬をすりすりと擦り付けて来る。自分の昂りの真横に由羽の小さな顔がくっついているのを見るのはなんだか背徳的な気持ちがした。希逢は軽く目を伏せて由羽の動きを確かめる。
テントを張っているそこに、直に手を触れられる。下着をゆっくりと下ろされ、べちんと希逢の昂りが由羽の頬をぶった。ごめんな、と心の中で謝りながらも身体は発情したように熱く発火する。
あったけ……。
由羽は女性のような綺麗な手をしていて、とても温かい。抱きしめるときも思ったが、由羽は子供体温だと思う。平熱より少し温かいのだ。そんな華奢で穢れを知らぬような白絹のような指先をかけられると、興奮を止めろというほうが無理がある。希逢は決して腑抜けた声を出すまいと唇をきゅ、と噤む。
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