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第42話 ようやく見つけた運命の人(希逢side)
朝、いつもよりぱっと目が覚めたことに驚く。普段は悪夢を見たり、妄想と現実の入り交じったカオスな夢を見て起きて、疲れを感じながら目を覚ますのが常だった。でも今日はーー。
寝室のキングサイズのベッドにはひとりじゃない。なんとも馨しく、うつくしい白頬を染めた人 がいる。白雪姫の具現化だと思う。昨日のパフェデートのときも思ったが、由羽は人がいい。愛嬌がある。背も高い。顔も美人。スタイルもいい。かわいい。かっこいい。スマート。えろい。数え切れないほどの美点がある。さぞかしモテてきたに違いない。そうして人がいいからこそ、性根の腐った人間に好まれる。その美点と欠点を俺はよく知っている。歳の割には、だけど。よく言われる。この人生、大きな苦労もなくすくすくと育ってきたのでしょう、と。その顔面があればどこでもやっていけるよ、と。顔だけで食っていけるよ、とも。そのどれもが古典的主観を帯びていて品がない。違う、と俺は否定したくなる。俺はそんなにできた人間じゃない。そんな簡単なイージーモードの人生なんて、ないだろ。誰かしら、何かしら苦労して背負ってるもんがある。それは他人には見えないだけで、本人は結構重くてだりいなとか思ってるんだぜ。そういう相手を思いやることができない人間が増えたと感じる。あくまでも俺の肌感覚だが。承認欲求に囚われた現代人の行きつく先は破滅の道だろうとも、予見はしている。だからこそ、俺にとって由羽のような君子に出会えることなんてきっともう一度きり。人生でたった一度、出会えるかどうか。そんな幸運を由羽は掴ませてくれた。
由羽を起こさないよう慎重に寝室から出て長い廊下を渡る。黒い床と白い漆喰の壁に挟まれて空間的に寂しい部屋だが、白一点というべきか。由羽がいたなら、そんなのどうでもいい。俺の部屋に由羽がいることに意味がある。警戒心が薄くて、安眠している姿さえ見れればそれで十分だった。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。2本持っていこうと思ったが、1本にした。なんとなく、だ。それから俺は寝室のベッドの端に座り水を飲み込む。部屋が乾燥していたのか喉が渇いていた。ちら、と目を閉じてすやすやしている由羽を見た。閉じられた瞳のまつ毛が長くて綺麗なとことか、ほんのりと血色のある白頬、そうしてつやつやとしているふっくらとした唇。由羽の全顔面を隅々まで観察していると「へくちっ」と突然くしゃみをした。
「……寒いか?」
ぷるぶるぷる、と一瞬身体を震わせた由羽を静かに腕に抱き寄せる。すっぽりとおさまる由羽の上半身に身体を寄せる。由羽の肩に頬をのせてみる。温かい。やっぱり由羽は子供体温なんだ。由羽に起きる兆しは見えないから、俺もそれに倣ってこの開け放たれた時間に甘んじる。目を伏せるだけで、心が浮き立つように。俺の機嫌はよかった。
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