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サヨナラの前の忘れ物 17
「何も考えられなくなっても、頭が真っ白になっても……一瞬、快楽とは別の感情が生まれては消えていくんだ。俺が飛鳥と同じように、抱く側の時には知らなかったことだよ」
「ソレ、お前には分かっても俺には分かんねぇじゃん。俺、突っ込まれる趣味なんてねぇんだけど」
半脱ぎ状態だった隼の服に手を掛けつつ、俺は彼の言葉に苦笑いを洩らすけれど。
「イヤとイイが交互にやってくるんだ、その狭間で思うことは相手によって変わる。キミは、俺が飛鳥を受け入れた時どう思うか知りたくはないかい?」
蕩けた瞳で俺を見るクセに、もっとしてくれと強請るクセに。何処か挑発的で俺を試すような発言をする隼は、自らの手でワイシャツを脱ぎ捨てた。
男相手だから調子が狂うのか、それとも相手が隼だからなのか。どちらの理由が原因で、普段通りの流れに持ち込めないのかは分からない。
しかし、俺が隼の脚に絡みついている下着を脱がしてしまうと、ベッドには全裸の男が俺の返答を待っていたから。
「どうだろうな、俺が気持ち良ければそんでいいと思ってるし。性欲処理の道具になってまで知りたい感情なんざ俺にはねぇけど……でも、お前のその誘い方は気に入ったぜ?」
「ッ、ア…」
興奮材料になるはずのない男の身体、ソレを見下ろし隼の顕になった性器に俺は指を絡ませる。すると、心底気持ち良さそうな吐息を漏らす隼と俺の視線がぶつかった。
「はぁッ…ン、やめ…」
目が合った瞬間に、ズクンと熱を帯びた隼の性器。恥ずかしい姿を見られることに興奮を覚えるヤツは少なくないし、コイツもそのタイプなのかと思いながら俺は横たわっている隼を真上から視姦する。
「誘ったのはお前だ、隼……ほら、俺に今から知らないコト教えてくれんだろ。だったらまずは、隼が俺を感じなきゃ意味ねぇだろうが」
「でもッ、く…ァ」
脱がす前とは、裸体を俺が見つめる前とは、明らかに違う反応を魅せ始めた隼。白かったはずの身体が赤く色づき、雫のような汗がじんわりと額に滲む。
質量を増した性器、俺の手の動きを止めようとして伸びてくる隼の手とは裏腹に、肉付きが薄くて、か弱そうな隼の腰は揺れていくばかりで。
「見られてると興奮するド変態ってワケか。いいぜ、見ててやっからこのままイケよ」
「アッ、ん…あ、すか…」
揺れる腰の動きに合わせて俺が隼の性器を握ってやれば、隼の声は上擦った泣き声のようなものに変化する。
片目を瞑って快感に耐える男と、その快感を与えている側の男。異様な光景だとは思うが、どちらも男ならイきそうな状態というのは女とヤってる時より感じ取れるものだった。
「気持ちイイな、隼ちゃん。すげぇヤラシく腰振って、マジでそろそろ限界きてんじゃねぇの?」
「う…ッ、や…」
手の中で感じる熱さも、早まっていく腰の動きも。いつ射精してもおかしくない状態デス、と。隼の性器はとても素直に俺へ意思を告げてくれるのに。俺の問を否定した隼は、快楽に抗おうとする。
ただ、何故コイツがそんな態度を取るのか俺には分からなかった。
女の穴に突っ込んでいるのなら話は別だが、俺の手を使ってオナってるようなこの状態で、コイツが何をそんなに我慢する必要があるのか俺にはさっぱり理解ができなくて。
「悪ぃ、こっち弄ってやんの忘れてたわ、ん……ほらよ、俺の手ん中に出していいから、さっさとイッてみせろ」
イマイチ行為に集中出来ないまますっかり忘れていた乳首への愛撫を再開してやった俺は、このすぐ後に真っ白な精液を指先に絡めていた。
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