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目には見えない不確かなもの 21

「隼、そうじゃねぇ……口離せ、俺を見ろ」 アイツとコイツの違いは、明白。 だからこそ、俺はコイツを離したりしない。 「あ、すか?」 優しく抱くのは、俺の性に合わない。 けれど、真っ直ぐに見つめられた瞳はしっかりと俺を映し出して。タバコの煙を吐き出した俺は、隼の頭を撫でて笑った。 濡れた唇で呟かれた名に、どうしてこうも安堵したのかは分からない。確かなことは、隼の温もりとそこから発せられた俺の名前だけだ。 「下、どうなってんのか見せてみろ」 虚しい男のヤケクソなセックスより、真面目な隼が酒に溺れず崩壊する姿の方が何百倍も面白いんだが……そのための前戯は、やはり必要不可欠。 この時間を無駄にして終わるのか、次に繋げるための快楽を与えてやるのかは俺次第で。 容易く身体が堕ちる分、隼の心が俺に向くのは先の未来だ。永遠に懐くことのない人間の飼育は、まだ始まったばかりで手探り状態。 ……ならばまずは、この生き物をちゃーんと理解してやらねぇと。 見られて悦ぶ変態は、一体何処までが快楽で何処からが苦痛なのか。いや寧ろ、苦痛が快楽と化すほどのポテンシャルを秘めているのか、否か。 フェラさせているだけは不十分な快楽も、僅かに震える手で開始されたストリップショーとなれば話は別だった。 火照った身体が熱いのか、ご丁寧にワイシャツから一枚ずつ脱ぎ捨てていく隼ちゃん。その男の姿をベッドに腰掛け視姦している俺も、充分変態だということは棚の上に放り投げて。 「おー、すげぇ……もう滲み出てんじゃん、さすがド変態」 濡れているのが目に見えて分かりやすいグレーの下着、そこにくっきり我慢汁を染み渡らせて。張り詰めたモノの感想を伝えてやると、隼は耳を赤くした。 こんなにも欲に忠実な身体を、隼は日頃どうやって押さえつけいるのだろう。理性が効くのは素晴らしいことだが、その反動が此処まで大きいと洒落にならないだろうに。 「……あんまり、見ないでくれ」 赤らんだ頬を隠すように、右腕を顔の前で折り曲げた隼だけれども。温かさのないフローリングに重ねられた両膝のみで身体を支えている体勢じゃ、そりゃ色々と見えるワケで。 「見せるために自分から脱いでるヤツがナニ言ってんだ、隠すつもりもねぇクセに」 いきり勃つソレを隠すより、羞恥に染まる顔を隠す選択をした隼ちゃん。その何気ない仕草から読み取れる恥の比重を、この俺が見逃すとでも思っているのだろうか。 しっかりと下着に指先を掛けている隼の左手に視線を落とし、羞恥を楽しんでいる様子を目に入れてやると。 「ッ、ぁ…だって、飛鳥がっ」 見られていることへの意識が高まったのか、上ずった声を出した隼ちゃんはどうやら反論したいらしいが。 「ん、ナニ……俺のせいにする気か?」 「うっ、ア…」 組んでいた足を伸ばし、丁度いい位置にある隼の股間を右足の先端で小突いてやると、隼は困惑した表情を浮かべながら身体を震わせた。 「やめっ…ン、はぁ」 濡れた下着の上から足裏で性器を撫でられて感じる男の抵抗は、口だけだ。そこからでさえ、気持ち良さそうな吐息を漏らしているのだから、やめてやるワケにはいかない。 「やめてほしいわりには、すげぇ音してんぞ……ドロドロだな、隼」 「アッ、く…ぅ」 もっとと強請るように徐々に上がっていく引き締まった腰、それに合わせて隼の上半身は仰け反っていった。
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