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目には見えない不確かなもの 22

なかなかの反応に、空き缶の口でタバコの火を消した俺はベッドから立ち上がる。 「飛鳥ッ、ン…っ!!」 隼の性器に右足が触れたまま、そこに体重を乗せることは避けたものの。全体重を掛けて踏まれるとでも思ったらしい隼はフローリングに倒れ込んだ。 「俺、お前のその顔すげぇ好きだわ」 真上から見下ろした隼の表情は、怯えているのに期待の色が消えていない顔だ。眼だけでなく、身体全てで俺という人間を欲している男に笑い掛け、スラックスのポケットから俺はスマホを取り出した。 「……嘘」 この関係を繋ぎ止めておくには申し分ない材料が揃ったタイミングで、俺の行動を察した様子の隼は小さく呟いたけれど。 「ホント」 俺の笑顔に息を飲んだ隼は、恥じらうことも忘れて目を見開いた。 その、瞬間。 ───カシャ。 良いアングルと、シャッターチャンス。 それらをしっかりと収めた1枚。もちろんご丁寧に保存し、乱れた痴態を写し出したその画面を隼にも見えるように、俺は腰を屈めてやる。 「歳下男に踏まれて悦ぶ変態の出来上がり、だな」 スマホを唇に当てそう吐き捨てて。 そのままの様子を言葉として声に出すことで、更なる期待を感じ取らせてやる。 「ッ、アァ…ぅ、く」 すると、隼の性器はズクンと大きく俺の足の下で反応した。 僅かな刺激にも敏感に応える隼の身体は面白く、足裏でぐいぐいと性器を擦ってみると、隼の腹筋に力が入り悶えていることが窺えて。 「ン、ハァ…うっ!」 目尻に溜まる涙の粒が隼の感度を充分に表し、声を抑えるために噛まれた下唇が意地らしさを演出する。 酷くされて感じるなんて、粗末な身体だ。 けれど、自分本意のフェラをさせているときより今の方が興奮する。 何をしても許されるとは思っていないが、しっかりと快感を得ている様子の隼は俺の圧に合わせてゆったりと動き出すから。 直接触れて次に進むより、どうせならこのまま下着1枚挟ませた状態でイク姿を堪能したい。 「んぅ…アっ、ヤバ…ぃ」 人の足裏にナニを擦り付けて感じている隼から漏れるカウパー腺液で、俺の右足も湿ってきているが。 いきみそうになる身体を震わせ、逃げ場のない快楽に隼が思い切り握った拳は誰の元にも届かない。 冷えたフローリングの上に横たわった男は、自ら脱いだスーツを乱れさせて息を上げる。身を捩り、刺激を得ようと足掻く姿はなんとも滑稽だけれども。 「飛、鳥ッ…アっ、すかぁ」 歯を食いしばっていても出てくる名に。 俺を呼ぶその声に。 有り得ないくらいに安堵する。 下劣な行為に夢中になっているのはお互い様だが、普段は見せることのない素の部分が露骨に浮き出でくるのもお互い様と云うべきなのだろうか。 「く、はァッ、ぅ…か」 隼の痴態を眺めているうちにスマホの画面は黒くなり、俺はソレをスラックスのポケットへとしまった。 そうして。 入った力が抜けていき、開かれた隼のその手が触れられるようにジャケットを脱ぎ捨てた俺は、右足に若干の力を込めていく。 「アっ、んぅ…も、ッ!」 タイミングを見計らって落としてやった俺のジャケットに両手で縋り、切なげに眉を寄せる隼ちゃんは相変わらずで。 「ったく、しょーがねぇなぁ」 まるで俺からの許可が下るのを待っているかのような健気な様子に、優しさを振りかざしてしまったのは俺の方だった。 「……イケよ、隼」 「───ッ!!」 音にならない声が洩れ、反らされた首筋に汗が滲む。望み通りに果てた身体を抱き締めてやることはできなくても、ジャケットに顔を埋めた男が流した涙の痕は忘れずにいてやろうと思った。
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