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目には見えない不確かなもの 24

咥えタバコで抱き起こした隼の身体をベッドに横たわらせてやり、部屋の電気を適当に消して。赤みが強く残るタバコの火を頼りに夜の闇へと隼を誘った俺は、名残惜しく煙を失っていく。 「ッ…ん、ァ」 触れ合う唇から溢れる声に耳を傾け、色気のない乳首をまさぐって。組み敷いた男が悶えている姿に、快楽以外の感情が混ざり込んでくる感覚がした。 タバコよりこの男がイイのか、と。 自認できるくらいの想いにはまだ、気づきたくなかったけれど。 隼がどれだけ独りで乱れても手に入らない欲は、おそらく俺でないと満たしてやれないだろう。 「飛鳥ぁ、も…早く」 「ナニ、そんなに欲しい?」 上下にゆったりと腰を振り、欲に溺れていく隼は淫らだ。 アルコールとタバコの匂いにプラスされた独特な男臭さは、隼が一度果てたことが原因なのだろうが……他人と肌を重ねると云う現実と向き合うのは、こういった部分も受け入れてやれて初めて意味のある行為に変わる。 「欲し、ぃ...ァ、足りっ、な...」 肌と布が擦れる音。 俺の髪を掴む隼の指先。 吸い込んだ空気一つでさえ、綺麗とは無縁なリアルを感じる。 「焦んなよ、急いでも良いコトなんもねぇぞ......まぁ、切れてもイイなら別だけど」 「嫌だっ、怖ぃ...ッ、ん」 「だったら大人しくしとけや。ろくにヤり方も知らねぇんだから、慣れてるフリすんな」 急かす男の期待に、性器を握り応えつつも俺は隼に苦言を呈したが。 「ハァっ、ぅ…知識、はッ…あ、る」 しっかりと俺の手の中で反応しながら、息を荒げて発せられた反論が実に馬鹿馬鹿しくて。思わず口元を綻ばせてしまった俺は、クソ真面目な男とのセックスについて模索する。 「バーカ、知識があってもムードがなきゃつまんねぇだろ。お前はホントに、毎回毎回ぶち壊してくれやがる」 「知識がなきゃ、アッ…できな、ぃ」 相手が男なら、尚更。 そう言いたい気持ちも理解はしてやれるが、そもそも挿れる場所ではないところに突っ込んで犯すワケなのだから、汚れた身体を晒け出してもらう必要があるのは当然のことだ。 俺に抱かれる気があるのなら、ノウハウ云々よりも何百倍も重要視しなければならないたった一つの注意点を隼には再度教えてやるべきか。 「抱かれる側に知識なんざいらねぇよ……隼、俺から目逸らすな」 「ハァっ、アぁ…すかッ」 「そう、上手」 蕩けた瞳で俺を見つめ、名を呼ぶその姿が誰よりも可愛く思えるなんてどうかしているけれど。 時間を費やし、悶え、喘がせ、そうして崩壊させていく理性の欠片。それが俺の手により全て剥がれ落ちた時、隼は俺だけを求めてよがり狂う。 「あす、か…ァ、ぅ」 「隼、イイ子だ」 人の汚れを曝け出してこそ、その相手に情が乗り深まる行為。欲だけではない人間性が如実に現れ、身体のみでは決まらないセックスにおいての相性が定まる瞬間。 「アっ、ん…く、ァッ!!」 身体を重ねるまぐわいの中に、いくつのも寂しさが溢れて消えていく。 「ドライでナカイキ、隼ちゃんがずーっと欲してた快感だ……ありがたく受け取れよ、バカ野郎が」 「───ァ、ハッ...っ!!」 「......聴こえてねぇか、潮まで吹いてるこの状態じゃ無理もねぇわな」 顎が上がり、ビクビクと痙攣する隼の身体を抱き締めてやるけれど。記憶に残らない情を与えるのは、いささか心細いものだった。
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