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2 八王子くんとのお昼②

とにかく、僕は合間に話しながら食べるから、あっという間に八王子くんは食事を終える。 チラリと俺を見て、「昼、そんだけで足りるの?」と聞いてきた。 「うん。僕、部活とかもないから…」 元々、少食だし。 身長は高2でようやく165㎝を超えた僕は(まだ伸びる予定!人権欲しい…)、体重も50Kgを下回っており、かなり小柄だ。 180㎝に届きそうなバスケ部のエース候補の八王子くんと同じ量を食べられるわけがないんだ。 「ふーん」 まだ何か言いたそうな表情だが、食後の眠気が勝ったのか、「ふぁ」と生欠伸をして、俺の膝に倒れ込んできた。 き、キター!!! 神の瞬間! 八王子くんへの膝枕タイム!! 彼から、1席分空けた理由は、彼が横に倒れた時に、頭の位置がちょうど膝に来るためだ。 彼は何もかも計算しているんだ。 なんてったって学年一位の王子。 僕は幸せを噛み締めながら、おにぎりを噛み締める。 なんでもない塩むすびがめっちゃ美味い。 具なんか入れたら、膝の上の八王子くんのお顔に落としてしまうかもしれないから、塩むすびオンリーだ。 寝ていても、僕は雑談をする。 「んー」とか「むー」と返してくれる。 まるで寝言みたいだ。 こんな可愛い王子が見れるのは、現状僕だけなんだ。 全くもって、なんでかは分からないんだけど。 おにぎりを食べ終え、ラップをまとめた僕は、おずおずと手を王子の頭にのせる。 「ん」と言いながら、頭を擦り寄せてくれるので、俺は撫で回したくなるのをグッと堪えて、ゆっくりと撫でる。 まるで普段は凛としている黒猫が、僕にだけ甘えてくれるみたいで嬉しい。 クラスの人に「八王子くんを生き物に喩えたら?」と言ったら、「ライオン」とかになるだろうけど、僕は断然「黒猫」だ。 毛穴ひとつない真っ白でスベスベの肌に、癖のないサラサラの黒髪。 手も首も白くて、大きいのにどこか中性的な綺麗さがある。 全く…、神ってやつは不平等だ。 だけど、彼を産み落としてくれてありがとう… そう、天に祈らずにはいられない。 頭を撫でるなんて、ジミーのくせに烏滸がましいと言われてしまうだろう。 これは、ある日、あまりにぐっすり寝ている彼が気持ちよさそうで、完全に寝ていると思ってうっかり頭を撫でてしまったのだけど、 彼の方から「あれ、気持ちいいから明日もやって」とおねだりされ、起きていたのかと頭を抱えた。 でも、だから、僕のせいじゃない。 そして僕が、どうしてこんな学園の王子と美味しい関係になってしまったのか… それは中等部に遡る。

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