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4 ありがとう

が、修学旅行だけは違った。 プロのカメラマンが同行して、撮った写真を焼き増しして販売してくれる。 これなら、クラスメイトや同学年の人にバレることなく、王子の写真を手に入れられる! そもそも、僕が写ってる写真なんて全然ないし、すべて王子が写っている写真を注文した。 実に、18枚。 彼がいる場所に人あり、なので、カメラマンも嬉々として王子周りの写真をたくさん撮ったのだろう。 そしてその購入した写真は、帰りのHRで配られた。 包まれた写真をホクホクと胸に抱えていると 「ジミーが写ってる写真なんてなかったくね?」 「え?誰の写真買ったんだよ〜」 と、最近僕をぼっち弄りしてくるクラスメイトの火野と水元に絡まれた。 「えっ…、やっ……、えと、集合写真とか?」 僕は目を泳がせながら誤魔化す。 彼らのなにが厄介って、比較的、八王子くんと仲がいい、クラスの中心にいる奴らなんだ。 中身見られたら、速攻で本人にバラされる! なんとか解放してもらおうとしたが、僕の慌てっぷりが面白かったのか 「見せろよ〜」と、写真を奪われた。 「や、やめて!!!」 大きい声が出てしまい、驚いた火野が写真を落とし、床に散らばった。 床に広がる王子たち… かっこいい〜、なんて思う余裕はなく、顔が真っ赤になる。 数秒動けず、火野が「え?」という困惑の声を漏らした瞬間、弾かれたように写真をかき集めた。 涙が滲みそうになる。 水元が「お前、王子のファンかよ〜!」と笑い始める。 つられたように、ドン引きして黙っていた火野が「煌也〜、ジミーも煌也が好きらしいよー」と声を張り上げた。 ああ…、終わった… 写真を拾い集めた僕は、それを握りしめて立ち尽くす。顔は上げられなかった。 周りの子たちが「え、ジミーが?」とか「ホモかよ笑」と囁きあっている。 ごめん、お母さん。 せっかく入れた学校なのに、僕は明日から通う勇気ないかも。 「煌也、返事してやりなよ」 とさらに水元が王子に絡む。 ああ、本人に迷惑をかけてしまった、と 僕は焦って顔を上げた。 目が合った彼は、一瞬、無の表情をしていたが、ふっと微笑むと「そうなの?ありがとう」 と言って、「2人とも早くしないと顧問に怒られるよ」と部活に向かったようだった。 彼のおそらく僕だけが見た、一瞬の無表情に震えたが、そんなことよりも「ありがとう」という言葉が嬉しすぎて、僕は、写真を胸に抱えたまま、急いで帰宅した。 王子は…、どこまでいっても王子だった… この時、僕はなにがあっても、八王子くんを応援し、見守り続けようと誓ったんだ。

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