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11 僥倖?

次々と花井くんに続いて出店を周り、色々と買い込んで花壇のところに向かった。 歩き回ったのは1時間未満なのに、いつもと違う学校の様子や賑わいに、どっと疲れてしまった。 花井くんの編み出した最短ルートでもこれだから、自分1人でなんて到底見て回れなかっただろう。 これが明日も続くのかと思うと、休んでしまいたかった。 「やっぱり私立の大きな学校の文化祭ってすごいね」 花井くんがキラキラとした顔で言って、僕の隣に座った。 花井くんが楽しんでいるならそれで良いけれど、僕は文化祭なんて御免だ。 買ったものを次々取り出し、食べたり、弄んだりしながら他愛もないことを話して過ごす。 ちょっと校舎の方が騒がしいくらいで、ここはいつもとそんなに変わらない。 お昼近くになって「なんかお腹空いてきたかも」と花井くんが立ち上がった。 「焼きそばとか、カレーとかあるけどどう?」 と花井くんに言われたけれど、僕はとてもじゃないけれど、あの賑わいに入り込むのは無理だ。 それに、出店なんかいけないだろうと考えた僕には持参したお昼ご飯がある。 それでそう言うと、「なんで!?勿体無い!じゃあ、僕だけ買いに行こうかな」と花井くんはまた校舎に戻った。 お互い友達がいないから一緒にいるけれど、根本的な性格が真逆すぎるな、と思った。 花井くんがいなくなって、さらに静かになった花壇の縁で目を閉じて遠くの喧騒を感じていると、後ろから足音がした。 「花井くん?ずいぶん戻るのが早いね」 と言いながら振り返ると、そこにいたのは八王子くんだった。 意外な人物に、僕は彼を凝視しながら固まった。 腕に生徒会の腕章をつけているから、見回りの一環なんだろうけれど、まさかこんなところまで巡回しなきゃいけないなんて、大変だ。 「あ、えっと…、八王子くん」 僕が声をかけても、八王子くんは何も言わない。 「えっと…、ここは大丈夫だよ?特にトラブルとかは起きてないし…、それとも、ここってもしかして今日は立ち入り禁止だった?」 何も喋らないし、動こうともしない彼に、なんだか焦ってしまい、僕は矢継ぎ早に話してしまった。 八王子くんとしばし見つめ合うと、彼は徐にこちらに来て、僕の隣に座った。 「えっ!?あの、制服が汚れちゃうよ!?」 と僕は慌てた。 確かに僕も花井くんも気にせずに座っているけれど、一応、レンガでできた花壇の縁で、ギリギリ校舎の屋根がかかっているけれど、野晒しの場所だ。 そんなところに学園の王子が座っていいものなんだろうか。 「疲れたから、休憩」 そういって、僕の膝…、ではなく肩に、彼の頭が落ちてくる。 「えっ!?あの…」 と僕は慌てたが、表情を見るにかなり疲れている様子だったので、邪魔はしないことにした。 こんなところで、僕の肩が、いい休憩場所になるとは思えなかったけれど、久々に感じる八王子くんと離れたくなかった。

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