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19 おいてけぼり

とはいえ、またいつあんなことになるか分からない。 僕は、暇がある時は自分のお尻の拡張に勤しんだ。 心なしか、少しずつスムーズに入るようになっていると思う。 本来なら、拡張器だのディルドだのを使うのだろうけれど、流石に実家暮らしの高校生が手に入れられる代物ではない。 自分の手だけが相棒… 文化祭から2週間経っても、八王子くんとは特に何もなく、いつも通り昼休みを過ごしていた。 先生に授業で使った資料の片付けを押し付けられ、普段は行かない資料室に向かっていると声をかけられた。 「山路くん!」 僕が声の方向に目を向けると、久々に見る花井くんがいた。 「あ…、花井くん」 文化祭の日、なんとか家に帰った僕は花井くんに「お昼はもう花壇のところに行けないかも」とラインを送っていた。 花井くんからは「そろそろ寒くなってきたし、寂しいけど仕方ないよね。僕もお昼、やることができたから気にしないで」と返事が来ていたので、それっきりになっていた。 「荷物たくさんだね。手伝おうか?」 「だ、大丈夫!」 資料は両手にいっぱいで、なかなか大変だったけど、なんとなく花井くんと話すのが気まずかった。 「っていうのは建前で、手伝うからさ、5時間目の前にジャージ貸して欲しいんだ」 花井くんが恥ずかしそうに言った。 「そんなの、手伝わなくても貸すけど。 あ、でも、午前中使ったから汗が…」 僕の汗臭いジャージを花井くんに着せるのは、とても心苦しい。 「ええ?でも、山路くん、そんなに一生懸命に体育してないでしょ? 汗だってそんなかいてないでしょ」 花井くんがいたずらっ子のように笑った。 確かに、それはそうだけど。 「それに、僕くらいの背丈の人があまりいなくてさ、洗って返すから!だめかな?」 「いや!そんな洗わなくてもいいよ! 全然貸すから、取りにきてよ」 僕がそう言うと、花井くんはほっとした顔をして「ありがとう」と言った。 それから他愛もない話をしながら資料を片付け、むしろ僕の方が助けられたなと思った。 昼休み前に花井くんは僕のクラスに来た。 花井くんの登場に、クラスはまたもやざわついた。 僕からジャージを受け取った花井くんは、教室を出る時に近くにいた八王子くんに声をかけた。 「あ!八王子くん。今月の生徒会なんだけど…」 「確か明日の放課後だよね」 「うん!先輩から連絡があって」 2人がそんな会話を繰り広げている。 生徒会…? それが声に出てしまったようで、花井くんは僕を見た。 「文化祭のすぐ後に生徒会に入らないかって八王子くんに誘われたんだ! 部活が忙しくて、生徒会抜ける人がいたから代わりにって。 その仕事があるから、お昼は山路くんがいなくても平気なんだ!」 花井くんが嬉しそうに言った。 彼に居場所ができたことは素直に嬉しい。 生徒会も頑張れって思う。 でもそのきっかけが八王子くんで、生徒会を通して僕なんかよりも仲良くなっているなんて… 僕は生徒会に誘われたことなんてない。 し、お昼以外に彼と話すタイミングもないし、こんなふうに気軽に話しかけたりできない。 2人に置いてけぼりにされたみたいで、心が苦しくなった。

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