20 / 56

20 生徒会の話

もっと八王子くんに価値のある人だと思われなくては… 翌日のお昼休み、僕は八王子くんが膝の上で寝る前に「あのっ、文化祭の日の続きって…」と切り出した。 「い、いつごろするのかな?」 しばし無言が続き、僕は思わず八王子くんを見た。 彼は驚いた顔をして僕を見ていた。 あ…、もしかして、そんな気はなかったとか? やっぱり僕だけ期待してたみたいな感じ? とんでもない失言をしてしまった、と僕は青ざめる。 「あ、え、えっと…」 「じゃあ明日する?」 八王子くんが興味なさそうな顔をして言う。 さっきまでの驚いた顔が嘘のよう。 「明日!?そ、その、お昼?」 「…、山路がいいならいいんじゃない? こんな明るい中で見られてもいいなら」 そう言われて、前回は薄暗かったことを思い出した。 こんなに綺麗な八王子くんに、僕のお世辞にも綺麗とは言えない秘部を見られるなんて無理! 「や、やっぱりお昼は嫌かも」 「なら明日の夕方、ここに来れば?」 慌てる僕を彼は鼻で笑って言った。 「う、うん!」 明日か… 今日は入念に準備をしなきゃ。 必要なものも、今日のうちに鞄に入れて準備しよう。 あれこれと考えていると「もういい?」彼はそういうと、僕の膝の上に落ちてきた。 さらっとした黒髪が彼の顔を滑り落ちる。 僕はそれをゆっくりと掻き分けて、顔にかからないようにした。 彼のため、と言いつつ、僕がご尊顔を拝みたいだけなんだけれど。 そして昨日の話をする。 最近の数学の授業が全然分からないこととか、ハマってるゲームの話とか。 それで、不意に思い出したから、最近地学の先生がやたら僕をこき使う話をした。 おそらく、テストの点数が悲惨だった上、授業中にうとうとしていたからだろう。 そのついでに手伝ってくれた花井くんの話をした。 すごく気を遣ってくれる子だから、生徒会でも絶対活躍すると思う、とも。 すると、彼の頭を撫でていた僕の手に、上から手が重ねられた。 ひと回り大きくて、指が長くて、関節がしっかりして… 「いっ!?いててて!!」 手と手が触れ合った♡ とか思うまもなく、手の甲をつねられた。 僕が驚いて手をブンブン振ると、すんなりと手が離された。 少し惜しいような気もしたけど、容赦なく抓られたので我慢なんて出来なかった。 「な、なんで…」 僕がつぶやくと、八王子くんは僕の膝の上から頭は動かさずに、ムッとした顔をした。 あれ?僕、なんか怒らせるようなことしちゃったかな。 「あいつの…、いや休んでる時に生徒会の話とか聞きたくない」 ボソリと言われて、やっぱり僕のせいだったと反省した。 「ごめん。そうだよね。次から気をつけるね」 僕がそう言うと、彼は眉間の力を抜いて、また安らかな顔に戻った。 生徒会の話は禁句だと、頭の中にメモしておかないと。 …、あれ? でも、文化祭前とかも生徒会の話はしたことがあったような… 八王子くんといるときの僕は浮かれてるし、僕の記憶違いだと思い直した。

ともだちにシェアしよう!