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21 は、はじまる?
翌日、僕はドキドキしながら過ごした。
お昼も八王子くんの顔を見るだけでありえないくらい心臓が暴れた。
膝を貸した瞬間なんて、初めて膝枕をした時のように「ひぇぇ」と奇声をあげてしまった。
とにかく、今日1日の記憶がない。
下校時刻になり、僕は空き教室に向かおうとすると、花井くんが来た。
また八王子くんと生徒会の話かな、とモヤモヤしたが、彼はそのまま僕の前まで来た。
「これ、ありがとう!助かった!
こっちのチョコはお礼だよ」
大きい紙袋と小さなビニール袋を渡された。
あ、貸したジャージだ。
色々あって、貸していたこと自体を忘れていた。
「え、あ、洗ってくれたの!?
しかもお菓子まで…、ありがとう」
「借りれるのが山路くんくらいしかいないから。
山路くんも何か忘れたりしたら、いつでも頼ってよ」
「う、うん」
気まずいとか思ってごめん。
しかも、八王子くんと仲良さそうにしていたことにイライラしてごめん。
と、僕は心の中で謝った。
「じゃあ、僕は生徒会があるから」
そう言って去ろうとした花井くんに「生徒会って八王子くんも?」と思わず聞いた。
「え、うん。そうだよ」
「そっか。頑張って」
そう言って僕は彼を送り出したけど、内心では、あれ?今日の夕方、約束したよね?と不安だった。
で、でも、夕方だし!
今は4時で全然明るいし!
きっと生徒会が終わる頃のことを夕方って表現したんだよね。
部活も生徒会も委員会も所属してない僕は、校内で時間を潰すすべはなく、空き教室でとりあえず勉強をすることにした。
全然わからなくて苦戦しつつも参考書を解くこと、早2時間。
問題文を睨んでいると「準備万端すぎ」と声がかかった。
びっくりして肩を揺らすと、いつものところに八王子くんが座った。
「あ、生徒会お疲れ様。
準備万端って…」
八王子くんが言ったことが分からなくて聞き返した。
「いや、ジャージ着てるから」
そう言われて僕は赤面した。
男性同士のセッ…、クスについて事前に調べる上で、潤滑油だの体液だのが服についてしまいそうだなと思った。
制服よりはジャージの方が洗いやすいかも、と服を返された時に考えて、着替えたんだ。
八王子くんは生徒会があったから、当たり前に制服だ。
恥ずかしくなってきた。
「あ、その、手間取らせないように準備は万端にしてあるけど」
僕はかばんから、コンドームだのローションだのを出した。
「なんでそんなに乗り気なの?」
そう言われて、僕は顔も耳も熱くなった。
絶対顔が赤くなってる。
「八王子くんがするって言うなら、僕はそれに従うだけだし…、推しのいうことは絶対だし」
尻すぼみになった。
やっぱり、八王子くんは僕みたいなのの体に興味なんてなかったのかもしれない。
「やっぱりやめる?」と言い出しそうになった時、「いいよ、やろう」と彼が僕を今度は机の上に押し倒した。
僕を押さえつけて見下ろす彼の顔は、本当に見惚れてしまうくらいかっこいい。
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