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22 誰のジャージ?
八王子くんの手が、服の裾から入ってきて、僕のものではない手の感触がくすぐったい。
その手が僕の胸の飾りを掠め、僕は体をびくつかせてしまった。
「あ、ま、待って。
その、後ろの準備はしてあるので、すぐにでも入れられると思うけど」
僕なんかの体を触ったりするなんて手間を、王子にかけるわけにはいかない。
それこそ、後ろの準備なんて…、こんなところを彼に触らせるなんて絶対にできない。
彼の手がピタリ止まり、無表情で見下ろされている。
「あっ、でも、八王子くんはた…、勃ってないか!ごめん。
その、下手だけどフェ…、フェラとかしたほうが…」
そもそも、彼の準備ができていなければ出来なかった…
なんのきっかけもないのに自然に勃つはずがないよね。
すると、「はぁ…」と八王子くんがため息をつき、僕の胸の辺りに顔を埋 めた。
「えっ…、え?」
僕が困惑していると、八王子くんが顔を上げた。
心なしか、怒っている気がする。
「匂い、違うんだけど」
「に、匂い?」
数秒、彼が言っていることが分からず、ポカンとしてしまった。
が、そういえばジャージは花井くんが洗って返してくれたことを思い出した。
花井くんにふさわしいような、ふわっとしたお花の香りがする。
「花井くんにジャージを貸してて、今日返ってきたんだ!すごくいいにお…」
「脱いで」
「…え?」
「脱げ」
強い口調で言われ、僕は慌てて上の服を脱いだ。
「下も」と、彼に冷たく言い捨てられ、僕は不安定な机の上で脱いだ。
その上下を彼は少し遠いところに投げ捨てた。
僕は、八王子くんが急に豹変した理由が分からなくて混乱していた。
フェラ発言とかが悪かったんだろうか?
10月も終わりかけで、夕方は下着だけでは肌寒い。
自然と鳥肌が立ってしまい、腕をさすると、彼は僕から離れた。
あ…、あれ?
八王子くん、帰っちゃうのかな?
悲しい気持ちでいっぱいになり、パンツ1枚で机の上で震えていると、なにかが僕の顔に飛んできた。
「わぶっ」と、顔面で受け止めて顔から引き剥がすと、ジャージの上だった。
でもこれ、僕のジャージじゃない…
「寒いならそれ着とけば?下は汚れるからいらないでしょ」
良く見ると、八王子くんの名前が刺繍されており、彼のものだと気づいた。
戸惑いつつも、彼が渡してくれたものだからありがたく着させてもらった。
寒さがマシになった。
丈が少し長くて、僕のお尻まですっぽりと覆ってくれる。
っていうか、八王子くんの匂いが濃くて、僕は全身の体温が上がった。
再び彼が僕の上にのしかかり、僕の乳首を弄り始める。
しなくていいって言ったのに!
僕が彼の腕を掴んで見上げると、
「俺を勃たせたいなら、抵抗しないで」
と言われてしまった。
ど、どういうこと!?
僕は再び混乱し、手の力を緩める。
それを肯定と見なしたのか、指が動き始めた。
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