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25 事後
長らく翻弄され、短く息を吐いた八王子くんが僕の上に雪崩れ込んできた。
八王子くんも達した…、のかな?
しばらく僕の上で呼吸を整えていたけれど、下校を促すチャイムが鳴って、八王子くんが僕の中から抜かれた。
彼は手慣れた様子でゴムを縛ってゴミ箱に捨てた。
え…、ゴミ箱に?
そんな情事の痕跡を学校に残して良い物なのだろうか…
僕はそんなことが引っかかったけれど、早く下校しなきゃいけないことは明確だったので、立ちあがろうとした。
が、膝に力が入らず、机から地面に崩れ落ちた。
「え…、あれ?」
「おい」と、驚いた様子の彼が僕の前にしゃがみこんだ。
「あ、ごめん。大丈夫!
ちょっとまだ余韻が…」
と、僕が言うと彼は僕の体を僕のジャージで拭いた。
「汚れたからちゃんと洗って」
そう言ってそのジャージを丸めて手渡してきた。
い、いいんだけど、僕はティッシュもタオルも持っているんだけれど…
そして、彼のジャージの下を手渡した。
「え?」
「これ履いて。その状態で制服着るの大変でしょ。それとも汚れたジャージ着る?」
「あ、え、えと、ありがとう」
僕はその長すぎるジャージを履いたけれど…、僕のジャージを汚したのは八王子くんなんだけど。
制服を畳んでカバンに仕舞ったのを確認した彼は、僕を背負った。
「え!?な、なんで!?」
僕が慌てて降りようとすると、「危ない。動くな」と怒られた。
「歩けないんでしょ」とも。
だからと言って、構内をこれで歩くなんて無理だし、そんなことを学年の王子にさせるなんて!
「この格好は無理!絶対ダメ!」
と僕が言うと、「はぁ」と彼はため息を吐いて、僕を地面に下ろした。
案の定、僕は彼の支えがないと立っていられない。
「こっちの方が重くて歩きづらいけど、山路がわがまま言うから仕方なく」
そう言って僕の肩を組んだ。
「ごめんなさい」
僕がそう言うと、
「謝る暇があるなら足動かして」とピシャリと言われた。
「まあ、こうなったのは俺が原因だけど」
付け加えられたその言葉に僕はバランスを崩しかける。
「危ない」とまた怒られた。
今のは絶対、八王子くんが悪いけど「ごめん」と謝った。
なんとか家の近くまで肩を貸してもらった。
八王子くんの家は一体どこなんだろう。
すごく遠かったらどうしよう。
お礼を言ったら、「明日来れるように今日はゆっくり休みなよ」と言って颯爽と帰って行った。
その夜、「なんでジャージが2着もあるの!?」とお母さんに驚かれて、誤魔化すのに肝を冷やした。
明日…、僕はどんな顔で八王子くんにあったらいいんだろう。
平然を装える気がしないんだけど。
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