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28 地獄のお昼休み
花井くんと空き教室でお昼を食べ始めて2~3日が経つ。
その間、僕と八王子くんの接点は特にない。
初日の夜に一度だけ『昼どこにいるの?』とメッセージが来ていた。
僕は喜びつつも緊張して、悩みながら『空き教室にいるよ。勝手に使ってごめん。だめだったかな?💦』と送った。
見事に既読スルーされた。
もし、空き教室を勝手に使っちゃダメだったとしても、行く当てがないので、怒られるまでは使わせてもらうことにしよう。
と、なぜか開き直り、花井くんと使わせてもらってる。
今日もお昼になったから、空き教室に向かい、机を拭いたりしていると、八王子くんが現れて定位置に座った。
「え、あ、久しぶり」
僕がそう声をかけると「毎日教室で会ってるじゃん」と言われた。
「それもそうだね」
「…、いただきます」
彼が手を合わせてお弁当を食べ始める。
僕も2つ隣の席に座って、おにぎりを取り出したところで、「あ!八王子くんもいる!」と花井くんが現れた。
僕は花井くんのことをすっかり忘れていたことに慌てて「ご、ごめん。先に食べ始めてた」と謝る。
花井くんは気にした様子もなく「僕の教室、ここから遠いから気にしないで。いつも待たなくていいよ」と、八王子くんとは反対側の僕の隣に座った。
「なんでいるの?」
八王子くんから低い声が聞こえて、僕はそちらに目をやる。
と、すごい怖い顔でこちらを見ている…
「どこで食べようと僕たちの勝手でしょ。
学校は公共の施設でーす」
と、花井くんが煽るように言った。
な、なんてことを言うの!?と僕は花井くんを振り返った。
花井くんはしれっとした顔をしてお弁当を食べている。
だ、だめだ…
花井くんは八王子くんが怒っていることを1ミリも気にしていない。
「ご、ごめんなさい。えっと…」
と、僕がまた八王子くんに目を向ける。
あ、すっごく怒ってる。睨まれてるもん…
僕はどうしていいか分からなくなってしまった。
でも、絶対に僕のせいであることは確かだ。
なんとかしないと…
「ごめ…、ごめんなさい」
泣き出しそうになりながら「勝手に教室使ってごめん。僕、別の場所を探すから」と、席を立つ。
あてはないけれど、八王子くんをこれ以上怒らせたくないし、嫌われたくない。
「え~、山路くん、どこか行くの?
僕も一緒に行くよ、面倒だけど」
と花井くんが僕の手を掴んだ。
「山路はここにいろ」と、怒気を含んだ声で八王子くんが言った。
「えっ!?えっ…」と、僕が困惑していると、「聞こえなかった?」と言われ、僕はおずおずと席に戻った。
「お前はどっか行け」と八王子くんが言い、「僕の勝手だよね」と花井くんが応戦して、無言でお弁当を食べる地獄のお昼休みが始まった。
もう本当にどこか別の場所に行きたい…
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