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33 復帰
熱が下がり、しっかりとお休みをとって、
僕は久々に登校した。
担任には「大丈夫か?」と声をかけられたが、クラスメイトは特に僕には興味がないようで、
本当に自分って空気なんだと思わされた。
1週間ぶんのノート…、どうしようかな。
僕がクラスで1番話したことがあるのは、八王子くんだ。
でも、僕なんかが彼にお願いするなんておこがましい。
八王子くんとは教室に入った瞬間、目が合って、それはいつもより長かった気がしたけど、視線はあっけなく逸らされた。
僕は仕方なく勇気を出して、打ち上げの時に少しだけ話した木田さんに声をかけた。
彼女は一瞬驚いた顔をしたけれど、「私、あんまり頭良くないけれど大丈夫?」と心配しながらノートを貸してくれた。
彼女の成績がどのくらいかは、分からないけれど、少なくとも僕よりはいいはず。
そして何より、彼女のノートは見やすくて、女子の字って感じでしっかり書かれていて、かなり助かった。
ノートは何とか明日の朝返すことにして…、残る問題はお昼ご飯だ。
僕は1週間も鍵を持ったままにしたことを申し訳なく思いつつ、移動教室の時に最後まで教室に残り、そっと八王子くんの机の中に入れた。
お昼は教室の隅でさっさと食べて、木田さんのノートを抱えて図書室に向かい、ノートを写す作業をした。
すぐに席を立って仕舞えば、意外と教室で食べても孤独感を感じることはないのかもしれない。
それに、全然人のいないお昼の図書室は僕のような陰キャにとっては、結構過ごしやすい。
始業5分前に図書室を出ると、廊下で花井くんに声をかけられた。
「山路くん!?」
「え、あ、花井くん。なんでこんなとこに?」
「なんでって…、ここ、僕のクラスだし」
花井くんの教室は、図書室に近かったんだと今わかった。
ここ、花壇からも空き教室からも結構遠い。
「そっか…」
「そんなことより、インフル大丈夫だった?
メッセージ送ろうかと思ったんだけど、すごく体調悪そうだって聞いて」
「え?…、えっと…、誰から?」
僕の症状の詳細を知ってる人なんて、僕の家族以外には担任くらいじゃないだろうか。
「え?八王子くんからだよ。
体調悪そうだから、ライン送るなって言われた。
だから、今日から来ててびっくりした」
「そ、そうなんだ。僕はもうすっかり元気。
あ、授業始まっちゃうから…」
「安心した!そうだね、また話そうね」
そう言って花井くんはいそいそと教室に入った。
僕も小走りで教室に向かう。
それにしても…、僕は特に症状については…、というかライン自体、全然八王子くんに送れなかったのに。
なんで八王子くんは、そんなこと言ったんだろう。
それに、僕が辛かったのはせいぜい2〜3日くらいで、あとの3日間は結構元気だったんだけどな。
すこし不思議に思いつつも、僕は授業の遅れを取り戻すのに精一杯でそれ以降はすっぱりと忘れてしまった。
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