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36 代わり※微
「俺から距離を取るのは良いけど、山路から距離取るのはムカつく」
「は…」
僕は一瞬、何を言われたか分からなくて、
息が漏れた。
え、ええ??
いや、意味が分かっても訳が訳が分からない。
それは暴論すぎる。
「な、なんで?」
これは僕の方がずっと頭が悪いから理解できないのかな?
そう思って聞いてみたけれど、八王子くんは僕をじっと見た後に舌打ちをした。
「好きなら抵抗しないよね?」
そう念を推すように訊かれて、僕は思わず頷いた。
え、でもこのパターンって…
八王子くんの長い指が僕のワイシャツのボタンを外していく。
え、やっぱりするんですか…?
ボタンをはずし終わるまでの間、ありえないくらい心拍数が上がっていた。
至近距離で見る八王子くん…、まつげ長ぁ…、肌白ぉ、毛穴ひとつなぁい…
ふと、メグミさんのことを思い出して、僕は思わず彼の手を掴んだ。
八王子くんが途端に眉間に皺を寄せて僕を見る。
「こ、こんなことしたら、悲しむ人がいるんじゃ…」
「は?」
「いや…、だって、こういうのって大切な人とすることなんじゃ…」
「2回もヤッたくせに、なに今更?」
「ヤッ…、そっ…」
僕が真っ赤になってどもっていると、シャツが開かれた。
いつの間にかボタンが全部外されていた。
貧相な僕の体が晒される。
「こんなに期待してるのに、なに清純ぶってるの?」
「んっ」
八王子くんが意地悪そうな顔をして、僕のすっかり立ち上がった胸の飾りを摘んだ。
こんな状況で、その程度の刺激に声を出してしまうなんて…、僕は…
「淫乱」
そう…、淫乱なのかもしれない。
八王子くんに指摘されて、僕は羞恥で涙が出た。
八王子くんとあんなことする前の僕は、こんなんじゃなかったのに。
「やだぁ…、だめだよ、こんなの」
メグミさんがいるくせに…
その瞬間、僕は納得してしまった。
八王子くんはメグミさんが大切だから手を出さないで、代わりに僕で発散しているんだ…
体から力が抜けて、必死に彼の手を掴んでいた腕がだらりと下がった。
酷い…
…、でも、それが理由なら、僕は何も心配せずに八王子くんとエッチができる。
だってこれは、メグミさんへの裏切りじゃない。
僕はただの性欲の処理道具だから。
僕が抵抗をやめたことに八王子くんは一瞬不思議そうな顔をしたけれど、「かしこいじゃん」と言い捨てて、僕の体を触り始めた。
すごく傷ついたのに、僕の体はちゃんと快感を拾ってしまう。
何より、今だけは八王子くんの目には僕しか映っていないんだ。
それが嬉しい。
僕を通して誰を見ているかは考えないことにする。
解すのもほどほどに、彼の屹立が僕の後孔に当てられる。
「あっ…、欲しいっ。八王子くっ…お"っ」
正常位の状態だったから、彼の首に手を回して強請ると、すごい勢いで最奥を穿たれた。
下品な声が漏れて、恥ずかしかったけれど、そんなのを気にするまもなく、ガツガツと出し入れされて、僕は喘ぐしかなかった。
「あ"っ…、ああっ…、八王子くっきもちぃ」
僕が泣きながら揺すられていると、屈んだ彼が僕にキスをした。
その瞬間、もうメグミさんの代わりでも性欲の処理相手でも良いと本気で思った。
この瞬間、彼を独占できるなら…
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