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41 勉強会
たった2週間の冬休み。
前半はあっという間に過ぎ去り、年始を迎えてしまった。
八王子くんと花井くんには年始の挨拶をラインでした。
八王子くんは相変わらず冷たい返事だったけれど、花井くんとはラリーが続いて、一度勉強会を開催した。
お邪魔した花井くんの家は、八王子邸ほどではないけれど、綺麗で大きかった。
有名私立に通う子たちの実家が太くないわけがないか…
僕が通えているのは奇跡だ。
成績が悪すぎて、進級できるか不安だけれど。
花井くんは僕のまっさらなテキストを見て驚いていた。
「山路くんって見かけによらないよね」
と、地味にディスられた。
見かけはガリ勉に見えるもんね…
まあ、塾に行ったり、部活をしてなかったり、ガリ勉といえばガリ勉なんだけど、勉強量と成績が比例してないんだよね…
学校で出されたテキストが難しすぎて、何時間格闘しても進まなかったのだ。
そういうわけを話して、花井くんの力を借りて1日でかなりの量を片付けることができた。
学年一位の八王子くんばかりにフォーカスされてるけれど、花井くんだって成績は結構上位だ。
僕は心からお礼を言って、夕方に彼の家を後にした。
翌日の朝、僕は早起きして課題に取り組んでいた。
花井くんブーストがかかっているうちに片付けておきたかったんだ。
すると、携帯が震えた。
『今日俺の家』
単語だけが八王子くんから送られてきた。
こ、これって…、八王子くんの家に来いってことだろうか?
『今から?』と僕が送ると、すぐに『当たり前』と返事が来た。
都合のいい男だってことは重々承知だ。
だけど、彼からのお誘いを断る理由がなく、僕は嬉々として支度をして家を出た。
ちょっと後ろの準備などもあり、30分以上時間はかかってしまったけれど…
もしもの時に、彼の家を汚すわけにはいかない。
僕だけが張り切っていたら恥ずかしいので、課題や携帯ゲーム機なども持って家を出た。
パートに向かおうとしていた母に「八王子くんの家に行ってくる」と声をかけると
「あら、お泊まり?」と聞かれた。
「え!?多分違うけど、なんで?」
八王子くんとの関係がバレてしまったのかと思って焦った。
母はなんてことない顔で「え?だって高校生が冬休みに遊びに行くなんて、お泊まり会じゃないの?」と言った。
そ、そういうものなのか…
今までろくに友達がいなかったから知らなかった。
「お泊まりになるんだったら早めに連絡ちょうだいね。晩御飯の準備があるんだから」
「うん、分かった。行ってきます」
「いってらっしゃい」
母の発言に思わずドキッとしたけれど、僕は無事、八王子くんのお家に到着した。
道中、『今日は佐藤さん(家政婦さん)いないから、着いたら部屋まで来て』と八王子くんから連絡が来ていた。
ふ、2人きり!?
と、早くも僕は緊張でぶっ倒れそうだった。
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