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46 カレー

クタクタなのに立たされて、挙句風呂場に押し込まれた。 確かに体はベタベタだけど、風呂に入る元気がない。 が、仕方なく体をサッと洗って用意されていた服を着る。 これ…、八王子くんの服かな? パンツを履こうと片足を上げたところで お尻からどろりとした液体が出る感覚がして 慌てて洗い場に戻った。 これ…、中に出された八王子くんの… しばし眺めた後、僕は首を振ってシャワーでそれを流した。 ゴムを使わないと、こういうデメリットがあるのか… でも、中に出される感覚は…、悪くなかったというか…、彼の所有物になった気がして、むしろ良かった… で、でも! これが出てきちゃって、下着を汚すのは良くないよね! やっぱり、使ってもらおう 今日も多めに持ってきたし…、ゴム… まさか自分がこんなものを持ち歩くことになるなんて思わなかった。 もう一度、体を拭き直して服を着る。 身長差があるからか、ブカブカだ。 そんなことよりも、八王子くんの匂いが濃い。 思わず、袖の匂いを嗅ぐ。 うん、いつも感じる八王子くんの匂い… そうしていると、ガラッと脱衣所のドアが開いた。 「ピャッ!?」 驚いて変な声が出た。 そんな僕を彼はじろりと睨む。 「匂い嗅ぐな、変態」 「…、ご、ごめん」 見られたことが恥ずかしくて僕は俯いた。 だって好きな人から借りた服だよ? そりゃ変態じゃなくても嗅ぐもん… 「温めたから早く食べるよ」 八王子くんに言われて、何を温めたんだろう?と思いながらついていく。 ダイニングルームのようなところに、お弁当のようなものが二つ置いてあった。 「出前頼んだ。お前がなんでも良いって言ったんだから、文句言うなよ」 どうやら、僕の分も頼んでくれたみたい。 そんなことが嬉しかった。 「言わないよ!ありがとう! お腹ぺこぺこだったんだ〜」 僕はウキウキで八王子くんの隣に座る。 これ、有名なカレー屋さんのお弁当だ! 八王子くんと手を合わせてご飯を食べる。 「何か話して」 とまたもリクエストされたので、面白いか全然分からない話をする。 毎度、クスリともしないので、こんな内容でいいのか分からないけれど、彼は止めないので良いのだろう。 「…、あ、そういえば、 八王子くんは今もゲーセンの方には行ってないの?」 「は?ゲーセン? 行ってないけど」 「そうなんだ〜。 あの、選挙してたころくらいに、八王子くんのお友達みたいな男の子が、そろそろ顔見せろって言ってたよ」 「は?」 「え?」 「お前、あのゲーセン行ってんの?」 「いや!行ってないよ! バス待ってたら、たまたまぶつかったんだよ! 八王子くんに危ないって言われてから、最低限しか歩いてないよ」 「…あっそ」 それでこの話は打ち止めになる。 でも、聞き返されるなんて滅多にないから驚いた。 やっぱり八王子くんは、僕があの界隈の人たちと関わることをあまりよく思ってないみたい。 僕に居場所を荒らされるのが嫌なのかも。 この流れでメグミさんのことも聞けたらよかったんだけど、僕には勇気がなかった。

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