50 / 56

50 王子というか魔王

ほとんど抵抗せずについていく僕だけれど、向かっているのが空き教室だと分かり、足を突っ張って対抗した。 「は?」 それに気づいた八王子くんが僕を睨む。 こ、こわい… でも、もしそこに目黒さんがいるなら、僕は行きたくない。 「山路のくせに何?」 「うっ…、僕、行きたくない…」 「…、うぜぇ」 八王子くんが空いている方の手で、髪をかき上げた。 うわぁ…、イケメン… じゃなかった! 今まで、八王子くんの「うぜぇ」には怯えていたけれど… 「そ、そんなこと言われたって、怖くないし! 目黒さんとご飯食べればいいじゃん! 僕、もう2人が仲良くしてるの見たくない」 精一杯の反抗だった。 なのに… 「意味わかんねぇ」 苛立たしげに言った後、彼は僕を担ぎ上げた。 米俵みたいに担がれてる。 「やだ!!やだってば!!」 僕は足をばたつかせて抵抗したけれど 「みんなに見られてるよ」 と、彼が小声で言い、僕はふと顔を上げた。 近くの教室の子や廊下にいた子が僕たちを好奇の目で見ている。 「どういう状況!?」 「え?王子が担いでるの、誰?」 「男の子じゃない?」 周りがざわついていて、僕は大きい声で喚いていたことが恥ずかしくなった。 慌てて顔を伏せて、八王子くんの背中に顔をつける。 どうか、僕だとバレませんように… 「ずっとそうしてな」と彼が呟き、歩き始める。 結局のところ僕は、彼には逆らえないんだ。 どさっと机の上に下ろされて、普通に腰が痛い。 っていうか、今更ながら机に乗るってお行儀が悪い。 ただ、そこには目黒さんはいなくて拍子抜けした。 「あれ?目黒さんは…?」 「さっきからメグミメグミ煩いな。 山路には関係ない奴だろ」 関係ない…、けど、目黒さん側は僕のことをよく思わない…よね? だって、彼氏のセフレみたいなものだよ? 男だし、冴えない見た目だけど… 彼女はそういうことには寛容なのだろうか。 「で、でも…、流石に悪いよ」 「なにが?」 「なにって…」 え?僕の感性がおかしいのかな? 世のカップルってそんなものなの? 僕が答えられずにいると、僕の上にうつ伏せで乗っかってきた。 お、重い… 「あー…、ねむ…」 そう言って彼が目を瞑りだしたので驚いた。 お昼ご飯!食べてない! それに、わざわざ僕を連れてきて、することがお昼寝? 「ちょ!寝ないで! お昼食べなきゃいけないし!」 と、僕が彼を揺すると、不機嫌そうな顔で僕を睨んできた。 「飯なんか俺が寝てる間に食えば?」 「で、でも、こういうことって、やっぱり目黒さんにお願いしたほうがいいんじゃ…」 その瞬間、顔面を片手で掴まれた。 絶対タコみたいな不細工面になってる。 「2度とそいつの話すんな」 「え…」 「返事」 「う…」 僕が頷かないことに腹を立てたのか、彼が僕のシャツを脱がし始める。 まさかこんな白昼堂々と、みんながいる学校で、おっぱじまるとは思わなかった…

ともだちにシェアしよう!