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52 お姫様抱っこ

ことが済んだあとも、僕は同じ姿勢のまま、ぼーっと宙を見ていた。 体を起こす体力どころか、指一本動かす気力もない。 始業のチャイムが鳴った後も、僕はぼんやりしていた。 いつの間にか八王子くんは退室していて、空き教室には僕1人だ。 流石におしり丸出しでこうしているわけにもいかず、僕はノロノロと服を着て、汚れた机と床を見る。 吐いたものと、おそらく八王子くんの出したものを片付けなきゃ… 僕は掃除道具入れから、汚めの雑巾を取り出して拭いた後、ゴミ箱に捨てた。 もう一度、手持ちのアルコール入りのシートで拭き直す。 ズキリと肛門が痛んで、いったい僕は何をしているのだろうと、虚無になる。 いつも八王子くんが寝ている椅子に横になり、僕は授業をサボった。 おしりも首も痛くて、椅子に座って授業を受けるなんてそもそも無理なんだ。 そこで僕は寝てしまったようで、部屋がオレンジ色に染まる頃、 「山路…、帰るぞ」 と、八王子くんが来て、僕を揺すった。 「…、歩けないもん」 僕はブスくれて言った。 なんで普通の顔してるんだろう、この人は。 僕はこんなに傷ついたのに… いや、彼は王子なんだから、僕がどうなろうとなんてことないだろう。 八王子くんはため息を吐くと、僕を横抱きにして持ち上げた。 「え!?だ、だめだよ! 誰かに見られたら変な噂になるし!」 「このまま置いていった方が問題になる… それにとっくに授業終わってるからそんなに人目に付かない」 そう言って彼は歩き出した。 僕は誰かに顔を見られないように顔を八王子くんの胸に押し当てた。 男一人を運んで家まで帰るって、冷静に考えて体力と筋力がすごいな… そりゃ僕なんかが力で敵う相手じゃない。 揺られること数分、八王子くんがある建物の中に入った気配がした。 あれ?僕の家にしてはちょっと近すぎるような… 顔を上げるとそこは、何度かお邪魔した八王子くんのお家だった。 「えっ!?なんで?」 彼のお家というと、もうそれをした記憶しかない… でも、今日の僕はもう、後ろは使い物にならない。 いや、なったとしても、お昼のあれが痛くて怖すぎて、考えただけで体が震える。 僕が怯えていることに気付いたのか、彼は僕をベッドの上に降ろすと 「やる為に来たんじゃない」 と言って、机の引き出しをごそごそと漁った。 何かを手に、戻って来た彼が僕のスラックスを下げた。 「えっ!?そういうことしないって言ったのに!」 あろうことかパンツまで下ろそうとする彼に抵抗しながら睨み上げる。 彼は一瞬動きを止めた後、 「抵抗されるとねじ込みたくなるからやめろ」 と、ため息を吐かれた。 ねじ込む!?ドコにナニを? 「ドッ…」 ドSだ…、なんとなく予感はしてたけど、この人、ドSだ。 「ド?…、まあいいや。 薬塗るだけだから、抵抗しないで脱げ」 そう言って軟膏を僕に見せた。 それならそうって口で言ってよ…、と思いつつも、 「自分で塗るから大丈夫だよ。 薬だけもらっても良い?」 と訊いた。 そうこうしているうちに、八王子くんが僕の隙を見て、パンツを剝ぎ取った。 恐るべき早業である。 いやそんなことを言っている場合ではない。 彼が僕の膝裏を持ち上げたので、彼の眼下に僕の肛門が晒された状態となる。 最悪だ… 「うわ…、ひどいな…」 と彼が絶句した。 それやったの、八王子くんだけどね。 と、思いつつも、自分ではそこが見られないので、そんなにひどい状態なんだ…、と冷静に考えた。

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