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8.Escape~逃亡の果て

 それでオレは、っていうと――……。 「うわわっ!!」  右の方向に体を引っ張られ、大人が一人分やっと入れるくらいの粘土とレンガで作られた家々の、壁と壁に挟まれた細い道で、尻もちをついていた。  何事かと振り向けば、そこにはオレよりも10歳くらいは年上だろうか、襟足までの波打つ黒髪の、見知らぬ男がしゃがみ込んでいた。  服装は、やっぱりこの街の人間らしい。  彼はやはりともいうべきか、白の上着にツギハギだらけのパンツをはいているオレとはまったく違う。  背が高くてがっちりした体はカンドーラに身を包み、その上からは紺色のデザートローブを着ている。  肩からは、スカーフをかけていた。  腰にはやっぱりジャンビーアを差し、サンダルをはいている。  顔は――。  ああ、うん。悔しいくらいオレとは真逆だ。  太陽に愛されている健康的な肌に、オレよりも少し細い黒の目は宝石のように輝いている。

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