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9.Escape~逃亡の果て

 かなりの美形だ。 「あんた誰!?」  目の前にいる男を警戒したオレは男の手を振り払い、腰に差してあるジャンビーアに手を伸ばした。  なにせ目の前にいるのは知らない人間で、しかもこの男、それなりの金持ちだ。  デザートローブだぞ?  そんな立派なものを着られるのは、そういうお高い身分の人間しかいない。  そしてオレは、オレたちを尻に敷いて苦しいことを何も知らない、のうのうと生きている金持ちが大嫌いだ。  オレは追われていることも忘れて大きな声を出した。 「シッ!」  だけど男は冷静だった。いきり立つオレを(なだ)めるようにして、高い鼻梁の下にある、薄い唇に人差し指を当てた。  大人の余裕っていうの?  残念。オレ、そういうのも嫌い。  だからオレは上がっている眉尻を、さらに上げた。 「くそっ、盗人めっ! いったい、どこに行きやがった!!」

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