10 / 158
9.Escape~逃亡の果て
かなりの美形だ。
「あんた誰!?」
目の前にいる男を警戒したオレは男の手を振り払い、腰に差してあるジャンビーアに手を伸ばした。
なにせ目の前にいるのは知らない人間で、しかもこの男、それなりの金持ちだ。
デザートローブだぞ?
そんな立派なものを着られるのは、そういうお高い身分の人間しかいない。
そしてオレは、オレたちを尻に敷いて苦しいことを何も知らない、のうのうと生きている金持ちが大嫌いだ。
オレは追われていることも忘れて大きな声を出した。
「シッ!」
だけど男は冷静だった。いきり立つオレを宥 めるようにして、高い鼻梁の下にある、薄い唇に人差し指を当てた。
大人の余裕っていうの?
残念。オレ、そういうのも嫌い。
だからオレは上がっている眉尻を、さらに上げた。
「くそっ、盗人めっ! いったい、どこに行きやがった!!」
ともだちにシェアしよう!