そんな奴らに見下されるのが悔しい。 　何もできない自分が惨めで泣けてくる……。 　だけど、こんなところで泣いたりしたら、弱い人間だと思われる。 　たとえ金が無くったって……。 　売られたって……。 　コイツらには負けたくはない。 　泣いたら負けだ。 　だからオレは眉尻をぐいっと上げた。 　目の前にいる大人たちを睨(にら)みつけると、泣かないよう目をつり上げ、歯を食いしばる。精一杯の虚勢を張った。 　だけどそんなオレの威嚇(いかく)は奴らにとってどうということはなかった。 　……そりゃそうだよな。 　なんたってオレの両腕はきっちり縄で縛られてるし、この場で逃げ出そうものなら、母さんや妹のマスーメに迷惑がかかる。 　それがまた、オレを惨めにさせた。 「おいおい、お前らの目は節穴か？　こいつ……そこいらの奴よりもなかなかいい素材だとは思わないか？」