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3.Refusal~涙の理由
「っつ!!」
殴られる!!
オレはやって来る激痛から堪えるため、歯を食いしばり、目を閉じる。
だけど、いつまで待っても痛みはやって来なかった。
「やめろ、行くぞ」
兵士を制止させたヘサームは、オレに背を向け、扉を閉めた。
それとほぼ同時――冷たい金属音がオレの耳に届いた。
聞こえた金属音は、きっと鍵をかけたことによるものだろう。
オレが逃げられないよう、施錠したんだ。
そんなことをしなくても、オレは逃げない。
逃げる場所なんて、もうどこにもない。
同性に組み敷かれ、汚れてしまったオレ。
そのオレが、いまさらオレを生んでくれた母さんや、純真無垢な妹マスーメの前に出て行ってどうしろというんだ。
恥をさらすだけだ。
いや、それよりも、心優しい母さんのことだ。変わり果てたオレの汚い体を見て嘆くだろう。
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