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12.Refusal~涙の理由

 すべてを言い終えたのだろう。バシラさんは、深く、目を閉じた。 「そんな……」  そんなこと、信じられるわけがない。  スラム街に水路をつくる?  ヘサームもまた、オレと同じような境遇だった?  ……信じられない。  バシラさんは嘘をでっちあげているのか?  だとしても、嘘をつく理由がわからない。  ――もし、もしもバシラさんの言うことが本当だったとしたら……。  でもさ、だからって、オレにそんなことを告げて何になるっていうの?  バシラさんはいったい、何が言いたいんだろう? 「どうしてそんなことをオレに言うの?」  バシラさんはふたたび目を開けて、尋ねたオレの困惑している表情を視界に入れた。 「ヘサーム殿は、貴方を好いておられるからです」  なんだって?  ヘサームがオレを好き?

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