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15.Refusal~涙の理由
バシラさんは大きな目を細めて、そう言った。
口元はアバヤに隠れていてわからなけれど、笑っているように感じる。
血は繋がっていないけれど、やっぱりヘサームの乳母だからなのか、ヘサームとバシラさんの笑い方がとても似ている。
……トクン。
その微笑みを見ただけで、なぜかオレの胸が大きく高鳴った。
ほんの一瞬、オレの目に、バシラさんがヘサームと重なって見えた。
たったそれだけ。
それなのに、オレの心臓がドクドクと跳ねる。
それにまた、オレは、『可愛い』と言われてしまった。
ヘサームといい、バシラさんといい。ふたりしてオレにとっての禁句を簡単に言い放つ。
しかも、やっぱり、『可愛い』と言われてもイヤな気持ちがしないんだ。
……そういえば、オレ、なんでヘサームに、『可愛い』って言われても腹が立たないんだろう。
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