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16.Refusal~涙の理由
ヘサームに抱かれたあの時でさえ、告げられた、『可愛い』がとても嬉しく思えた。
憎いと思っているはずの相手なのに?
なんで……?
「バシラ様! 手をお借りしたい!! ヘサーム様が!!」
オレが考え事をしている中、突然、危機感を帯びた声が聞こえたかと思うと、固く閉ざされていた扉が勢いよく開いた。――と、思ったら、カンドーラに身を包んだ男性4人が慌ただしく部屋の中へ入ってきた。
4人のうち1人は、2人に担がれ、項垂れている。
鮮血が、元は真っ白だったはずのカンドーラを広範囲にわたって染めていた。
項垂れている男は腹部を押さえている。
どうやら、出血の出所は腹の辺りらしい。
刺されたのか?
だけど、いったい誰に!?
そして刺されたこいつは誰?
嫌な予感しかしない。
どうか、この考えが間違っていますように。
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