105 / 158
17.Refusal~涙の理由
そう願いながら、オレは項垂れている男が誰なのかを知るため、ゆっくりと顔を傾ける。
だけど、やっぱりオレの予感が的中していた。
「ヘサーム!!」
腹に重傷を負っている彼の顔を確認したオレは、頭の中が真っ白になった。
慌ててベッドから飛び降りる。
「アティファ……か?」
駆けつけたオレに気がついたのか、ヘサームは少し顔を上げて、懐から硬い何かを取り出した。
「これを……」
震えるヘサームの手の中にある、『それ』を見たオレは、一瞬、自分の目を疑った。
だって……。
だって、それは……。
どんな苦しい時でも、それが傍にあると、勇気がわいたもの。
オレにとってかけがえのない、とても大切な宝。
それは人買いに奪われ、売られたかもしれない。
父さんの形見。
「オレのジャンビーア!? どうして、なんで、ヘサームが持ってるの?」
ともだちにシェアしよう!